
「4月から新しくプロジェクトを立ち上げ、新しい顧客価値を提供するための活動を始めた!」そんな担当者の皆様も多いかと思います。私自身、前職では新しいサービスを提供するため、PMやPMOとして様々なプロジェクトを経験してまいりました。前回のコラムでは、プロジェクト開始期の失敗“あるある”として、プロジェクト開始期における私自身の失敗経験をお話ししました。
今回は、私がプロジェクト開始期(企画~要件定義)のフェーズにおいて、自分自身に対して問いかけてきた「問い」のうち、今でも大切にしている「3つの問い」をお話しさせて頂きます。皆様が取り組んでおられるプロジェクトの成功確度を高める為の、参考にして頂ければと思います。
1.「それは、今回目指さないといけないこと?」
プロジェクト開始期においては往々にして、たくさんの「変えたいこと」が出てきます。
しかし、プロジェクトには予算や時間の制約があり、それに従い実現できることも制約を受けます。全ての「変えたいこと」を叶えるのは、難しいのが現実ではないでしょうか。
プロジェクトの“お作法”を読むと、「優先順位を定める」と簡単に書かれていたりすることですが、実際には「優先順位を定めろって言われても……。どれも大事だし……」と、私自身、いつも迷ってしまいます。そのようなときに自問しているのが「それは、今回目指さないといけないこと?」という問いです。
「変えたいこと」を子細に見ていくと、業務改善や顧客価値向上、将来の変化に向けた備えなど様々な視点、視座が含まれています。一つ一つの「変えたいこと」を見るよりも、この視点、視座の粒度で優先しないといけないものは何か、ということを整理していくことが重要だと考えています。
これまでのコラムでも「手段が目的にならないように」「プロジェクトの目的を整理することが大切」といった趣旨のことを書いてきました。それは、プロジェクトの目的を根拠とした優先順位の決定のためでもあります。
もちろん、整理したからといって、優先順位は一人で決められるものではありません。相応に時間をかけてコミュニケーションをし、関連者と調整の上、決定していくことになります。
時間がかかることだからこそ、プロジェクトの開始期から終了まで、ずっと問い続けることが重要だと思っています。
2.「それは、今決めないといけないこと?」
プロジェクト開始時期には往々にして、たくさんの「決めないといけないこと」も出てきます。
プロジェクトの先々のことを考えると細々したことまで決めておきたい、一つのことを集中して考えたくなる。それは、よくあることなのではないでしょうか。その結果として、「本来決めないといけないことが、決まっていない」という経験も、多くしてきました。そこで常に自問しているのが、「それは、今決めないといけないこと?」という問いです。
プロジェクトの“お作法”では「常に全体像を把握してスケジュールを決定する」等と、これまた簡単に書かれていたりしますよね。でも「そもそも、全体像が見えていないのがプロジェクトの開始期なんだから、無理じゃね?」と思ってしまうのが、正直なところです。
「今決めるべきことを、定めていく」ということは非常に難しく、正解は無いのではないか、と思っています。あくまで私の場合、としてお話しさせていただくと、「今決めるべきことを、定めていく」際には、以下の2つの点を軸に考えるようにしています。
・検討事項は、自分の手の上に乗っていることなのか
・詳細化にあたり、関わる人数はどれくらいか
「検討しなければならないこと」が自分の管掌外の業務の場合、担当者を巻き込み、検討に入ってもらう必要があります。この巻き込みなどで時間がとられることを踏まえると、より、早く手を付ける必要があります。また、その巻き込むべき人数が増えれば増えるほど、時間はかかっていくことになります。故に、管掌外や巻き込む人数の多いものは、早めに決定していくようにしています。
さらにややこしいことに、「決めごと」には大小があり、大枠を決めておけばよいのか、詳細まで決めないといけないのか、決定の粒度についても見極める必要があります。これらは都度、状況に合わせて調整するしかありません……というと元も子もないのですが、検討に関わるべき人物が動き出せているかどうか、ということを見ながら判断するようにしています。
「それは、今決めないといけないこと?」という問いも、「それは、今回目指さないといけないこと?」と同様に、プロジェクトの開始期から終了までずっと問い続けることが重要だと思っています。
3.「それで、整合性はとれているの?」
「それは、今決めないといけないこと?」「それは、今回目指さないといけないこと?」という2つの問いは、プロジェクトの開始期から終了までずっと問い続けるものとしてご紹介しました。次に紹介する3つ目の「問い」は、2週間なり1か月なりマイルストンごとに問うようにしているものです。
プロジェクトが進み、いろいろ決まってくると、先に決めていたことを忘れたりしてしまう、ということがどうしても起こってきます。それにより、過去の決定事項と矛盾した決定をうっかりしてしまった……そんな経験が、私自身、ありました。
そこで自問しているのが「それで、整合性はとれているの?」という問いです。戦略や企画との整合性を考えるのはもちろん、他システムや運用との整合性も取れているか、等も考えるようにしています。
プロジェクトの“お作法”には、「決定したことはドキュメント化して残す」と書かれていることが多いのですが、これは良い方法だと思っています。一つ一つの決定事項をドキュメント化するだけではなく、企画書やプロジェクト計画書等の粒度で整理することにより、より俯瞰的に、整合性が取れているかどうかを確認する機会になります。
実際には、プロジェクトが進行する中で、ドキュメント化に割けるパワーは無くなり、なかなか手を付けられなくなっていく、というのが実情かと思います。ただ、不整合を無くす努力は少しでもしておきたいものです。私はあらかじめ「ここで整理をしよう」という時期や期間を決めておき、出来る限り整理をするようにしています。「折に触れて」の「折」を決めておくことが、この問いにおいては重要だと思っています。
ここまで、私が自分の中で“戒め”として意識している、プロジェクト開始期の3つの問いについて書いてきました。
私自身はどれだけ経験を重ねても、どのようなプロジェクトに関わらせていただいても、毎回「プロジェクトの推進って、難しいなぁ」と思っています。そういった“難しさ”に今、直面している方々にとって、この「3つの問い」が少しでもお役に立つことが出来れば幸いです。
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加藤 彰浩
(業務・システムコンサルタント)
株式会社セブン‐イレブン・ジャパンを経て、2006年にベネッセコーポレーションに入社。採点サービスの物流基盤デジタル化プロジェクトを皮切りに、新規サービス立ち上げおよび既存サービスの維持・改訂におけるPM/PMOや商品責任者として、戦略立案から企画推進、システム開発、業務運用構築までを一貫して手掛ける。2022年11月クラスメソッドに参画。prismatixのコンサルタントを担当。
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