プリズマジャーナルTOP無印良品のDX推進は“地域”と共に。 課題解決に向き合い、業務を愛するエンジニア組織が理想的

無印良品のDX推進は“地域”と共に。 課題解決に向き合い、業務を愛するエンジニア組織が理想的

# 内製化 # DX # デジタル戦略 # エンジニアリング組織 # 無印良品

2022年8月18日、流通ニュース×TECH+ セミナー「リテールDX ~デジタルシフトで顧客との接点を強化する~」(https://news.mynavi.jp/itsearch/seminar/678)がオンライン開催されました。「無印良品の目指すDX推進のための組織づくり」と題し、良品計画 執行役員久保田氏をゲストに、プリズマティクス濱野も登壇させていただきました。この様子を、イベントレポートとして、前後編にお分けしてお届けいたします。

コロナ禍で大きく変容した生活者のニーズ、購買行動に対応し、顧客体験価値を向上させるため、小売り流通業界は今、デジタル活用による変革を求められています。そんな中、良品計画が考える「DX推進のために必要なエンジニア組織」について、どのように組織を整え、またサービスや収益にどのように貢献しようとされているのか等、じっくりお話を伺いました。

1. 無印良品「第二創業」、目指す姿は “地域に根ざす” 事業形態

プリズマティクス代表 濱野(以下、濱野):プリズマティクス代表の濱野と申します。元はコンサルティング会社の出身なのですが、良品計画様とは縁が深くて「MUJI passport」というアプリの立ち上げを支援させて頂きました。直近ではAPI基盤の構築支援をさせて頂いております。

本日は「無印良品の目指すDX推進のための組織づくり」というテーマでお話を伺っていきたいと思います。テクノロジーの話よりも「いろんな事業会社さんは十中八九、こういうことに困っているだろうな」というところに関して、久保田さんとディスカッション出来ればと考えています。

良品計画 執行役員 久保田氏(以下、久保田):株式会社良品計画の久保田と申します。私はもともと金融系のSIerに入社して、銀行系、証券系のシステム開発に8年程従事していました。2008年に、株式会社スタートトゥデイ、現在のZOZOに入社し、ZOZOTOWNの開発等にエンジニアとして従事しておりました。

その後、WEARというファッションコーディネートアプリを立ち上げ、事業責任者を経て、2017年にZOZOテクノロジーズというシステム開発の子会社社長に就任しました。良品計画のITサービス部執行役員として参画したのは2022年4月からになります。本日はよろしくお願いいたします。

濱野:最初に、良品計画において推進されている、あるいは推進していきたい「DX」とはどんなことなのか、お話を伺えますか。

久保田:良品計画は、昨年の10月から新しく堂前という社長が就任しまして、「第二創業」ということを掲げています。その中で、今後、推進して行きたい方向性のイメージというものがあるのですが……こちらになります。

濱野:田舎というか……“地方”のイメージですね。

久保田:そうです。無印良品や良品計画というのは、「都会的」「洗練された」小売というイメージがあると思うのですが、地方に根ざした事業の形態、新しい事業形態というところを模索、推進するということを、「第二創業」で謳っています。

「人と社会に役に立つ」という理念をベースに、様々なサービスや商品を提供する。これを実現するために、基本商品群の生産調達の基盤づくり、商品の安定供給、生産コスト低減、店頭欠品・過剰在庫撲滅などのための基盤システムをつくっていく。そして店舗が、地域のコミュニティとして機能しているような状態というのを作っていきたい。これがDX推進の大きなテーマになっています。

2. 「課題解決」に向き合い、手段としてテックを駆使するエンジニア組織

濱野:良品計画が目指しているDX推進を具体的にどう進めていくのか、DX推進に必要なエンジアリング組織をどうつくっていくのか、というところについて、考えをお聞かせ頂けますか。

久保田:「エンジニアリング組織」というのは、単純に、「エンジニアを集めた組織」ととられることが多いのですが、私は「技術を使って課題解決を進める組織」というのが「エンジニアリング組織」だと思っています。“課題解決ありき”というところが重要で、改善するための手段としてエンジニアリング技術を使う、ということですね。

