プリズマジャーナルTOP「良品週間」スタート初日に考える、良品計画クラウド活用の成功・失敗例と今後の展望[リテールテックJAPAN2024]
「良品週間」スタート初日に考える、良品計画クラウド活用の成功・失敗例と今後の展望[リテールテックJAPAN2024]

「良品週間」スタート初日に考える、良品計画クラウド活用の成功・失敗例と今後の展望[リテールテックJAPAN2024]

プリズマティクスは、2024年3月に東京ビッグサイトにて開催された「リテールテックJAPAN」EC・デジタルマーケティングゾーンに、クラスメソッドと共に出展しました。3月14日には、主催者セミナー(リテール&セキュリティステージ)にCEO濱野が登壇。良品計画 ITサービス部 執行役員、久保田 竜弥氏をゲストにお迎えし、「クラウド活用の成功・失敗例と今後の展望」と題してディスカッション形式でお話しさせていただきました。本記事では、当日の様子をご紹介させて頂きます。

(取材・構成・文=プリズマ編集部)

1.「良品週間」クラウド利用で、急激なアクセス増に対応

濱野:クラスメソッド執行役員、プリズマティクスCEO濱野です。良品計画 ITサービス部 執行役員の久保田氏をゲストにお迎えして、セッションをお送りします。本日、2024年3月14日は、セール週間「良品週間」のスタート直前ということで、そのクラウド利用についてお伺いさせてください。

久保田:「良品週間」は10%オフのセール週間で、最近は1年に2回やっています。10日間程あるこの期間中に、ネットストアの約4分の1の売上がある、僕らにとっては一大イベントです。この期間は通常トラフィックとは比べものにならない、圧倒的な数のトラフィックが来ますが、いかにサーバを落とさずお客様にお買い物していただけるのかは、売上に直結してくる重要な課題です。

僕が入社した2022年4月、久しぶりに「良品週間」が実施されたんですが、その時には、ネットストアが落ちてしまったんですよね。それまでも無印良品は、サーバが落ちてお客様にご迷惑をおかけすることが度々あったようです。その時も勿論、対策はしていたようなのですが、結果的に予想を上回るお客様にアクセス頂いたことで、落ちてしまった。

久保田:僕にとっては、入社してたった1ヶ月後のことだったので、とても焦って「もうだめだ、これでクビになってしまう……」という気持ちで、めちゃくちゃ各方面に謝っていたのを覚えています。その半年後にも「良品週間」を開催することになって、「次の良品週間は、絶対に落とさないようにしよう」と色々な対策を打ちました。その一つがクラウド活用です。クラウドのオートスケールを活用することで、アクセス負荷に合わせたインフラの柔軟性が増しました。

濱野:リアルなお店だと、沢山お客様が来るからといって一時的に面積を拡張しますというわけにはいきませんが、クラウド利用のECだからこそ出来ることですよね。アクセスが増えるというのも、徐々に増えていって「10分前の3倍もアクセスあるね」というようなものであれば、人でもある程度対応出来るかもしれませんが、それどころではなくイキナリ跳ね上がる、というものだと、構えようが無いところがありますね。

久保田:まさに、スタート時間が、鬼門なんですよね……。“その時”に対応出来るようにいろいろ構えておいたとして、“その時”以外はほとんどその用意が必要ないという問題もあります。必要な時だけ必要な分を利用出来るクラウドは、コスト面でも非常にメリットがあります。……ところで、今日は、大丈夫ですか?(笑)

濱野:大丈夫です、大丈夫です。

久保田:やれることは全てやりましたから、大丈夫だとは思うんですが。フロント側もキャッシュを使ったり、無駄なAPIを叩かないようにしたり。でも今晩24時は僕も濱野さんも待機していて、何かあればすぐ対応するということになっていますので、皆さまアクセスして、対策がうまくっているかどうか見守って頂ければと思います。

2.クラウドだからこそ出来る、業務効率化や社内外連携を推進

濱野:これまでの動きを踏まえて、今後クラウド活用をどのように進めていこうと考えられているか、お話を窺えますか。

久保田:良品計画は長らく東池袋に本社があったんですが、今年2月に飯田橋に本社移転をして、そのタイミングで社員の業務システムとしてクラウド導入を進めました。ちょっと前までは「クラウドってちょっと危ないんじゃないか、ローカルの方が安全じゃないか」という意識もあったとおもいますが、今は真逆で、特にランサムウェア被害に対してはローカルに置いておく方がよっぽど危ないという、世の中の流れがそうなっていますよね。

働き方や環境を変えるって、ものすごくパワーがいります。弊社も何十年という歴史のある会社で、ITに詳しい人が多いというわけではないので、そういう方々に納得して頂いて、動いて貰うというのはなかなか難しいことでした。今回本社移転という“全員にとっての一大事”というタイミングで、運用を入れ替えられたのは良かったと思っています。

