プリズマジャーナルTOP「組織体制を見直す」「システムを見直す」〜オムニチャネル構築前に見直すべき、4つのポイントとは?後編

「組織体制を見直す」「システムを見直す」〜オムニチャネル構築前に見直すべき、4つのポイントとは?後編

# オムニチャネル # OMO # 組織体制 # システム # 要件定義

古くは「クリック&モルタル」「O2O」、現在は「OMO」「オムニチャネル」と言われている仕組み。これはお客様に対して店舗もネットもシームレスに(継ぎ目なく)使いやすくすることです。前回の記事では、オムニチャネルシステムの導入前に見直すべき4つのポイントのうち「業務を見直す」「評価を見直す」という2点についてご紹介しました。

今回も引き続き、システム導入前に見直すべきポイントについて、2点ご紹介していきます。

3.組織体制を見直す

前回、「評価の見直し」についてお話しさせて頂きました。評価の見直しと共に必要なのが、組織体制についての見直しです。しかし組織は、単純に「こうあるべし」といえるものではありません。私は、事業の成長に応じて、見直しをするべきだと考えています。

例えば、Web事業が立ち上がった初期には、ECはインターネット上の一つの“店舗”として、店舗事業、販売部門の中に含まれることが殆どです。時間が経つと、EC売上が実店舗の複数店舗分の売上を生み出すようになります。そんな中、ECを単なる“1店舗”扱いしていると、人員も在庫も足りなくなります。そこで、このタイミングで“事業部”として独立することになります。

事業部には、販売だけでなく、商品担当、販促担当、カスタマー担当、物流担当、管理・総務・IT担当等、一企業と同じ業務部門が必要となります。いわゆる“タテ構造”で、組織を強くするフェイズです。ここでWeb部隊とリアル店舗部隊がケンカしてしないようにする為には、先に述べた評価軸「関与売上」を取り入れ、社内協業出来る環境を作る必要があります。

環境が整っていくとWeb事業部には集中管理の必要なシステムや物流担当が残り、販促は全社マーケティング部門となります。その他のWeb販売担当者が社内の各部署に散らばる事で、全社のWeb活用を大きく成長させる事が出来ます。これが、“ヨコのつながり”を強化するフェイズです。

Web事業が、社内で何が出来るのか構築出来ていない時点で、最初からWeb担当者を各部署に配置してしまうと、各部署でWeb担当者がイチ作業者となってしまい、力を発揮出来ません。ところがWeb事業が確立されてからこのような流れで全社に散らばっていくと、Webで何を展開したいのかは各部署で既に考えて準備しているので、一気に社内のWeb活用が拡大し、成果に繋がるのです。

4.システムを見直す

業務、評価、組織の見直しが進んできたら、ようやくシステムの話をすることが出来ます。冒頭にも触れたように、現業の流れを見える化出来ないまま新しいシステムを導入しても、効果がありません。それどころか、古い業務オペレーションに無理やり新システムの必要業務をねじ込む事で、作業負荷と無理な流れを作り出してしまい、現場に大きな反発を生み出しかねません。

現業が見える化され「あるべき姿」の業務運用を考えた時、課題が明確になります。これに対して正しい要件定義が出来ているのであれば、システム開発に関する不安は大幅に減ります。

要件定義~開発~テストの中で発生する課題の大半は、クライアント側の要件明確化不足と、ITベンダーの部分最適なソリューション提案によって起きるからです。技術力が高いベンダーほど、そうなってしまうのです。「あるべき姿」を描いてから要件定義を行うことで、そのギャップを極力減らす事が出来るのです。

小売業にとってECの会員データベースや受注データベースは、データに基づいたマーケティングを行うためには必須のものです。店舗側のデータは、ECを軸に整理する必要があります。

商品データベースについては、ネット側・店舗側それぞれの必要項目を網羅したデータベースとなるため、両者が協力して新規登録、更新を行う必要があります。

ECには、商品画像や仕様はもちろん、付加情報として顧客のレビュー等を連携表示する事、検索にかかりやすくするキーワード登録も必要です。店舗側では棚のプライスカードに表示する文字数に即した商品名称、レシートに表示する文字数に即した商品名称の登録が必要です。

このように、それぞれの用途に応じた商品マスター項目を販売、営業で整理し、情報システム部に要件として提示し、ベンダーに改善をお願いする必要があります。システムの見直し、構築はそれぞれの業務に大きく依存するため、販売・営業部門が率先して要件定義をしなければ、良いものは生まれないのです。

5.まとめ

ここまで、オムニチャネルを構築する際、システム導入前に見直すべき4点を、具体的にお話ししてきました。

1. 業務を見直す
2. 評価を見直す
3. 組織体制を見直す
4. システムを見直す

次回以降は続編として、物流、コールセンター、店舗、EC、SNSの役割、継続的に進化するためには何が必要なのか等、オムニチャネルを構築し、運営するにあたって役立つお話しをさせて頂きます。

逸見 光次郎

執筆者プロフィール
逸⾒ 光次郎 Adviser(アドバイザー)

三省堂書店店舗勤務、ソフトバンク・イー・コマースのちセブンネットショッピング立ち上げ、アマゾンジャパンBooksMD、イオンにてネットスーパー立ち上げとデジタルビジネス戦略担当、カメラのキタムラ執行役員EC事業部長としてオムニチャネル化推進を経て独立。
株式会社CaTラボ代表 オムニチャネルコンサルタント。日本オムニチャネル協会理事、防音専門ピアリビング取締役等を兼務。
店舗とネットを融合し、顧客満足を高める買い物の楽しさを追求し続けている。

この記事をシェアする

Facebook