
昨今、小売業界で「ラストワンマイル」という言葉がよく聞かれるようになりました。「顧客にモノ・サービスが到達する、最後の接点からの距離」として使われている事が多いのではないかと思います。
オムニチャネルやOMOの進化に伴い、ネット注文の受取方法もさまざまな手段を選択することが出来るようになりました。これまでClick&CollectやBOPISについてお話させて頂いたのに続き、今回は「宅配のラストワンマイル」に注目してみたいと思います。
目次
1.ECにおける「ラストワンマイル」って、どこのこと? 2.ECサイトのシステムの役割は、ラストワンマイルの入り口まで 3.物流業界の方々の努力の賜物、翌日配送サービス 4.迷子の荷物。どこまで可視化するのが適切なのか?1.ECにおける「ラストワンマイル」って、どこのこと?
「ラストワンマイル」という言葉はもともと通信業界で用いられていたようで、Wikipediaを見ると「生活者や企業に対し、通信提供する最後の区間」を意味していたようです。電柱から宅内までの距離のことでしょうか? それだと“マイル”としては距離が短そうです。
通信事業者に勤めていた知人に聞いてみたところ、「物理回線の場合は、最寄りの局舎から利用者の建物までのことを指す場合が多い」という情報を頂きました。なるほど、“マイル”に相当しそうな距離感で納得です。加えて、「無線(モバイル)の場合は、基地局からモバイル端末までのことを指すこともあって、事業者や立ち位置によって“ラストワンマイル”がどこを指すのかは、いろいろかも」というコメントもありました。
本稿のテーマに立ち戻り、「ECのラストワンマイル」がどこを指しているのか考えてみると、「商品を出荷してからお客様のお手元に届くまで」が、ECのラストワンマイルに相当するかと思います。つまり、配送会社さんが「ECのラストワンマイル」を担っているということになります。
出荷されてから配送先に届くまでの状態については、配送業者さんのシステムで詳細に分かるようになってきました。中には、ピザ屋さんのデリバリートラッカーのように、地図上でリアルタイムに確認できるシステムもあります。配送できる商品の大きさや温度帯、エリアなどに制限はあるようですが、迅速かつ丁寧に、配達の状況をお客様にお知らせ出来るのは素晴らしいと思います。AIを利用するなど、運用を含め、日々努力の賜物なのだろうと想像しております(もしかしたらスマートに一発解決出来ているのかもしれません。ここは憶測でスミマセン……)。
2.ECサイトのシステムの役割は、ラストワンマイルの入り口まで
一般的なECサイトのシステムでは、注文を受けて倉庫から商品を出荷するまでのステータスを管理していますので、お客様に「出荷完了」のお知らせをするところまでが“役割”です。ラストワンマイルの入口である配送会社へ迅速にアシストし、受けとった配送会社さんがお客様に向けてゴールを決める、といったところでしょうか。
出荷完了をお知らせする手段としては、マイページでの注文状況表示・出荷完了メールが主な手段です。注文日から配送日までの日数が短い場合、お客様がマイページで配送状況を確認するシーンは少ないと思います。
マイページで確認するシーンとして考えられるのは、来るはずのものが来ない時です。スムーズに手元に届いていない時には、マイページで確認し、必要に応じて問合せをする、という流れになるのが一般的かと思います。
個人的な感覚ですが、配送日予定日が注文日から1週間後位になってくると「あれ? いつ到着するんだったっけ?」と気になってくるように思います。そこで確認する手段としては、注文完了メールの配送予定日やおおよその目安となる日付を見て確認する、といった具合ではないでしょうか。わざわざアプリやサイトを開いて(ものによってはログインまでして)マイページを見ることはしないでしょう。少なくとも、私はしていません。
システム設計をする際には、データの状態(ステ―タス)とお客様へお知らせするご注文状況について細やかに精査していきます。ところが実際に自分が利用者側になった時は、手元に届くまでの時間が掛かる場合にしか気にしないものだな……と感じています。
荷物のお届けまで安心してご利用頂く為に、マイページのトラック機能は必要であることは確かなのです。ただ、ラストワンマイルがスムーズに提供出来ていれば、また日々のメールチェックの流れで到着日を確認することが出来れば、利用頻度は高くない機能なのかもしれません(もちろん、お客様によって個人差はあると思いますが)。
3.物流業界の方々の努力の賜物、翌日配送サービス
最近、その日その時に必要なもの以外は、ネットで買いがちです。リモートワークが定着している今日この頃では、出社の帰りにお買い物をすることが無いので、宅配には本当にお世話になっております。
大手ECサイトでは、翌日配送のサービスを提供しているところも多くあります。翌日配送を実現する為には、注文完了→出荷指示(注文締め)→ピッキング→梱包→配送会社へ引渡し、といった一連の処理が、注文日当日、しかも配送会社への引渡が可能な時間までに、完了しなければいけません。
続く配送会社側では、集荷後、即座に配送先の営業所へ配送します。私達がスヤスヤ眠っている時間帯にも、休むことなく荷物は運ばれています。そして翌日には、最寄りの営業所からお客様のお手元に商品が届く運びとなります。
物流業界の方々、ドライバーさん達には感謝しかありません。そして、早々に商品を手にした私達は、「便利な世の中になったもんだねぇ…(しみじみ)」と思うのです。
自社物流をお持ちの企業の場合は、出荷完了から配達中、そして配達完了までの一連のプロセスが管理可能となり、より迅速な流れが実現出来ています。
ある時、ヨドバシカメラさんで午前中に注文した商品が、その日の夕方に届いたことがあり、驚きました。自社流通をお持ちで、かつ、倉庫が近くにあるからかもしれません。ものすごく急ぎで必要なわけではなかったので、少し申し訳ない気持ちになり、記憶に残っています。
4.迷子の荷物。どこまで可視化するのが適切なのか?