久保田:もうひとつ、あまり知られていないことかもしれないのですが、良品計画はグローバル展開をしている企業でして、店舗の数だけでいったら、実は国内店舗数よりも海外店舗数の方が多いんです。ところが国内と海外ですと、各国それぞれの状況、事情がありまして、顧客基盤やセキュリティ要件が違い、統一するのが難しくそれぞれ運用されてきたんです。これを今後統一して、横断的にコミュニケーション出来るようにしたい、という計画があるのですが、これはクラウドだからこそ出来ることなのではないかと思っています。

今、サプライチェーン管理をしている基幹システムの刷新も進めていて、これもクラウドを利用しています。これからシステムも他社連携をすることが当たり前になっていくと考えると、標準化されたデータベースで、クラウドで、ということになっていくんじゃないかと思いますね。

濱野:久保田さんが入社された2022年と現在では、ECの作り方そのものが大分変わってきていると思います。ECの作り方そのものを、徐々に時代に合わせたものに構築し直してきたというのも、今“効いて”きていることの一つではないでしょうか。

久保田:実はここ最近、無印良品のリアル店舗の増加がすごい勢いでして。年間20店舗程度の増加だったところ、ここ数年は年間70〜80店舗も増えているんです。そうすると、実店舗で会員証アプリ「MUJI passport」を開いて頂くお客様数もとても増えているということになるんですね。ネットストアだけでなく実店舗からのアクセスでも、当然サーバアクセスは発生しているわけですので、ここにも柔軟に対応出来るようになっていたのは助かっています。

濱野:ネット店舗とリアル店舗、お客様にシームレスにお買い物して頂けるように、OMOにしっかり対応している無印良品だからこそ出てくる課題だとも言えそうですね。

久保田:新しく始めたことが新しいボトルネックになってしまうというのは、難しいけれど、どうしてもありますよね。お客様だけでなく、店舗を含めたスタッフが業務を行いやすくなるようなシステム構築、業務効率化をしていかなければと考えています。

3.クラスメソッドグループが支援する、良品計画様のクラウド利用とデータ基盤構築

クラスメソッドグループでは、長年にわたり良品計画様のクラウド利用とデータ基盤構築のご支援をさせていただいております。詳しい内容については、事例記事やセミナーレポートにてご紹介させていただいております。小売業界にて情報システム部門所属の方々や、OMO、EC、顧客満足度向上等をミッションとする皆様の、お役に立てれば幸いです。

無印良品 muji.comのクラウド対応支援

●クラスメソッドによるAWS導入支援
無印良品は、世界各地に店舗を展開し、様々な地域と言語のWebサイトを運営しており、安定的かつ高速にコンテンツを配信するためWebサイトをクラウドへ移行することになりました。クラスメソッドは、muji.comのクラウド移行にあたって、アーキテクチャー設計と環境構築、移行支援を担当。準備から移行まで約1ヶ月間で完了しています。

顧客のニーズに対応するAPI基盤構築と統一した顧客体験の提供

●プリズマティクスによる顧客体験基盤構築支援
オンライン・オフライン、デバイスや利用サービスに依存せず、またサービス展開する世界各国の違いを考慮し、カスタマイズ適用できるアーキテクチャとして、お客様とのコミュニケーションや購買の“ハブ”となるAPI基盤を、クラウドベースで構築する支援をさせて頂きました。

無印良品のDX推進は“地域”と共に。 課題解決に向き合い、業務を愛するエンジニア組織が理想的

●流通ニュース×TECH+ セミナーイベントレポート
コロナ禍で大きく変容した生活者のニーズ、購買行動に対応し、顧客体験価値を向上させるため、小売り流通業界は今、デジタル活用による変革を求められています。そんな中、良品計画は「DX推進のために必要なエンジニア組織」について、どのように組織を整え、またサービスや収益にどのように貢献しようとされているのでしょうか。良品計画 執行役員久保田氏をゲストにお迎えし、CEO濱野がじっくりお話を伺いました。

(取材・構成・文=プリズマ編集部)

プリズマ編集部

「the engagement commerce platform for wow! experiences」をコンセプトに、小売業における顧客エンゲージメント向上の支援、戦略的OMOを実現するプラットフォーム提供を行うプリズマティクス株式会社が運営する、オウンドメディア『プリズマジャーナル』編集部。

『プリズマジャーナル』では、プリズマティクスで活躍するコンサルタントが執筆するコラム「徒然ジャーナル」、業界の先端を走り続けるプリズマティクスアドバイザーからの寄稿文など、小売業の皆様に向けて伝えたいこと、耳寄りな情報などをお送りします。

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