プリズマジャーナルTOP“今さら聞けない”小売業界の素朴な疑問「CRM」についてプリズマコンサルにぶつけてみたインタビュー! No.3
“今さら聞けない”小売業界の素朴な疑問「CRM」についてプリズマコンサルにぶつけてみたインタビュー! No.3

“今さら聞けない”小売業界の素朴な疑問「CRM」についてプリズマコンサルにぶつけてみたインタビュー! No.3

皆さんは、周りの人が当然知っているはずだと思われていることを、実は理解していなかった経験はないでしょうか? 小売ビジネスの現場で「当然知っているはず」とされながらも、実は十分に理解出来ていない概念を、小売業界での業務経験豊富なプリズマティクスのコンサルタントインタビューを通して、理解していければと思います。

全4回にわたってお送りする本インタビューシリーズ、1回目は業界・企業ごとに異なるCRMの意味やアプローチ法に関して、2回目はCRM戦略の成功の秘訣であるデータ分析に関してご紹介しました。

3回目となる今回は前回のデータ分析の続きで、どんなデータをどのように活用するべきか?
実際にCRMを効果的に使えている企業様の例も踏まえてお話いただいております。

1.CRMを効果的に使えている企業様とは

田中:CRMを効果的に使えてる企業様で、例えばどんな企業様がありますかね。

金子:わかりやすいんだったら、オリエンタルランドじゃないのかな。効果的に使えてるんじゃないかな?
だから値段を上げてもちゃんと来場していただけてるわけだし、混んでるんだけど、うまくアプリの仕組みを作って、ちゃんと課金も込みで関係うまく作れてるなって、普通にちょっと思うけどね。

田中:ちなみにそれって課金だけですか?

金子:課金だけじゃないと思うよ。当然、あの世界観というかもうブランディングが素晴らしい前提というところがあります。

世界観がちゃんと作られていて、行くだけでも楽しめるし、アトラクションに乗る上でのアプリとかも整備されてる。
その中で、お金を出してもいいという人だったら、お金を出しても楽しい感じもできるし、別にお金は出さなくてこの世界に浸ればいいんですよっていう方でも楽しみます、というのがまず出来上がってる。

ベースに中のスタッフの全部行動も含めて、演出がちゃんとできてる。
なのでブランディングとか考えると、コンタクトポイントというかお客さまと接触するところをうまくマネジメントしなきゃいけないんだよね。

例えば、車のディーラーで車を買いました。
ディーラーで買うまでは、営業さんが懇切丁寧でめちゃくちゃよかったのだけども、アフターサービスで、ダメダメな対応をされたら、その時点でそのブランドは失墜するわけです。本質的なお客さまとの関係を作ろうとしたら、コンタクトポイント全体をマネジメントしなきゃいけないんだよね。

田中:カスタマーサクセスは全体設計が大事ですみたいな?
アフターフォローまで一連の体験が全部良くないと落ちますって話ですかね。

金子:そう。少なくとも、悪いコンタクトポイントを作っちゃいけない。
当然、得意不得意があるので強弱は出ますけど、ただ悪いポイントを作ると、そのブランドに対しての信頼がなくなっちゃう。

だからディズニーランドは、ちゃんとそこは出来上がってるって思う。
マイナスポイントがない上にプラスポイントがある状態が組まれてるから、お客さまとの関係は作れるよね。
そして、プラスポイントに情報がどんどん増えてきてマイナス点がないから離脱が少ない。

なので、深いお客さまがどんどん育っていく。育っていただけると、お金を使ってもらえる。
また、お金を使うことに対して満足な課題から離脱もしたいし、だからまた単価があっても来てもらえる。

田中:なるほど。ディズニーランドはすごくよくわかるんですけど、もうちょっと身近な企業でCRMを効果的に利用できている企業はありますか?

金子:わかりやすいところだと、うまくできてるなと思うのはUberEatsとか。
引っ越してUberEatsの店が広がったんで、よく使うようになっちゃった。

高いのに使うんだよね。近くの店へ行こうとすると、めっちゃ混んでるから。なおさら週末UberEatsの方が早くなっちゃうんだよね。けど配達員さんの品質なんかは、特に管理できてはいないじゃない。

田中:はい。たまにそういうことがありますね。

金子:うん。丁寧な方もいるし、届いたらぐちゃぐちゃの場合もあるし、お店の人が間違える時もある。
けどクレームっていうか報告するとすぐクレジットくれる。あれはまあマイナスすぐイーブンにしてくれるんだよねうん。

当然、何回か注文すれば、自分に合ったものを基本ちゃんと出してくる。リピートもシェアしたくなるような仕掛けにもなってくるし、私はグルテンフリーを検索するので、それで調べるときもあって、この店グルテンフリー扱ってるってリアル店舗売り行ってみたりもしてる。だからうまくできてるなと本当に思う。

