スターバックス・ユナイテッドアローズ・SHIPSなど有名企業が見直した今 御社のポイントプログラム、見つめなおしてみませんか?
少し前の話になりますが、3月12日~3月15日にかけて実施されたリテールテックに我々も出展しておりました。その際に「ロイヤルティプログラム」の以下のようなご相談を数多くいただきました。
・ポイントプログラムがうまく活用されていない
・ロイヤル層を拡大したいが拡大できない
・ユナイテッドアローズさんのような「行動」を取り入れた制度を考えたい
このようなお話をいただいた背景の一つとして、去年の11月の日経クロストレンドの特集やユナイテッドアローズさん、SHIPSさんなどの新会員制度の発表により注目された側面もあると思います。
ただ、その注目が集まった背景をより深く考えると「現在のポイントプログラムって役に立っているの?」という潜在的な不安感や疑問があるのではないか?と考えています。
今回、こういった不安や疑問をお持ちの方に向けて「何を考えればよいのか」「どう考えればよいのか」をお伝えし、ロイヤルティプログラムについて深く考えるきっかけになればと思い連載企画を企画いたしました。
1.ポイントプログラムの効果が出やすいケース・出にくいケースとは
結論から先に申し上げると、「購買頻度」と「商品単価」でポイントプログラムの効果が出やすい業種と出にくい業種が分かれると考えています。
具体的なケースで考えます。
よくある100円=1ポイントの制度として以下2つのような「購買頻度」の違う業態を考えてみてみましょう。
Case1:スーパーなど週に2回程度訪問し、1回あたり3000円程度の購入をする購入先
Case2:アパレルで年4回訪問し、1回あたり2万円程度の購入をする購入先
分かりやすいように1年で獲得できるポイントを比較すると
Case1:52週間×2回×30ポイント=3,120ポイント
Case2:4回×200ポイント=800ポイント
このように、同じポイント料率であっても1年間で獲得できるポイント料率に差が出ます。
さらに注目していただきたいのは、購買する物の単価です。
スーパーであれば、300円くらいの物が中心なのに対し、例に挙げたようなアパレルだとTシャツで6000円~8000円、パンツで2万円程度が主流でしょうか。
この商品単価の差を踏まえて無料で商品と交換できるスパンを比較すると
Case1:10回(1回あたり30ポイント)=約2か月継続すれば1品無料になる
Case2:10年(1年あたり800ポイント)ポイントを貯め続けてTシャツ1枚が無料になる
という違いになります。
少し話がそれますが、皆様、車を買う際など数百万単位の買い物で、数万の違いが気にならなくなりオプション品をたくさんつけてしまったという経験はありませんでしょうか。
それと同じように、購入する物の単価により、10円や100円の単位が価値を持つと感じるのか、誤差と感じてしまうのか差が出そうだということを上の1品無料の比較で感じてもらえればと思います。
まして、購入頻度を考えると、Caseに取り上げた年4回程度しか訪れないライトなお客様にとって、数百円の値引きを「お客様が覚えているのか/魅力だと思ってもらえるのか」という点は難しいと言わざるを得ないかと思います。
このような「低頻度」「高単価」な業態では100円=1ポイントのような購買接点のみのポイントプログラムに価値を感じてもらえる顧客は「すでにロイヤルになっている顧客」であり、顧客の育成に寄与しにくいと考えて良いのではないでしょうか。
「顧客育成」が「ロイヤルティプログラム」の目的であり、その目的から考えると、購買接点のポイントプログラムは「購買頻度が高く」「商品単価が低い」業種に向いているが、「購買頻度が低く」「購入単価の高い」業種には向いていない、そのように言えるのではないでしょうか。
2.ポイントプログラムが課題化した背景
ここも結論から先にもし上げると、LTV(Life Time Value/ライフタイムバリュー)を重視する考え方が一般的になり、購入以外の接点がスマホ等の普及により作れるようになったからと考えています。
●LTVの重視がポイントプログラムの課題感を呼び起こした背景
少子高齢化による人口減や市場の成熟、90年代のようなメディアを活用したマスマーケティング効果の低下などがあり、新規顧客の獲得コストが高まった結果、安定的な収益確保のために、既存顧客からの利益を最大化する「LTV」という考え方が一般化したのはご存じの通りかと思います。
LTVの計算式はシンプルな物だと「LTV = 購買単価 ✕ 購買頻度 ✕ 契約継続期間 ✕ 収益率」ですね。
この購入頻度や継続期間を分解して可視化し、重視したことが、上記で記載した「現在のポイントプログラムはライト顧客の育成に役になっているの?」という課題感をもたらした背景にあると考えています。
●購買以外の接点が作れることがポイントプログラムの課題感を呼び起こした背景
ここは特に「低頻度」「高単価」な業態において、購買以外の接点づくりがLTV向上のために必要だという考え方が徐々に広まっているからだと考えています。
少し余談になりますが、LTV向上についての私自身の経験と実感を書かせてください。
LTVの向上方法は様々ネットに出ていますが、購買単価の向上や頻度向上を行うべしなど、上記計算式の分解した解説が目につきます。
「いや、その通りなんですが・・・購買単価や購入頻度を上げるために重要な指標(KPI)ってなんやねん。。。」
と正直、事業会社にいた時の私は思っていました。
転職し、様々な企業のプロジェクトに参画させていただいた結果、私が持った実感としては
「(適切な)接点回数の多い企業ほどLTVは高い」という実感です。
考えてみれば当たり前なのですが、購買単価や購買頻度の向上には適切なタイミングでの訴求が必要であり、購買以外のシーンも含めた顧客接点づくりが出来ている企業ほど、信頼やエンゲージメントが高まり、結果として購買単価や購買頻度の向上できるという関係性なのだなと考えています。
この私が理解するのに時間のかかった接点回数とLTVの関係性は意識的にせよ無意識にせよ、皆様感じていらっしゃるのではないでしょうか。
スマホ等の普及により、企業と顧客が「購買以外の接点づくりが出来るようになった」時代において、自社のポイントプログラムがLTV向上のための接点づくりに寄与出来ているかという課題感があるのではないかと考えています。
3.ロイヤルティプログラムを検討する際に必要な視点とは
改めてこの稿をまとめると
特に「購買頻度が低く」「購入単価の高い」業種において、現在のポイントプログラムが「顧客育成」=「LTVの
向上」に合致しているか見つめなおしてみませんか?
がまとめになります。
この連載では、見つめなおしていただくために様々な切り口からロイヤルティプログラム設計に必要な視点をお伝えしたいと考えています。
詳細は後続の原稿に譲るとして、ロイヤルティプログラム設計に必要な視点を弊社の制度設計の流れを元に整理いたします。
弊社では通常、以下の3ステップでロイヤルティプログラム設計を実施しています。
今後、上記の各観点について、詳細にお伝えしてまいります。
後続の連載にご期待ください。
加藤 彰浩
(業務・システムコンサルタント)
株式会社セブン‐イレブン・ジャパンを経て、2006年にベネッセコーポレーションに入社。採点サービスの物流基盤デジタル化プロジェクトを皮切りに、新規サービス立ち上げおよび既存サービスの維持・改訂におけるPM/PMOや商品責任者として、戦略立案から企画推進、システム開発、業務運用構築までを一貫して手掛ける。2022年11月クラスメソッドに参画。prismatixのコンサルタントを担当。
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