プリズマジャーナルTOP「うまい、やすい、はやい。」を実現しファンと共創する「吉野家の顧客とのコミュニケーション」 〜6/7開催オンラインセミナーレポート
「うまい、やすい、はやい。」を実現しファンと共創する「吉野家の顧客とのコミュニケーション」 〜6/7開催オンラインセミナーレポート

「うまい、やすい、はやい。」を実現しファンと共創する「吉野家の顧客とのコミュニケーション」 〜6/7開催オンラインセミナーレポート

プリズマティクスは2023年6月7日、小売業・外食業向けウェビナー、グッデイ、吉野家、エイチ・ツー・オー リテイリングに訊く 「顧客とつながるデジタルコミュニケーション、ファン育成の鍵とは」を開催し、大変多くの皆さまにご参加、ご好評を頂きました。

本記事では、大手外食(チェーン)の株式会社吉野家CMO、株式会社グリッドCEO等多方面で活躍されておられる田中安人氏をお迎えしたセッション「吉野家の顧客とのコミュニケーション」についてご紹介致します。本セミナーの内容について、更にご興味がある方へ向け、動画アーカイブの配信もご用意しております。是非ご覧ください。

共催:メグリ株式会社、クラスメソッド株式会社、プリズマティクス株式会社

1.店舗というハード面からスタートする、労働負荷軽減と顧客体験向上

外食産業を取り巻くデジタル活用やDX推進という課題に対し、田中氏は成功企業の経営層に直接話を聞きに行くなどし、学びを深めてきたそうです。その結果「会社のミッション、ビジョンを明確にして、手段としてデジタルを活用しているところが成功している」との結論に至りました。

吉野家の経営理念は「For the People」です。外食産業はコロナ禍で大きな打撃を受け、人が集まる場所である店舗の在り方への見直しが進み、近年ロボット活用の状況から人件費削減という選択肢を考える企業もあります。そんな中、吉野家ではあくまで“人”にフォーカスし、“人”が働きやすいこと、また“人”が前面に出るかたちでの店舗運営をしながら、裏側でデジタルを活用するということを進めています。

近年着手しているのは、店舗モデルの改装です。吉野家の店舗はこれまで、カウンターテーブルでの提供店舗がほとんどでした。ところが近年ではゆっくりと食事をしたいという需要に応えるため、郊外店舗を中心にテーブル席を備えた「クッキング&コンフォート」モデル(以下、C&Cモデル)への改装を実施しています。

「これまでの店舗というのは、男性従業員を想定した設計であったと思います。歩かなければならない歩数が多く、重たいものを持つ、また重いものを高いところに運ぶと言うようなことが当たり前のことになっていました。しかしこれでは、女性やシニアの方々が働き辛い環境となっています。これからは労働人口そのものが減っていく中、労働負荷軽減は取り組むべき課題として店舗設計に組み込みました」(田中氏)

来店者に対しては「ごゆっくり」がコンセプトとなっているC&Cモデルでは、来店者はモバイルデバイスの充電のためのコンセントやWi-Fiが利用できる等、「ゆっくり」したくなる設計がビルトインされています。C&Cモデル改装後の店舗では、若年層や女性の利用が明確に増えていることがデータから明らかになっているそうです。

2.売上が上がる、それは顧客が求めていることを実現出来たということ

吉野家では、従来型のカウンター店舗では注文から商品提供までをスタッフが行うフルサービスにて商品提供をしています。一方、C&Cモデルではセルフサービスとしており、注文は店内タブレットを設置して、客席にて注文が出来るようにしています。この注文方式に決定するまでには、多くの試行錯誤があったそうです。

「タブレット注文は難しいんじゃないかと思っていたんですが、試してみたところタブレット注文率の方が高く、60代位の方でも使いこなしてらっしゃることが分かりました。また、人を呼ぶより頼みやすいのか、一品追加注文等が増え、お客様あたりの単価が上がりました。売上が上がったということは、顧客が求めていたことを実現出来ている、ということでもあります」(田中氏)

このコロナ禍にてテイクアウト需要が急激に増え、お客様の店内滞在時間は短縮化され、タブレット注文やキャッシュレス決済を利用する等、非接触化も行動様式として一般化しました。2023年6月現在、徐々にコロナ禍から脱し、生活は“日常”を取り戻しつつありますが、「生活様式そのものが変わったということが、実感としてある」と田中氏は語ります。経営理念である「For the People」という指標が、ここにも生かされています。