マイナス点が出やすいビジネスモデルだけど、マイナス点をちゃんと補填はしつつ、何よりの利便性とかレコメンド的な動きをちゃんとしてる点は、うまくできてるよね。

田中:確かにデータを取られてる感じはしてますけどね。私。住所に、クレジットカードに、自宅ではない場所などなど。

金子:クレジットカードも登録してるし、自分がよく頼む価格帯も把握されてるだろうし、どんなカテゴリーとか興味があるとかも多分取られてるし、確かにそれは明確にとっているでしょう。で、それに対してうまく提供している。

別にプログラムとかなくてもいいんだろうなって思う。

田中:ポイントは、別にUberEatsはポイントいらないですもんね。ないけど普通にまわってますね。

金子:ないけど、割引の特典はちょいちょいつけてくれるしね。

2.どんなデータをとりたいのか?

田中:金子さんだったら、この裏のデータ何を取りますか?
もしUberEatsの人だったら何を取ってどう出したいって思うのかなとふと思いました。
うまくできているとおっしゃってるんですけど。何のデータを収集して、何をお客さまに出したいと思うのかが知りたいです。

金子メニューの特性とか、もうちょっと把握したいなって。
UberEatsとして取得しているかわかんないけど、ファミリーセット的なものとか、何人様用とか多分あるはずで、そのあたりが取れるとなんか家族構成だとか、もしくは、普段は一人分しか頼まないんだけど、たまに複数人分頼むとかなんかその辺とかがわかったりする。そうするとレコメンドするのがいろいろ変わりそうな気がする。

あとは、普段は結構こってり系頼んでんだけど一定サイクルで健康に一瞬目覚める時があるとか。
そのサイクルを知りたいとか思うかもしれないですね。サイクルがわかれば、その時期に健康的なものはどうですか?って出せる。
健康期間に入ってくると、UberEatsを頼んだから若干罪悪感があるんだけども、そこに健康が入ってくると一瞬それが薄れるじゃない。薄れた瞬間にそういう免罪符的な。

田中:「今だ!」のタイミングですね。なんか始まったぞ「アレが!」っていう感じ。

金子:その瞬間とか把握できたらいいんだろうな。それ私買っちゃうんだろうなと思う。

田中:そういうのって今までそういうすごい細かいとこまで分析できたのとかあるんですか?事例って。

金子:いやわかんない。

田中:なさそうな気がします。

金子:なさそうだよね。

3.購買特性から推測する

田中:じゃあ、実行できるのって結局どこまでなぐらいなのかな。一般的に最初に始めるとしてっていうのがちょっとわかんないなと思ってるんですよね。

金子:ある意味なんか購買行動から推測するのが正しいんじゃないかなって、結構前から思ってたんだよね。

マーケティングのメンバーとディスカッションとかしてて、お客さまをクラスター分析する方が正しいんだろうなって結構思ったんですよね。

例えばID-POSSとかの前の時代は、レジで性別年代のキーがあってそれで顧客属性を把握しようとしてたんだけど、デモグラ情報じゃなくて、購買特性でクラスタリングしていった方が実はいいんじゃないの?っていうちょっと議論はしたことがある。

この人はランチのお弁当を中心に購入している人。しかもカロリー高めとか、別の人は、夜にお酒とそのあてを買いに来る人とか。
その購買特性でグルーピングだと、別にそこに性別年代はなくてもある意味良くて、その一定同士のクラスター間の親和性とか見れると、じゃあ夜買いに来る人たちに対して、プラスでどの時間帯にプラスの商品買ってもらえるかって議論ができる。

CRM=(イコール)「お客さまの個人情報を集めなきゃいけない」っていうのは、まやかしな気もちょっとしてるっていうか、取れる情報でやれることなんじゃないのって思ったんだよね。

田中新たに取るんじゃなくて、今ある情報から?

金子:それでも十分かと思ってる。「今できてないこと」があれば仮説が出てくる。
その上でどうしても欲しい。さらに欲しい情報が見つかったら取ればいいんじゃないのって思う派なんだよね。

田中:「とりあえず全部取ってください」ということはよくありますけども?

金子:だってとりあえず何でも取得しましょうって、とりあえず何でも入力しましょうって、私はお客さまの立場にならないからね。

田中:いやそうなんですけど、わからないから取りましょうなのかなって、ずっと思ってたのもあります。

金子:リアル店舗出してる時点で、全部のお客さまの細かい情報取れるわけないでしょう。ECとかデジタルの世界で商売してればまだ取りやすいけど。
それだって子ども情報、家族情報をとりたいっていっても取れないし、それは購買傾向とかで推測した方がいい。
別に本当に家族がいようがいまいが、家族がいる方っぽい行動する方だったら別にニーズは一緒だからね。

田中根本というか行動特性が一緒だからですね。

金子:知りたいのはデモグラですか?本当に知りたいのは、そのお客さまの行動が予測できるものが取れればいいんだよねって思ったらどうでしょう。過去の行動特性って勝手に分類しちゃっていいんじゃないの?って思う。

田中:というとなんか最低限は購買情報があればいいっていう認識なんですか?