ここで、ある地方都市に住む、友人の話をします。
彼女はECに関して、ちょっとした不運によく出くわす体質なようで、何故だか分かりませんが、いろんな事が起こります。そして時折、怒っています。
地方都市は都内に比べ、翌日配送の恩恵に預かることが少々難しく、翌々日に配達されれば迅速配送、という認識の模様です。しかし交通事情などで1日や2日は遅れることもしばしばある中での出来事です。
その時、彼女は早く欲しい商品があったので、注文から翌々日の配達を期待しながら配達状況を確認していました。
荷物は配送会社の物流センターから最寄りの営業所に運ばれるのが普通です。ところが配送状況を確認すると、ベース店から最寄りの営業所へは行かず、配達先より70km以上離れた市の営業所に運ばれているではありませんか! 知らなくても良い事実を知ってしまいました。
ベース店から配達先までは、お散歩で行けるくらいすぐそこなのに、何故70kmも離れてしまったのでしょうか……。結果的にその荷物は、期待していた最短お届け日の翌々日には手に入りませんでした。最短お届け日での配送を確約しているわけではないので、もちろん、「遅延」ではありません。
通常なら許容範囲の最短配達日です。配送会社さんとしてもリカバリーは成功しているのですが、遠回りをしたことを知ってしまった以上、受け取る側としては「遅延」と解釈してしまうのも仕方のないことかもしれません。遠回りさえしていなければ、期待していた日に手に入ったワケですから……。
知らぬが仏、とはまさにこのことです。
これは、配送状況が詳細に分かった故に起こった残念な出来事。サービスが充実しているがゆえに起こった出来事をきっかけに、ラストワンマイルにあたってお客様にお知らせする適切な情報について考えさせられました。
データが持つステータスを、どこまで詳細にお客様へお知らせするか。日々業務で検討している側として、──知らぬが仏ということも含めて──配慮が必要である、ということを痛感した出来事でした。
お客さまのエンゲージメントを高め、ファンに育てることを目的とした、会員・ポイント管理(CRM)サービス「fannaly(ファンナリー)」。LINEミニアプリで提供することで、会員アプリを素早く始められます。
OMO/オムニチャネルに対応したEC/OMO基盤「prismatix」は、拡張性の高い柔軟なAPIで戦略的OMOを実現します。無印良品、スターバックス、サンリオ、アンファーなど成長を見据えた企業に選ばれ続けています。

執筆者プロフィール
菊田 亜由美 業務・システムコンサルタント
日航情報開発(現JALインフォテック)を経て、2000年からフリーランスにて、システム開発およびコンサル業務に従事。小売流通、サービス、⾦融等、あらゆる分野でのシステム開発を多数手がける。また、事業会社においてEC、CRM等のシステム導入経験あり。2018年2月クラスメソッドに参画。小売業を中心に幅広い業界での業務設計、要件定義、PM⽀援に対応可能。
≪⽀援実績≫
・OMO/EC:無印良品のDX推進⽀援、大手GMS/ネットスーパー構築、大手生活用品メーカーのD2C施策検討、家事支援サービスシステム強化支援、専門店オムニチャネル支援等
・CRM:大手アパレルの会員・ポイント基盤等
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