濱野:「技術が大好きだから、それを使って課題解決したい!」という矢印の方向先をよく見ますが、本来的には逆じゃないか、と思ってしまいますね。

久保田:技術はあくまでも道具、手段であって、その技術を使って何をするかという、本質的なことをちゃんと考えているかどうかが大事だと思っています。「手段としての技術の知識」は、勿論、重要です。「何を使えばこの課題を解決できるか」ということを考える時に、手段を持っていなければ解決できないですから。ただ、理想のエンジニア組織とは何かと考えた時に、「課題解決」に向き合うということは、すごく大事だと思っています。

濱野:僕も元々はエンジニアでしたので、「技術が大好きで、技術を磨きたい」っていう気持ちは分かります。ただ、そういう考えのエンジニアは結構な数いると思うので、チームとして考え方の変革をしなければいけないとなると、なかなか大変そうだなと思うのですが……その辺はいかがでしょう。

久保田:そうなのですよ。面接をしていますと、皆さん「もっと成長したいです」とか、「もっと技術を身につけたいです」というように仰るのですけど、じゃあ、それ、何のためにやりたいの? 何のために成長したいの? と質問すると、「自分の知的好奇心を満たしたい」「面白いからやってみたい」という人が多くて。技術を身に付けることが目的になってしまっているんです。

その考えのまま実際に業務を一緒にしていくと、だんだんフォーカスがずれていってしまうというか……本来であれば課題解決のためのシステム開発をすべきなのに、途中から、自分がつくりたいシステムだけをつくるようになってしまったり、めちゃくちゃ綺麗なシステムをつくりたい、となってしまったりするのですよね。

その結果、開発費が余計にかかったり、スケジュールが伸びたり、ユーザーや使う人たちからすると使いにくい、ということになってしまいがちです。もちろん「綺麗なシステムをつくる」ということも大事なことですし、いいと思うのですが、目的の部分を忘れないようにしなきゃいけないなと、常日頃気を付けているところではあります。

3. ブランドへの“好き”、会社ミッションへの“共感”をキーワードに仲間集め

濱野:「組織」として課題解決を望む時に、こういう仕事を実際にやって欲しい、という具体的なイメージはありますか?

久保田:まず最初にやるべきなのは、業務プロセスを整理すること。そして、その業務プロセスにおける課題が何か、見つけることですね。ここがすごく大事だと思っています。

業務部門から「これが欲しい」と言われたら、それをつくることがお仕事のエンジニアさんが多いのかなと思うのですが、そうではなくて、エンジニアが業務プロセスの整理から入り込んで、解決すべき課題は何なのか見つけて、解決手法の提案もしていく。そういうプロセスで物事を考えたり、進めたりすることが凄く大事だと思っています。

濱野:会社の業務そのもの、あるいは自社のスタッフさんや、お店、商品、ブランドというところを好きじゃないと、それはなかなか難しそうですね。

久保田:エンジニア採用では、その会社の商品やブランドが好きかどうかや、会社のミッションに共感しているか、そういうところがすごく大事になると思います。仲間集めをする時に、会社のミッションやビジョンを、我々社員がちゃんと語れるか、というところもすごく大事だと思います。

濱野:採用活動は「仲間集め」なんですね。

久保田:仲間集めですね。会社として存在している、ということは、何かしらの形で社会貢献をしよう、というところがあると思うのですが、そこに共感してくれる仲間を集めることで、DX推進、良品計画が理想とするイメージを実現することが出来ると思います。ですから、ミッションとかビジョンや企業理念の理解、共感というところは、エンジニア組織をつくる上でも、一番大事なことだと言っていいと思います。(後編に続きます)

プリズマ編集部

「the engagement commerce platform for wow! experiences」をコンセプトに、小売業における顧客エンゲージメント向上の支援、戦略的OMOを実現するプラットフォーム提供を行うプリズマティクス株式会社が運営する、オウンドメディア『プリズマジャーナル』編集部。

『プリズマジャーナル』では、プリズマティクスで活躍するコンサルタントが執筆するコラム「徒然ジャーナル」、業界の先端を走り続けるプリズマティクスアドバイザーからの寄稿文など、小売業の皆様に向けて伝えたいこと、耳寄りな情報などをお送りします。

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