
ネット注文、自宅以外での受取方法 ~Click&CollectとBOPISその1~
コロナ禍の影響もあってか、近年ネット注文した商品の受取方法は、自宅への配送以外にも様々な手段を選ぶことができるようになりました。
「ラストワンマイル」は、お客様に物・サービスが到達する物流の最後の接点のことで、一昔前に流行ったワードですが、店舗受取、コンビニ受取、ロッカー受取、宅配ボックス、置き配などなど…いずれの受取方法にも、一長一短があり、業態や商品によって向き不向きがあります。すべての受取方法が、さまざまなネット注文のすべてにマッチするわけでは無さそうです。
オムニチャネルやOMO施策の中核でもある「受取方法」について、今回から2回に渡りネット注文の受取方法である「Click&Collect」と「BOPIS」について、業務やシステム運用の側面からお話していきたいと思います。
1.Click&CollectとBOPISの違いとは?
自宅以外の場所で受け取ることを、Click&Collectという言い方をします。店舗受取の場合は、BOPIS(Buy Online Pick-up In Store)と区別しています。
お客様(消費者)側にとって、Click&CollectとBOPISは実質のところ、同義語です。受け取る場所が自宅と自宅以外、という識別であるだけで、厳密に区別する必要はありません。
では何故2つの言葉があるのでしょうか。店舗受取以外は、いったん販売元の手を離れるところから、物流の位置づけで区別をしているようです。実際、事業者側にとってClick&CollectとBOPISでは、業務やシステム運用がかなり違ってきます。下記の図1にて、この2つの違いを書き出してみましたので、見比べてみてください。
2.Click&Collectのバックエンドとシステム運用
Click&Collectは、事業者側が指定した自宅以外の場所にお客様が商品を受取りに行くことです。配送料を安く済ませることができたり、無料になったりする為、お客様(消費者)にとってもメリットがあります。事業者側は、既存の物流ルートを利用することでコスト軽減となり、不在時等の再配達コストも削減することができます。
バックエンドやシステム運用の側面からは、Click&Collectを実現するために、配送に関わる情報を管理する必要が出てきます。コンビニ受取、ロッカー受取といった受取方法は、商品の温度帯や荷姿に制限がある為です。冷蔵・冷凍の温度帯の商品は温度管理ができる環境(設備)が必要ですから、商品に温度帯の識別が必要です。
そもそも温度管理が必要な商材を取り扱う場合には、自宅配送の場合であっても、クール便の配送指定を行う為に商品マスタで識別されているはずですので、その情報を使うことになります。
問題は、受取場所に温度帯を管理できる設備があるかどうか、設備投資が可能か、という点です。その段階で、温度帯管理が必要な商材はClick&Collect対象商品から除外される場合も少なくありません。
荷姿についても、同じような問題があります。コンビニ内に用意できる作業空間(商品の置き場所)には限りがありますし、ロッカーの大きさにも限りがあります。商品単体のサイズと配送時のサイズ(荷姿)の違いも考慮する必要があります。
ネット販売では必要となってくる「ささげ」では、荷姿でのサイズまで測定することは多くありません。家具などの大型商品を取り扱う場合には、配送料の関係から、商品マスタで大型商品であることを管理されているはずです。Click&Collectの対象商品の可否の判断には、この情報を使うことになります。商品単体での管理が困難でも、商品カテゴリで判断することが出来れば、管理可能な場合もあります。
いずれにせよ、Click&Collectの実現の為には、商品マスタ上の「配送に関わる情報」の管理コストは大きくなり、かつ、これが重要な業務であることがわかります。
3.Click&Collectのフロントエンド
フロントエンド側でも、Click&Collectを実現するためには様々な考慮が必要です。
まずカート投入された商品について、受取方法を選択する制御が必要になってきます。商品単位での制御は、商品マスタなどで判断することになりますが、注文単位での荷姿の考慮が必要です。
すべての商品に対して注文可能数を判断することは困難ですので、配送区分(商品の大きさで識別)毎に、おおよその購入可能数の閾値を設定する必要があります。また、同梱不可の判断も併せて必要になりますので、注文時のカート制御ロジックは、複雑になってきます。
カートの制御ロジックが複雑になるということは、お客様(消費者)にとって使いにくいカートになりかねません。カートに入れた商品や数によって、Click&Collectが選べたり選べなかったりすると、混乱してしまいます。「Click&Collectを実現する」ことに重きを置き過ぎてしまうと、使いにくいカートをつくってしまう危険性もあります。
「ネット注文の使いやすさ」に重きを置くには、業務設計はシンプルにする方がいいのかもしれません。フロントエンドの仕様がシンプルであれば、バックエンドの運用負荷の軽減にもつながります。
顧客満足度を高める施策には、業務運用の地道な努力が必要となります。業務設計を整えシステム運用に反映していくことで、より良いサービス提供の為のサポートができれば……と思う今日この頃です。
次回は、ネット注文の自宅以外での受取方法のもう一つの要素である、BOPIS(店舗受取)について、お話ししたいと思います。
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執筆者プロフィール
菊田 亜由美 業務・システムコンサルタント
日航情報開発(現JALインフォテック)を経て、2000年からフリーランスにて、システム開発およびコンサル業務に従事。小売流通、サービス、⾦融等、あらゆる分野でのシステム開発を多数手がける。また、事業会社においてEC、CRM等のシステム導入経験あり。2018年2月クラスメソッドに参画。小売業を中心に幅広い業界での業務設計、要件定義、PM⽀援に対応可能。
≪⽀援実績≫
・OMO/EC:無印良品のDX推進⽀援、大手GMS/ネットスーパー構築、大手生活用品メーカーのD2C施策検討、家事支援サービスシステム強化支援、専門店オムニチャネル支援等
・CRM:大手アパレルの会員・ポイント基盤等
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