プリズマジャーナルTOP時代の変化に合わせ、販促接点の見直しを【外食企業で“デジマ”を始める!】環境運用編2
時代の変化に合わせ、販促接点の見直しを【外食企業で“デジマ”を始める!】環境運用編2

時代の変化に合わせ、販促接点の見直しを【外食企業で“デジマ”を始める!】環境運用編2

外食産業のマーケティングや業務効率化には「外食」という業種特有の課題がネックとなり、デジタル領域を活用しきれていない企業が多く見られます。外食企業が「デジタルマーケティング」「デジタルトランスフォーメーション(DX)」を始めるには、どうしたらいいのでしょうか。

前回は「自社顧客化」をテーマにして、環境を具現化(開発)することを解説してきました。今回は運用編として、マーケティングの進め方を解説する2回目となります。施策の実施時に複数のツールの集計、分析、次の施策へ活用するというクロスした取り組みが必要です。開発編と合わせて参考にしてください。

 

1-1.[SNS] 運用の目的を見直す

X(Twitter)の外食ブランドのアカウントでは、抽選キャンペーンを毎月実施していることが多いように思います。抽選のインセンティブ目当てでアカウントフォロー、リツイート等はするものの、当選しなければ来店しないという方が殆どでしょう。ただ、毎月定期的に行われるキャンペーンであることや、そもそもそのお店が好きでフォローしたり抽選に参加している人、既に来店したことがあるユーザーの抽選参加という場合もありますので、全員が“当選だけが目当て”ではないとは言えそうです。

SNS上で自社アカウントに興味を持ってもらい、SNSとして楽しんでもらうまでは出来ても、来店寄与にはすぐに直結しないのがSNSです。外食は“食べに来てもらう”サービスですから、SNSの瞬間的なエンゲージメントがあっても、離脱の方が多いものです。

Xで話題作りをするには、企業色や営業セールスな投稿ではなく、担当者が属人的に面白かったり驚くような投稿をすることが多いですよね。その結果、SNS担当者にファンがつく=ブランドのファンになる、という構成になりがちです。こうなると、何のためにXを運用しているのかともなってしまいます。

そこで、外食業態とSNSの関係を見直しましょう。

外食業態=非日常(たまに来店する飲食店)で、SNS=日常(毎日みて楽しむ)とは真逆の立ち位置にいます。言い換えますと、「日常=来店していない時」「非日常=来店した時」とも言えます。

ファーストフード系の業態場合、日常的に来店接点はありますが、マジョリティは毎日来店するわけではありません。ごく僅かのヘビーユーザー達は、同じ業態・同じ店にも関わらず驚異的な回数の来店をしますが、それはあくまでマイノリティです。ユーザーの「非日常」の時に、選ばれるブランドになる必要があります。そのためにはユーザーの「日常」でブランドに愛着を持ってもらう、ファンになってもらうということが必要です。

1-2.[SNS] 配信者と配信内容をカスタマイズする

期間限定商品やメニュー紹介、シーズンに合わせた投稿等、定期的な配信内容はあると思いますが、商品に関する配信をひたすらするだけで無く、話題性のあるイベントなどを仕掛けて、ユーザーに関心や注目してもらうことも大切です。

商品に関する写真や動画では、“シズル感あるコンテンツ”が外食の定番ですが、すぐに飽きられてしまうのはよくある課題です。看板商品が“すごく映える”としても、ずっと同じ配信をすることは出来ません。商品の情報ばかり配信していてもフォロワーもエンゲージメントも増えませんし、飽きられます。

店舗出身の方はSNSのクリエイティブ作成経験が無いことが多いので、外部に委託する企業が多いと思います。ここで、予算の問題および「SNSがどのくらい来店に寄与するのか」がよく問われると思います。ただ、社内に専任者を設ける場合、その担当者がSNSに適切な投稿内容を制作出来るかどうかが課題となります。

一言で「SNS」といっても、SNSそれぞれの特性に合わせ、投稿内容をカスタマイズする必要があります。TikTokでは、普段と全く異なるブランドの一面を表現することを、多くの企業が仕掛け始めています。特に商品と関係なくても話題作りに特化してみても良いのではないでしょうか。

ブランドの新しい一面を見せることも大切ですので、デジタルだからこそ出来る表現も含めて、試してみてください。

2.Web広告の運用

施策やターゲット次第ではありますが、どのweb広告を使うのが適正なのかは、検証が必要です。ECと異なり、外食のweb広告は「実際に来店したのか」計測出来ないと、効果がわかりません。インプレションやクリック件数がとても多く、安価であっても、「実際の来店件数は、これだけ?」となることは、よくあると思います。web広告は長期間かけて精度をブラシアップしていく一面もありますが、そもそも媒体と業態がマッチしていない場合には、早々に可視化して適正なweb広告を選定し直すべきでしょう。

TVCMの代わりにYoutube広告を利用する企業も多いと思います。YouTube広告の場合は来店計測結果が出てくるので、TVCMより来店寄与の可視化に繋がります。

