課題洗い出しには、コントロールできる“自社データ”蓄積が鍵【外食企業で“デジマ”を始める!】自社顧客化編
外食産業のマーケティングや業務効率化には「外食」という業種特有の課題がネックとなり、デジタル領域を活用しきれていない企業が多く見られます。外食企業が「デジタルマーケティング」「デジタルトランスフォーメーション(DX)」を始めるには、どうしたらいいのでしょうか。
「外食企業にてデジタルマーケティング(略称:デジマ)を始めるには何をどうすれば!?」とお悩みの担当者の方々へ向け、初回は環境整理について解説しました。2回目となる本記事では、自社顧客化に向けて必要なツールの精査についてお話しさせていただきます。
目次
1.法改正等の影響で、益々重要性が増す「自社データ」蓄積 2.抱えている課題の可視化は、自社データの分析から始める 3.基礎から解説!「自社顧客化」データ蓄積から顧客への配信活用まで 4.社内と店舗が一体になって取り組み、“感覚マーケティング”を脱却しよう1.法改正等の影響で、益々重要性が増す「自社データ」蓄積
前回の記事では、デジマ担当者が置かれている今の状況について把握する為に、まずはご自身の社内環境がどうなっているかを整理することが第一歩であるというお話しをさせていただきました。担当する業態において、ユーザーとの接点になるツールを整理します。使っているツールを全てリスト化するのは、大変だったと思います。
使っているツールの可視化が終わった後、主軸のツールを選定直したり、プライオリティを決めて段階的にツールを減らしたり増やしたりする等、予算を含めた見直しをすることになります。では、どのような基準で選定をすればいいのでしょうか。
● 新規顧客、既存顧客が可視化されていない
● 既存顧客がどのくらい再来店しているかわからない
● 顧客データの詳細が不透明
● 蓄積データが社外にあり、資産となっていない
● 今後web広告規制が強くなる(実績や分析が出来なくなる)
このような課題は、他社ツールや他社メディアに予算を多く使い業務依存している場合に起こります。特に今後web広告規制が強まるに従って、「自社データ」をしっかり蓄積していかないと困った状況になってしまうのは、多くの企業に共通した課題と言えます。
2.抱えている課題の可視化は、自社データの分析から始める
多くのBtoCサービスは現在抱えている課題を可視化できていないため、適正なツールや予算配分が出来ているとは言えない状態です。このような施策を打っていくには、自社の業態の顧客データを軸として、関連データを「自社データ」として蓄積し「自社顧客化」を進めていく必要があります。
● 一人一人の顧客の来店頻度を高め、業態の売上を成長させたい。
● 新規顧客・既存顧客の推移を可視化出来るよう、ツールや予算を最適化したい。
● 自社ブランドを複数利用する顧客を増やしていきたい。
自社顧客にするには、アプリ会員、公式サイト会員、メルマガ会員などがあります。自社顧客データなら集計分析、他のツールのデータ連携もできます。また、自社顧客にすれば、他の業態もクロスセルが可能です。LINE会員はあくまでLINE社がデータ保持しており、会員数が増えるほど従量課金となり、成長するほどコストも増えます。また自社の他の業態のクロスセルもできないので、お勧めはできません。
ただし、自社用のアプリを用意できない場合、低予算で済む範囲でLINE会員を利用するのは有効です。また予算や規模が大きいからこそ、LINE上でしか獲得できないターゲットがいるなら、自社アプリと並行利用することは有効だと思います。ただ少なくとも100店舗以上の業態や一定以上の顧客を抱える企業については、自社アプリ導入が自社顧客化にとって有効です。
3.基礎から解説!「自社顧客化」データ蓄積から顧客への配信活用まで
ここからは「自社顧客化」について、アプリを軸とする構成を解説していきます。下記の図は、自社データを主体にしながら、新規・既存顧客の来店を強化するための構造です。この図の各項目が示す内容について説明します。
「過去実績」の各ツールから得られるデータを集計します。自社データとクロス分析に活用します。今後、配信する実績も、ここに蓄積されていきます。できる限り、全てのデータを集約して更新する方が効率的です。
「自社データ」とは、アプリ会員データ、POSデータが基本のクロスさせるデータのことを指します。アプリ会員の情報を可視化することが出来ます。会計情報、いつ来店したのか、いつクーポンを使ったか?、何を注文したのか、誰と来店したのか、等のデータが対象となります。
「分析」は、全体的かつ定期的に集計したいデータを計測分析することを指します。仮説を立てて分析要件を整えて結果を都度考察していきます。BIツールの予算や環境も慎重に検討してください。POSデータを分析に使う場合、とても複雑かつ繊細な扱いなので、システム部との多大な調整が必要な可能性があります。