金子:ええと、リテールは多分私はそっちだと思っていますね。せめてIDが紐づいてれば別に分析なんかいくらでもできます。

田中:確かに。最低限それだと共通IDが絶対いるよねっていう認識。

金子:それはそう。同じ人がどんな行動をしているかを時系列で取るやり方だと、IDは欲しいよね。だからミニマムは共通IDじゃないかな。そもそも、共通IDがないとCRMにはならない。

もしも共通IDが取れなくても、コールセンターでよければ、例えば電話番号でもいいし、とにかくユニークなキーがあればいい。

それがあれば分析はいくらでもできるし、そこで補足できれば、その方に何かアプローチはできる。

田中:というと一般的な企業様はある程度のデータを既に持っている前提ですか?

金子:ある程度は持ってるよ。だから、本当は自分たちで分析できる。

だからこそ、私たちは今の分析結果をくださいってもらって仮説を立てられるんだよね。ある程度で仮説立てて。
そんなに大外することもないしってことは、もともとあるデータである程度できると正直思ってます。

田中:ただ、うちにご相談いただいている状況なんですけども。

金子:そう。初めの方に言った通り、「データが本当にこれで全部なの?」とかを言う人も当然いるし、購買特性だとこういうクラスターに分かれますって言っても「本当なのか」と言う人も必ず存在します。

その方々を説得するお手伝いというか、その企業がやっても、コンサルがやっても同じようなクラスターになるのを、内部の人ではなくコンサルがこういうクラスターになりますって言ったら、「なるほど、勉強になります」と決まることもあります。

田中:じゃあ、どの企業様も頑張って自分たちのデータをこう頑張って見出すことができれば、コンサルを雇わなくてもできる。

金子:はい、そのはずなんですよ。だってうちに来てもらってるコンサルだってコンサル出身じゃないんだからそうですよね。自分で考えてやったんだろうなって人を集めてるわけですからね。
 


今回は、「CRMを効果的に使えている」と感じる企業の一例をもとに、プリズマティクスのコンサルタントとしてどのようなデータを取得・分析してみたいか?といった興味深いお話をしていただきました。
そして実は一般的な企業は既にある程度のデータを既に持っており、「購買情報」からでも十分にデータ分析、仮説立てが可能なようです。

尚、プリズマティクスは、11月27日(水)に小売企業・飲食企業様向けウェビナー、「ベイシア×ユナイテッドアローズに学ぶ!ビジネスの次の一手に繋げるデータ活用」を開催します。
本セミナーでは、ベイシア様とユナイテッドアローズ様を特別ゲストとしてお迎えし、「売上増加やリピート率向上」「顧客のロイヤリティ向上」といったビジネスの課題解決におけるデータ活用について、事例を紹介しながら詳しく解説します。

詳細は下記よりご確認いただけます。是非ご参加ください。

 

次回は本インタビューシリーズの最終回!
CRMの本質と考え方など公開していく予定です。最後までお楽しみに。

田中 由希子

執筆者プロフィール
田中 由希子
デザイナー

印刷、WEB、MDMベンダーを経て2016年5月にClassmethod入社。2020年心理学専攻で大学卒業。銀座コーチングスクール卒。UX Japan Forum 2015運営委員、UXシンポジウム2016福岡運営メンバー。クラスメソッドでは、エンタメ企業アプリ、薬局アプリ、小売アプリ、ハイブランドアプリほかCX OREDER、LINE miniアプリまたは、管理画面のデザイン・体験設計に従事。

⾦⼦ 傑 執筆者

執筆者プロフィール
金子 傑
シニアコンサルタント

2000年イオングループのミニストップ入社。システム部⾨にてECサイト、DWH、商品マスタ等のPMを担当。2011年以降はシステム部門を離れ、九州営業部長、社長室長、サービス・デジタル推進部長、マーケティング部長等を歴任。2018年11月にクラスメソッドに参画。OMO/EC、CRMを中⼼に、事業戦略から業務設計、PMまで幅広い領域を担当。
【支援実績】
OMO/EC:アンファー、グラニフ、⼤⼿スーパー、雑貨⼩売店(戦略策定、業務設計)、大手生活用品メーカー(D2C)等
CRM:サンリオ、大手アパレル(会員制度設計)等

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