プリズマジャーナルTOP知っておきたい! 最近のWEB施策に関する法規制の変化について [今月の注目ニュース]

知っておきたい! 最近のWEB施策に関する法規制の変化について [今月の注目ニュース]

経済産業省の調査によると、コロナ禍前の2019年から2021年までで物販系分野のEC市場規模は年々1兆円規模で成長しており、利用者が急激に増加したことが見て取れます。それに伴い、利用者保護のための新たな規制が昨年から今年にかけて生まれています。

小売り×DXの気になるニュースを、リテール業界の現場経験が豊富なプリズマティクスのコンサルタントがチョイスしてお届けする「今月の注目ニュース」。今回は業務・システムコンサルタントの加藤が、今後の小売業務の変化をもたらす新たな法規制をピックアップ、その概要を見ていきます。

1.外部送信規律の告示(総務省)

●電気通信事業法の改正が2023年6月から施行。
●これまではウェブサイトやアプリを利用する際に、利用者の意思によらず、第三者に利用者の情報が送信されている場合があるとしている(外部送信)。
●法改正により、利用者に関して外部送信される情報についての透明性を高める。

 

まず初めに、2023年6月16日に施行になった、インターネット利用者の利益の保護に関わる事案に対応するための改正を見ていきます。

一定の条件に当てはまるWEBサービス(ウェブサイトやアプリ)において、利用者の意思によらず第三者に利用者に関する情報を送信している場合、送信先毎に「目的」「送信内容」「送信先」「送信先での利用用途」を「公表」または「通知」しなければならない、という規制になります。

この規制はブラウザの仕様として規制が先行していた3rd Party Cookieだけではなく、1st Party Cookieやアプリも対象になる点が注意点となります。一方、「ホームページの運営[自社商品等のオンライン販売]」や「ホームページの運営[企業等のホームページ運営・個人ブログ]」は対象外と明示されており、実務上の対応はほぼ発生しないかと思います。

ただし、「ホームページの運営[ニュースサイト、まとめサイト等各種情報のオンライン提供]」は対象とされており、判断に迷うケースもあるように思います。

まずは、こういった規制もあるという知識を持っておき、そのうえで個別具体的に判断していく必要があるということでご紹介させていただきました。

2.特定商取引法、通信販売申し込み段階における表示ガイドラインの通達(消費者庁)

●特定商取引法の改正が2022年6月から施行。
●消費者が注文を確定する直前の段階で、販売価格など契約事項を表示するよう規制をかける。
●事業者が消費者に誤認を与える表示を行った場合、消費者は取消権を行使できる場合がある。

次に、おそらく多くの方が影響を受けたであろう、2022年6月1日施行の特定商取引法の通信販売申込み段階における、表示ガイドラインについて見ていきます。

こちらは通信販売(EC含む)において、最終確認画面に「分量」「販売価格・対価」「支払時期及び支払方法」「引渡時期・移転時期・提供時期」「申込みの期間がある場合、その旨・その内容」「申込みの撤回・解除に関する事項」を分かりやすく表示しなければならないという規制です。

小売企業の皆さんは、こちらは現時点において対応済みかと思います。ただ、今後、何らかの新しい販売方法が出てきた際に、本規制に合致しているかの観点での判断が必要となるため、再確認して頂く機会になればと紹介させていただきました。

3.一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示規制(消費者庁)

●景品表示法にステルスマーケティング(ステマ)に関する規制が追加。
●広告主が自らの広告であることを隠したまま広告を行うステマの問題が顕在化。
●中立的な第三者のような体裁をとりながら、実際には金銭等の対価を提供された広告を行うケースなどが増加。

最後に見ていくのは、2023年10月1日から施行予定の「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の規制についてです。一般的には「ステマ規制」と呼ばれているものです。

いわゆる「ステマ」と呼ばれるもの以外にも、「高評価レビューをしてくれたら送料無料」等の高評価を誘導した自社レビューも対象になってくる点に、注意が必要です。

場合によっては、従業員の方の投稿などに「PR」「プロモーション」などの表示をする必要があり、手間がかかる可能性が有り、規制内容の把握が不可欠です。

4.まとめ

ここまで、近年の規制や法改正について紹介してきました。

このような法規制の動きは、理解しにくいことも多く、また自社の事業や運用が新たな規制に抵触するかどうかの判断も難しいことと思います。そのため、対応についても迷ってしまい、労力のかかってしまう仕事であるため対応が遅れてしまいがちであるかもしれません。

ただ、小売企業の皆様が日々お客様に満足いただけるよう様々な施策を検討し、実施されているにも関わらず、規制対応が出来ていないことでお客様の不興を買ってしまうのは、非常に残念なことだと思います。

ECの市場が拡大し様々な規制が生まれる中、お客様により良い顧客体験を提供するためには、法規制の動きも把握しながら企画・運営していくことが、今後ますます重要になっていくものと想定されます。

(構成・編集=プリズマ編集部)

OMO/オムニチャネルに対応したEC/OMO基盤「prismatix」は、拡張性の高い柔軟なAPIで戦略的OMOを実現します。無印良品、スターバックス、サンリオ、アンファーなど成長を見据えた企業に選ばれ続けています。

リテールでの実務経験が豊富なメンバーによるコンサルティングサービスも実施しております。
無料でのワークショップも随時開催中!

加藤 彰浩

加藤 彰浩
(業務・システムコンサルタント)

株式会社セブン‐イレブン・ジャパンを経て、2006年にベネッセコーポレーションに入社。採点サービスの物流基盤デジタル化プロジェクトを皮切りに、新規サービス立ち上げおよび既存サービスの維持・改訂におけるPM/PMOや商品責任者として、戦略立案から企画推進、システム開発、業務運用構築までを一貫して手掛ける。2022年11月クラスメソッドに参画。prismatixのコンサルタントを担当。

この記事をシェアする

Facebook