データ計測・分析のため、各ツール連携実装で効率的な運用を【外食企業で“デジマ”を始める!】周辺ツールの開発編
外食産業のマーケティングや業務効率化には「外食」という業種特有の課題がネックとなり、デジタル領域を活用しきれていない企業が多く見られます。外食企業が「デジタルマーケティング」「デジタルトランスフォーメーション(DX)」を始めるには、どうしたらいいのでしょうか。「外食企業にてデジタルマーケティング(略称:デジマ)を始めるには何をどうすれば!?」とお悩みの担当者の方々へ向け、これまでに環境の整理、自社顧客化について解説しました。
これらを踏まえた上で、実際に環境を具現化(開発)する時の注意点についてお話しさせていただきます。前回は、自社顧客化の施策で有効な方法として紹介した自社アプリ開発についてお話ししました。今回はアプリ以外の多様な周辺ツールの開発について、詳しく見ていきたいと思います。
目次
1-1.[公式サイト関連] SEO対策 1-2.[公式サイト関連] 来店計測 1-3.[公式サイト関連] 計測用ランディングページ 1-4.[公式サイト関連] 店舗ページ 2.[LINE] クーポン計測 3.[GBP] 店舗情報更新 4.[各種SNS] 配信ツール、集計、分析ツール 5.[Web広告] 利用件数の計測 6.自社予約機能 7.[チラシ] 配布申込、集計、分析 8.モバイルオーダー1-1.[公式サイト関連] SEO対策
公式サイトの各ページの構成が、SEO対策に適しているか見直してください。GA分析やSEO対策が強いアナリストに相談しながら、構成の見直しをすることを勧めます。
商品メニューをPDFを貼り付けただけの企業をよく見かけますが、各商品別に詳細を記載していきましょう。
Googleはネット上の網羅的な情報から各サイトの精度の良さを検索ランキングに反映するため、肝心の“公式サイトそのもの”の構成はきちんと整備する必要があります。
1-2.[公式サイト関連] 来店計測
公式サイト上から店舗別の予約ボタンをタップした件数や、予約後の来店件数を紐付けて計測出来るような実装をしてください。
グルメサイト等の予約は、連動が出来ないと思います。そのような場合は、店舗別の予約ボタンをタップした件数をコンバージョンとして計測し、実際の予約件数と来店件数についてはグルメサイト側に提供依頼をしてください。
業態にもよりますが、グルメサイトに依存しない自社予約機能があることが理想的です。
1-3.[公式サイト関連] 計測用ランディングページ
アプリやweb広告、LINEでの施策時、施策内容に合わせたランディングページ(LP)等が必要になりますが、各媒体からの利用傾向を可視化するための実装がいつでも出来るように、準備してください。
web広告とアプリ会員を紐付けた計測する場合についても実装が必要です。「今回の施策で結局、何人会員が増えたのか?」「何人来店したのか?」と、web広告の寄与に関して開示要求される場合があります。
一年中、シーズン別に施策があると思いますが、LPのフォーマットを先に制作してしまい、あとは更新していくだけというパターンの方が、費用も含め、効率的に運用できます。
1-4.[公式サイト関連] 店舗ページ
各店舗ページは、営業時間や利用できるサービス内容の更新が多いと思います。
Googleビジネスプロフィール(以下、GBP)運用のSaasを利用しているなら、拡張機能を用いてGBPとセットで公式サイトの店舗ページを更新する運用を勧めます。web制作会社に随時更新の依頼をするよりも、ずっと効率的です。
公式サイト、アプリ、GBPで共通している情報を更新する場合、それぞれを別々に更新する運用は負荷が高くなってしまいます。効率的な運用に切り替えた方が良いでしょう。
2.[LINE] クーポン計測
LINE上のクーポンをPOSで集計できるようにすれば、同じ施策でも「アプリ経由」「LINE経由」と、クーポン利用件数等を別々に可視化できます。POS上でLINE用のクーポン番号を発番して、QRまたはバーコードなどで表示してください。
LINEミニアプリを導入(または、導入予定)であれば、その延長として実施してください。LINE上で開発することは特にないと思いますが、各施策実施に、クーポン計測出来る体制にしておくということになります。
企業によっては、アプリ会員、LINE会員が重複している場合もありますので、並行して開発を実施する必要があります。
3.[GBP] 店舗情報更新