各ツールとデータを自社データに集約、その他のツールのデータも全て自社データ内に格納し、いつでも引き出せるようにすることが重要です。定期的な集計と分析(モニタリング)できる環境にしましょう。貯めたデータを集計分析した後は、各ツールから顧客への情報配信に活用出来るようなフローにすることが大切です。
○ アプリは、来店頻度を高める・離脱防止などのために会員をセグメント配信できます。
○ 公式サイトはUIUXを改善して、アプリ会員を増やしたり、予約来店件数を増やします。
○ web広告は新規顧客に特化するべく、既存顧客(アプリ会員)を除外して配信できます。
○ LINEは効率的に配信できるようにセグメント配信をします。そのためにはアプリ会員の傾向を分析して類似デモグラのLINE会員にセグメントすることも勧めます。
○ SNSはフォロワーの傾向を分析したり、投稿効果としてどれくらいアプリ会員に流入させたかなども計測することで、SNSの投稿品質改善やアプリ会員化への貢献度を計測します。
○ GBPはMEO対策として情報更新したり、キャンペーンなどの投稿で来店貢献度を計測したり、アプリ会員化にも貢献しているかも計測できます。
構造に基づく各基盤等の連携はもっと複雑になってきますので、まずは俯瞰的に全体をコントロールできるようにしましょう。
4.社内と店舗が一体になって取り組み、“感覚マーケティング”を脱却しよう
ここまで「アプリ」を有効な手段として取り上げてきました。自社チャネルに顧客を囲い込む為には、一つの業態専用アプリではなく複数の業態を統合したアプリにすることも手法としては効率的でとても有効です。外食産業では、すかいらーくのアプリが参考になります。ただし、1つの業態でトラブルがあると他の業態まで印象が悪くなる等、デメリットもあります。自社の経営戦略を踏まえて調整してください。
自社顧客データの精度が高くなると、意図的に来店頻度の底上げが出来るようになり、課題抽出やどの施策が効果あるかないかも可視化出来てきます。
例えば「ロイヤルユーザーは、インセンティブがなくても来店する」説もまま見受けられますが、アプリ会員の来店傾向を分析すると、果たして本当にそうなのかも可視化できます。インセンティブは必要な範囲で必要なターゲットに配布すれば良いので、そのバランスを見極めながら来店頻度を高めれば良いだけです。
これらを見極める為には、年間来店組数の多くをアプリ会員の来店組数にシンクロさせていくことが大切です。そこで、社内及び店舗と一体化して、アプリ会員化とチェックインを促進していく必要があります。
店舗別でアプリ会員数を競わせたり、社内インセンティブを提供することで増加を測って行けるように、社内調整も推進してください。多くの外食チェーンストアは「いかにローコストで来店頻度向上や新規顧客の獲得をKPIとする」体制が多いので、アプリ会員を主軸とすることはその実現に繋がります。
外食チェーンストアの体質として、本当の新規顧客と既存顧客のファクトが見えず、感覚マーケティングで意見が飛び交いがちです。数値の可視化はファクトとして大きな位置付けであり、従来の社内の定評を覆すこともたくさんあります。どの取り組みについても、精度の高い可視化を頑張ってください。
自社顧客化の構造を理解できたら、実際にデータ連携などを整えていくフェーズに入ります。次回は「開発とマーケティング」について解説していきます。
外食産業のマーケティングや業務効率化には「外食」という業種特有の課題がネックとなり、デジタル領域を活用しきれていない企業が多く見られます。外食企業が「デジタルマーケティング」「デジタルトランスフォーメーション(DX)」を始めるには、どうしたらいいのでしょうか。
「外食企業にてデジタルマーケティング(略称:デジマ)を始めるには何をどうすれば!?」とお悩みの担当者の方々へ向け、環境整理について解説しました。2回目となる本記事では、自社顧客化に向けて必要なツールの精査についてお話しさせていただきます。
執筆者プロフィール
清水 圭介
コンサルタント
株式会社EPARKを経て、2018年に物語コーポレーションに入社。外食チェーンストア(焼肉きんぐ・丸源ラーメン・ゆず庵)におけるデジタルマーケティング・DXの部門を立ち上げ、OMO構想からCDP構築を軸にアプリ・web開発からマーケティングまで網羅した戦略立案・企画推進、開発からマーケティング運用を担う。2021年にレインズインターナショナルに入社。デジタルマーケティング部の部長として、牛角・温野菜を中心にCDP構築・web広告・順番受付開発運用などを担う。2023年9月クラスメソッドに参画。
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