プリズマジャーナルTOPポイント施策の論点は“どう還元するか”だけじゃない。LTVを高める「ポイントプログラム」点検のススメ [今月の注目ニュース]

ポイント施策の論点は“どう還元するか”だけじゃない。LTVを高める「ポイントプログラム」点検のススメ [今月の注目ニュース]

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LTVを高めるにあたって、ポイントプログラムはとても重要です。プリズマティクスで会員・ポイント管理(CRM)サービス「fannaly」をリリースしてから、様々な企業様から「会員制度が役に立っているか分からない」「今の会員制度を何とかしたい」というご相談を数多くいただくようになりました。特に多いのが、「顧客との接点は購買であるため、購買以外でのポイント付与というのがイメージが出来ない」というお悩みです。

小売り×DXの気になるニュースを、リテール業界の現場経験が豊富なプリズマティクスのコンサルタントがチョイスしてお届けする「今月の注目ニュース」。今回は業務・システムコンサルタントの加藤が、ポイントプログラムを使った「購買以外の接点づくり」についての取り組み例を重点的に取り上げます。

1.WEBやスタッフとの接点を増やし関係性を向上「ユナイテッドアローズ」

●ユナイテッドアローズは、会員向け新プログラム「UAクラブ」を2023年8月1日より開始。
●購入金額に応じたポイント付与だけでなく、商品レビュー投稿など顧客の様々なアクションに応じてクーポンに交換可能なマイル付与をするとしている。
●顧客との接点の増加につなげ、継続的な関係性の強化を目指す。

6月28日に発表のあったユナイテッドアローズの事例を見てみましょう。購買以外にも、アプリのインストールやメール受信設定、お気に入りスタッフ登録など顧客のWEB上でのアクションにもポイントを付与しているのが分かります。

顧客の行動の多くが季節ごとの買い替えとなるアパレルの特性上、購買から購買の期間が空いてしまいがちです。この“空いた期間”を埋めるWEB上の接点づくりにもポイント付与することで、顧客との「購買時点以外」の接点づくりを重視していることが見て取れます。

顧客とのWEB上での接点を増やすことだけではなく、店舗スタッフとの接点づくりにも力を入れており、「お気に入りスタッフ登録」にポイント付与するとしています。オンライン、オフライン双方の活用で顧客とブランドの関係性を高めていく、意欲的な会員制度です。

2.企業理念を理解してもらうポイント制度で企業価値を向上「ユニリーバ・ジャパン」

●ユニリーバ・ジャパンは、エコポイントプログラム「UMILE」を2020年11月に開始。
●プラスチック使用量の少ない詰め替え製品を購入する等、環境に優しいアクションをした人にポイントを付与。
●2023年3月には、サステナブルな通販サイト「ELEMINIST SHOP」とのポイント連携を開始した。

「サステナビリティを暮らしの“あたりまえ”に」というパーパスを掲げるユニリーバ・ジャパンでは、この企業理念に沿った行動に絞たポイント付与プログラム「UMILE(ユーマイル)」を実施しています。

「消費者の皆さまとともに、“プラスチックは資源”があたりまえな未来を目指すプログラム」としている、この制度。ユニリーバの詰め替え商品の購入や空容器の回収にポイントを付与することで、プラスチック使用量削減や循環利用を促進し、購買が環境保護というアウトカムにつながります。

ここではLTVを上げるきっかけとして、企業価値(イメージ)を上げることで成果を上げるという戦略が見て取れます。「お得」を中心に訴求しがちなポイント施策ですが、ここでは顧客の自己実現欲求に訴求しているという点で、非常に意欲的なプログラムになっているといえそうです。

3.顧客との信頼関係を向上をポイント制度で実現「スギ薬局」

●スギ薬局は、顧客の健康維持・促進を目指して複数のアプリを開発。
●歩数に応じたポイントを提供する歩数計アプリ、管理栄養士が考案したメニューを宅配するアプリ等を提供している。
●毎日気軽に使えるアプリから、生活習慣病などハイリスク層への支援まで、顧客の健康意識を促進し、健康的な生活が送れるサポートを行う。

 

顧客の健康維持・促進を図る行動にポイントを与えるスギ薬局の例です。複数のアプリを使うことで、歩数や食事写真の記録数などでもマイルが発行されるという、とても“薬局らしい”プログラムです。

購買以外のWEB上での接点をつくることで顧客接点を増やすと共に、日常に寄り添って健康維持・促進をサポートすることで、顧客と企業の信頼関係を上げLTVを向上させていく戦略が見て取れます。

ユナイテッドアローズ、ユニリーバ・ジャパンの取り組みを掛け合わせ、更に「購買以外で、顧客が自社に対して望んでいることは何なのか?」を考えポイント制度に落とし込んだ例として、意欲的な事例と考えられます。

4.まとめ

今回は、ポイント付与条件を単純な購買とせず、企業にとって望ましい行動を引き出したり、企業理念への共感を得たりすることを目的にしたポイント制度を構築した事例を見てきました。

ポイントプログラムの多くは、「どのような顧客も、たくさん購入するとお得になる」に終始しがちなのですが、ファンを育てていく・LTVを高めていくという観点から見た場合には不十分であることが多くあります。

「ただ単に、お得に買い物ができる場所でいいのか」と自問し、購買以外のシーンで「顧客とどのようなコミュニケーションをとりたいのか」「何を伝えたいのか」ということを考え、自社の強みが生きる施策に落とし込む必要があります。

LTV向上施策を考える上でポイントプログラムは非常に重要で、プリズマジャーナルにはこれまでもポイントプログラムについて取り上げた記事を提供しています。ポイント制度を考えるにあたって、担当社の方に参考にして頂ければ幸いです。

加藤 彰浩

加藤 彰浩
(業務・システムコンサルタント)

株式会社セブン‐イレブン・ジャパンを経て、2006年にベネッセコーポレーションに入社。採点サービスの物流基盤デジタル化プロジェクトを皮切りに、新規サービス立ち上げおよび既存サービスの維持・改訂におけるPM/PMOや商品責任者として、戦略立案から企画推進、システム開発、業務運用構築までを一貫して手掛ける。2022年11月クラスメソッドに参画。prismatixのコンサルタントを担当。

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