3.データを読み解く肝は、判断のための明確な指標

ここでモデレーターの神谷氏から「DXやデジタル化等、いろいろやらなければいけないことはあるけれど、何からやっていったらいいのか分からない、迷っている事業者の方はとても多いと思います。吉野家さんがここに行き着くまでにされた試行錯誤の内容を教えて頂けると、セミナーに参加されている皆さんの参考になるかと思います」とコメントがありました。

そこで田中氏が重要なポイントとして語ったのは、データを蓄積すること、そしてデータを見る時の指標を明確にすることでした。

「データを沢山取っても、データのアウトプットの基準を明確にしないと、結局データはゴミになってしまうということだと思います。データを見る時の判断基準は、各企業それぞれだと思います。吉野家にとってはそれが、『For the People』『うまい、やすい、はやい。』でした」(田中氏)

田中氏は、これまでの4年間に抽出し判断してきたデータアウトプットを紹介しながら、「データの戦略分析により、これまでKKDだったものが、データドリブンになったというシンプルな話なんです」と語ります。

「KKDというのは、経験と、勘と、度胸のこと。データ分析の結果、過去のKKD判断が正しかったということも、もちろん、あります。ただやはり、データ分析や指標がはっきりしていない中での施策は、打率が悪かったと思います」(田中氏)

4.データ蓄積、データ分析、最後に求められるのはデータ“解釈”

データ蓄積開始から商品開発に生かせる様になるまで、約3年。田中氏は近年力を入れている「から揚げ」や、ライザップ監修の「ライザップ牛サラダ」等について、データをしっかりと読んだ上での取り組みであることを紹介しながらも「最後には、お客様が吉野家に求めているモノが何なのか、人間の五感で判断するということをしています」と語ります。

吉野家は、お客様にファンになっていただくために「お客様と共創する」ということを重要視しています。2019年には創業120周年を記念し「オレの吉野家この食べ方が一番うまい!」というキャンペーンで、吉野家ファンの有名人の、こだわりの食べ方を紹介するプロモーションを展開しました。他にも、様々なキャラクターや漫画等のIPコラボプロモーションも行っています。

「これらのキャンペーンは毎回、コラボするIPを変えています。ファンの違う新規層にご来店いただくためです。ただ、どんなIPでもいいわけではなく、吉野家と親和性があることを大切にしています。IPと吉野家に親和性がある時でないとお客様に来ていただけないということが、データ分析からもはっきりしているからです」(田中氏)

IPの原作者が吉野家の大ファンであるというような場合は作家本人とキャンペーンコラボを行い、一方で吉野家来店者(ファン)に好きなIPのアンケートを取るなどして実施する場合もあるとのこと。「各IPのファン層の独自分析」と「IPと吉野家との親和性」を徹底的に検討します。しかし最終的に「吉野家らしい」キャンペーンに昇華するために重要なのはやはり“明確な指標”である、それは各社データを見て考えて欲しい、と田中氏は言います。

モデレーターの神谷氏は「今日はいくつかのトークテーマでお話し頂きましたが、“ウチの会社らしいって何なんだろう”ということが裏側にあった一貫したテーマだったように思います。これが大元にあって、販促や商品など、様々な側面に対して“正しい打ち手”として導き出されていく、ということなのかなと思いました」と語り、本セッションは終了しました。

本セミナーの様子は、プリズマティクスの「動画閲覧」にて全編を無料アーカイブ動画として配信中です。下記動画閲覧ページよりお申し込み頂き、ご覧ください。プリズマティクスは今後もデジタルを活用した顧客接点の取り組みやファン育成などをテーマに、課題解決となるようなヒントやアイデアをご紹介していきます。ご注目ください。

プリズマ編集部

「the engagement commerce platform for wow! experiences」をコンセプトに、小売業における顧客エンゲージメント向上の支援、戦略的OMOを実現するプラットフォーム提供を行うプリズマティクス株式会社が運営する、オウンドメディア『プリズマジャーナル』編集部。

『プリズマジャーナル』では、プリズマティクスで活躍するコンサルタントが執筆するコラム「徒然ジャーナル」、業界の先端を走り続けるプリズマティクスアドバイザーからの寄稿文など、小売業の皆様に向けて伝えたいこと、耳寄りな情報などをお送りします。

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