各店舗のGoogleビジネスプロフィール(GBP)ページを更新していくには、Saasを用いて簡単に更新できる体制にする必要があります。
管理画面の設定や更新者のアカウント別の権限等も、使い分けが必要です。公式サイトの開発でも言及した通りですが、効率的な運用の為に、GBP更新と公式サイトの店舗ページ更新はワンストップで行うことを勧めます。
4.[各種SNS] 配信ツール、集計、分析ツール
現在、企業が運用するSNSは、X(旧Twitter)、Instagram、TikTokが主力ですが、多くの企業はSaasを利用して運用しています。
SNS上で実施できる手法は各SNSによって異なりますので、どのSNSアカウントを活用するかによって、適正なSaasも異なります。Xはキャンペーン施策や抽選、アンケート等の手法が豊富ですから、Xの運用に強いSaasの利用を勧めます。
Saasを選定したらSNSアカウントと連携するだけです。データ集計方法については、他のツール(アプリやweb広告)とクロス集計することを想定して対応してください。
5.[Web広告] 利用件数の計測
各Web広告上での来店件数、クーポン利用件数、アプリ会員化数等、計測したい数値に合わせ、専用のタグやQRなどを仕込む必要があります。
Google、LINE、Instagram広告等、複数の種類に対して同時に配信する場合、計測タグやQRなども別々にしないと集計が混ざってしまい、どの広告が本当に来店に寄与したのかわからなくなります。
Web広告経由でアプリ会員化を計測したい場合、Saasを使って計測してください。どの広告がアプリ会員化に寄与したかだけではなく、次回以降のWeb広告時に既存アプリ会員を除外した配信もできます。Web広告は新規顧客、アプリは既存顧客と分類する方が、広告予算の適正化にもなります。
6.自社予約機能
グルメサイトから脱却したい業態であれば、自社予約の導入をお勧めします。
自社予約といっても自前で開発する必要は無く、Saasを利用して自社予約すればデータ活用をすることが出来ます。各施策別の予約来店への寄与についても、計測が必要ですので、公式サイトやGBPなどに計測タグの設定をしてください。
予約時に個人情報の入力やログイン等が必要用どうかは、ユーザーにストレスが少ないフローをまず検討してみてください。
7.[チラシ] 配布申込、集計、分析
全国にチェーンストアがある場合、郊外ではチラシ配布の必要が多々あると思います。チラシ配布に関しては、本部の一括管理であったり店舗別だったりと、状況は様々ですが、データを可視化することが重要です。
今も紙のようにPDFの地図をみて、どこにチラシを配布するか検討し、エクセルデータの町丁目のリストから選定と配布枚数の設定をする企業が多いと思います。人口がいる場所はどこか見極めて配布エリアを選定し、その後エリア別の配布枚数を調整して、チラシのクーポンを実際に利用した件数を可視化できるような環境を作ってください。
Saasでも可視化の実現が出来ます。年間のチラシ配布予算や費用対効果のポテンシャルを加味して、導入してみてください。
Saasの場合、配布したチラシのクーポンをPOS連携するような設定が必要です。「チラシのクーポンを使いたいなら、アプリ会員になってくれれば使えます」という仕組みにするのも良いでしょう。これであれば、どのエリアのユーザーがアプリ会員になったのかについても可視化できます。
8.モバイルオーダー
店内注文、また外からの注文の場合、アプリ会員(またはLINEミニアプリ)との紐付け、連携の実装が出来るか、検討してみてください。
モバイルオーダー自体が自社開発またはSaasかで、機能的な連携確認が必要になってきます。ユーザーの注文傾向、来店頻度等、デモグラフィック分析は今後の商品開発や施策を考える際に、大いに活用することが出来ます。
執筆者プロフィール
清水 圭介
コンサルタント
株式会社EPARKを経て、2018年に物語コーポレーションに入社。外食チェーンストア(焼肉きんぐ・丸源ラーメン・ゆず庵)におけるデジタルマーケティング・DXの部門を立ち上げ、OMO構想からCDP構築を軸にアプリ・web開発からマーケティングまで網羅した戦略立案・企画推進、開発からマーケティング運用を担う。2021年にレインズインターナショナルに入社。デジタルマーケティング部の部長として、牛角・温野菜を中心にCDP構築・web広告・順番受付開発運用などを担う。2023年9月クラスメソッドに参画。
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