Web広告で動画を使う場合、多くの外食企業は苦戦していると思います。「あくまでプロモーションであり、来店に直結しなくてよい」という場合を除き、来店寄与が優先の場合は、動画構成やキャスティング、インセンティブ等を万全にする必要があります。

Twitter広告、Instagram広告、TikTok広告等のSNS広告を利用するのも有効な手法です。ただ、それぞれ全く異なるアプローチと効果なので、使い分けが必要です。Instagramリールの動画広告、TikTokの動画広告は似て非なるターゲットおよび視聴目的が異なるので、同じ動画データを両方に配信するのは控えた方がいいでしょう。

Google広告についても、リスティングやディスプレイが主流ですが、使いこなすと結果が変わってきます。広告代理店等が勧めてくる内容を鵜呑みにして、言われるがまま実施していると悪い結果になることが往々にしてあります。注意して検討するようにしてください。

3-1.[チラシ] 配布エリアの選定

どのエリアに配布すべきか、紙やPDFでは無く、デジタルなMapで分析検討出来るようにしてください。

店舗からの直径何kmが商圏なのかも、よく議論になると思います。人口密度と手堅い距離を重視してください。その店舗の立地に詳しい方に相談しても、デジタルなMapで人口密度が噛み合ってなければ、苦しい集客となる場合はよくあります。異例な商圏の店舗はもちろんありますが、セオリーな商圏は直径2〜3km程度です。川や路線で分断もされます。強い実績が出てからエリア拡張することを勧めます。

都道府県毎に地域性も異なります。異常にチラシが効く県、人口密度が高いにも関わらず、全く効果が無い県もあります。チラシが効かない場合、同じエリアにweb広告を仕掛ける効果検証もしてください。「チラシは見ないが、WEBは見るユーザー」は多いはずです。

チラシは、新聞折込、ポスティング、地域紙などがありますが、新聞折込はいずれ淘汰されるのが目に見えてます。ポスティングは新聞社のバイアスがなく均等に配布できます。ただ、新聞を購読するシニア層があと何年継続して購読するのか、新聞をスマホでしか見ない層がどれくらい増えているのか、想像していただきたいです。

共通しているのは、どちらもいずれ見てもらえない媒体になる時代が迫っています。つまり現在、チラシを積極的に配布してる業態は、「いずれweb広告だけ」に切り替えて良いように今からチラシの精度を高めていく必要があります。経験や感覚でチラシを推す上層部がいれば、デジタル化した数値でチラシの現状の価値を伝えて理解してもらいましょう。

3-2.[チラシ] 利用件数の可視化

配布したチラシの利用件数をしっかり回収する必要があります。少なくとも、QRコードなどがついたクーポンを印刷して、何枚利用されたのか可視化してください。チラシのクーポンを使うには、アプリ上で利用してください。このようにフローまで出来ていると、かなりデジタルに可視化しやすくなります。

デジタルのMap上に集計した利用件数も反映できると、人口密度と利用件数がはっきり可視化されるケースが多いと思います。デジタルなMapについては、Saasで良いので活用してみてください。既存代理店よりも単価が少し高い場合もありますが、非効率な配布エリアを選定するよりはるかに改善できます。

3-3.[チラシ] クーポンの設定

初回の来店はとても高いハードルです。まずは「お店を知ってもらう」「楽しんでもらう」機会を儲けないと先に進みません。

値引きの弱いクーポンは当然、利用件数は少なくなります。「強い値引きはしたくない」と思うのも当然ですが、新規顧客と既存顧客の連携した囲い込みをすればよいのです。まだ来店してない、もしくはアプリ会員(LINE会員)になっていないユーザーに対し、チラシは「まず来店させる。自社会員にさせる」ための位置付けとみてください。

チラシがきっかけで来店後、アプリ会員になってくれたユーザーには、チラシを配布する必要がなくなります。

チラシ、デジタルなMap、アプリ会員。この3つが連携すれば、新規顧客と既存顧客の連携が可視化され、無駄な値引きもなくなります。必要なタイミングで、必要なユーザーだけにクーポンを配布する構造が積み上がります。

まだまだチラシに依存している業態は多いと思いますが、時代の変化に合わせて販促の接点を見直してください。その予算をリプレスして新たな施策に活用すればよいのです。

清水 圭介

執筆者プロフィール

清水 圭介
コンサルタント

株式会社EPARKを経て、2018年に物語コーポレーションに入社。外食チェーンストア(焼肉きんぐ・丸源ラーメン・ゆず庵)におけるデジタルマーケティング・DXの部門を立ち上げ、OMO構想からCDP構築を軸にアプリ・web開発からマーケティングまで網羅した戦略立案・企画推進、開発からマーケティング運用を担う。2021年にレインズインターナショナルに入社。デジタルマーケティング部の部長として、牛角・温野菜を中心にCDP構築・web広告・順番受付開発運用などを担う。2023年9月クラスメソッドに参画。

この記事をシェアする
Facebook