
ネット注文、自宅以外での受取方法 ~Click&CollectとBOPISその2~
オムニチャネルやOMOの進化に伴い、ネット注文の受取方法もさまざまな手段を選択することが出来るようになりました。前回はその中からClick&Collectについてお話させていただきました。自宅以外の場所で受け取ることを、Click&Collectという言い方をします。
ネットからの注文でも店舗受取の場合はBOPIS(Buy Online Pick-up In Store)と言われ、Click&Collectとは区別されます。どちらもオムニチャネルやOMOの施策として行われる取り組みであり、同義語ではあるのですが、業務内容は大きく違います。今回は、BOPIS(店舗受取)について、システム運用や業務の側面からお話していきたいと思います。
1.BOPIS(店舗受取)を実現するために必要なコトは?
実店舗を有する事業の場合、店舗受取はオムニチャネルやOMOの施策として注力したいサービスのひとつです。システムの導入も必要ですが、これまでになかった業務が実店舗に追加されることになります。
図1の比較表を見て下さい。Click&collectよりもBOPISの方が、店舗オペレーションが圧倒的に多いことがわかると思います。もちろん、運用コストもそれなりにかかってきます。ただでさえ人手不足で業務内容も多岐に渡る店舗にとって、店舗オペレーションが増えることに対して反応が良くない……そんな状況は、想像に難くありません。
BOPIS(店舗受取)では、お客様がWEBで決済を済ませておく場合と、店頭で決済をする場合と、決済方法を選択することが可能になります。一方店頭では、そのどちらを選んだかで、業務運用やサービス面が大きく変わってきてしまいます。
商品在庫の引き当てが倉庫か店舗か、売上計上はEC側か店舗側か、などなど……BOPIS(店舗受取)システム導入の前に、お客様のニーズや行動傾向や業態の特性を鑑み、業務運用コストを検討、業務設計、業務整備を充分に行う必要があります。
もし店舗オペレーションが現実的でない場合、システム導入しても業務が回らなくなり、負の遺産になりかねません。一度お客様に提供したサービスを取り下げるのには、容易なことではありません。
2.BOPIS(店舗受取)はWEB決済と店頭決済、どちらが良いか?
実は、店舗での役割を「商品の引渡だけを行う」として仕切ってしまい、返品・返金・交換業務を自宅配送と同じフローにすれば、BOPIS(店頭受取)でも店舗業務の負担はそこまで大きくはなりません。とはいっても、店舗までわざわざ足を運んだお客様(消費者)の立場になってみると、いささか納得がいかない状況ですよね。「どうして今、ここで、返品・返金できないの?」となるのではないかと思います。
「ネットで注文したのだから、ネットのルールで返品してください」という事業者側の言い分も一理あるとは思うのですが、実店舗で運用している以上、そういった割り切りは難しそうです。コンビニや、人が介在しないロッカーでの受け渡しなど、自宅以外の場所で受け取るClick&Collectでは求められないサービスでも、BOPIS(販売店での店頭受取)では求められがちです。
WEB決済の場合の返品・返金・交換対応は、従来の店舗業務とは異なるオペレーションとなるため、店舗の業務負荷を増やしてしまうことに繋がります。「BOPIS(店舗受取)はWEB決済」とした方が、業務としては楽なように見えますが、必ずしもそう言い切れない理由がここにあります。
そこで「BOPIS(店舗受取)は、店頭決済に寄せる」と、店舗業務を統一させた方がスムーズな場合もあります。決済以降のフローを店頭販売と同じにすることが出来るので、交換・返品といったオペレーションがシンプルです。店頭で商品を受取った後に返品や交換の割合が多くなるような、試着が必要な商品がメインの業態の場合は、特にメリットも多いでしょう。
受取ったあとの返品や交換が店舗で出来るということは、お客様の声を直に聞く事ができるメリットもあります。ネットで24時間販売しつつ、リアル店舗ではお客様の声を聞くことができる。BOPIS(店舗受取)は理想的な販売方法の一つになるかもしれません。
3.BOPIS(店舗受取)のフロントエンド
フロントエンド側については、Click&Collectを実現するためには様々な考慮が必要でしたが、BOPIS(店舗受取)ではハードルが下がります。
Click&Collectで求められた、注文単位での荷姿の考慮、購入可能数の閾値の設定、商品ごとの同梱可否の判断などの複雑なカート制御ロジックは必要ありません。単純に「配送先が自宅から店舗に変わる」というシンプルなイメージになります。つまり、「ネット注文の使いやすさ」という意味では、お客様(消費者)にとって使いやすいサービスである、ということです。
一方で、商品を受け取る「店舗」についての情報メンテナンスが重要となるのが、Click&Collectとは異なる点です。移転や閉店などで、店舗受取サービスを実施できない店舗がある場合には、そのための制御が必要です。BOPIS(店舗受取)では店舗マスタの管理を徹底するようにしたいものです。
ネット注文の受取方法について、Click&CollectとBOPISをキーワードに、2回に渡ってお話しさせて頂きました。各社様のコンサル業務を通じて「顧客満足度を高める施策には、業務運用の地道な努力が不可欠」と日々痛感しております。業務設計を整えシステム運用に反映していくことで、より良いサービスを提供できるサポートができれば……と、改めて思う今日この頃です。
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執筆者プロフィール
菊田 亜由美 業務・システムコンサルタント
日航情報開発(現JALインフォテック)を経て、2000年からフリーランスにて、システム開発およびコンサル業務に従事。小売流通、サービス、⾦融等、あらゆる分野でのシステム開発を多数手がける。また、事業会社においてEC、CRM等のシステム導入経験あり。2018年2月クラスメソッドに参画。小売業を中心に幅広い業界での業務設計、要件定義、PM⽀援に対応可能。
≪⽀援実績≫
・OMO/EC:無印良品のDX推進⽀援、大手GMS/ネットスーパー構築、大手生活用品メーカーのD2C施策検討、家事支援サービスシステム強化支援、専門店オムニチャネル支援等
・CRM:大手アパレルの会員・ポイント基盤等
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