プリズマジャーナルTOP「感じの良いオンライン」を目指す無印良品のデジタル戦略 ~9/30開催オンラインセミナーレポート~

「感じの良いオンライン」を目指す無印良品のデジタル戦略 ~9/30開催オンラインセミナーレポート~

# 顧客行動 # OMO # 店舗受け取りサービス # 無印良品

プリズマティクスは9月30日、株式会社良品計画でOMOを実現に取り組む篠原 佳名子氏と髙林 貴仁氏をお迎えし、OMOに課題を抱える小売企業さまや顧客とのコミュニケーション設計やOMO施策を検討されているご担当者の皆様に向け、オンラインセミナーを開催しました。

開催当日、大変多くの皆さまにご参加、ご好評を頂きました本セミナー。後半のパネルディスカッションでは、現場目線の“リアル”が詰まった熱いトークも繰り広げられました。本記事では登壇者お二人のセッション内容をご紹介し、併せて“見逃し”してしまった方へ向け動画アーカイブの配信をご案内します。

1.良品計画の“第二創業”の思いに共感、OMO実現に取り組むお二人のご紹介

良品計画では、2021年10月から新社長が就任してから「第二創業」を掲げ、新たな取り組みを進められています。本セミナーで登壇頂いたお二人は、この「第二創業」の思いに共感され良品計画にジョインされました。

篠原氏からは冒頭に「従来の“無印良品”のイメージとは少しイメージが違うかもしれません」としながら、OMOに関わる箇所として中期経営計画に記されたエッセンス部分のご紹介がありました。

良品計画の使命:展開する店舗が、地域のコミュニティセンターとしての役割を持ち、地域のステークホルダーの皆様とともに、地域課題に対して取り組み、地域への良いインパクトを実現すること
2030年に実現したいこと:「地域への土着化」。無印良品は、地域で暮らす人々が、地に足のついた、生き生きとした、良質な生活を送ることができるよう、地域に巻き込まれ、地域課題の解決や町づくりに貢献している。
感じよいオンラインの提供:道具としてのテクノロジーを適切に使いこなし、オンライン活用での利便性と、物流を含めた人と人との直接接点による温かみや手触り感など情緒性を、同時に、ちょうどよく、実現している。

この無印良品の“第二創業”については、プリズマティクス濱野が株式会社良品計画 ITサービス部執行役員 久保田氏からもお話を伺っており、現在の良品計画における重要な指針となっていることが分かります。併せてご覧ください。

2.「無印良品の描くOMOの姿~顧客行動から読み解くOMOのヒント~」篠原氏

EC・デジタルサービス部の篠原 佳名子氏は、動画制作とSaaS制作を行うスタートアップでPR、B2Bマーケティングなどを担った後、Twitter社で広告営業、直近はトリドールホールディングスで海外事業のマーケティング立ち上げに携わってきました。

従来はマーケティングコミュニケーション領域に強みを持ってきた篠原氏ですが、昨今「DX」に注目が集まる中でテクノロジー領域へ携わることで「仕掛け」だけでなく「仕組み」を変えていける人材になりたいと思ったこと、そして良品計画の“第二創業”共感したことで、2022年1月から入社されました。

「“OMO”は様々に定義されていますが、もともとはOnline Merges with Offlineの略称です。つまり“オンラインとオフラインが融合している状態”それだけを指している、と私は思っています。その状態を、どうすればつくり出せるのか。どのテーマとどの領域に取り組んでいかなければいけないのか、そのような定義をすることから始めました」(篠原氏)

また、同時に「既存のお客様を見つめ直す」詳細な調査を行ったところ、「ロイヤル顧客」となる方々の購買行動が、店舗とECを“うまく”使いこなす「オムニ顧客」であることに気づいたそうです。店舗とECをうまく使いこなすためのハブとなっているサービスは、“店舗受け取りサービス”でした。

「無印は国内に約500の店舗数があり、店舗によって商品ラインナップが全く異なります。すると、欲しいと思った商品やTVやSNSで話題に商品がお客様の最寄りの店舗に無い場合があります。一方でネットストアでは全ての商品をご案内しています。そこで、お客様はご自身のお求めの商品を近隣店舗に取り寄せ・取り置きされていました。また決済についても、オンライン決済、店舗決済など、生活に合わせて上手に組み合わせて使っておられました」(篠原氏)

既存のオムニ個客のスマートな買い物の手伝いをすることがOMO実現に繋がると考えた篠原氏。“店舗受け取りサービス”での取り扱い商品の拡大や、店頭コミュニケーションツールの刷新などを徐々に実現し、9月には食品以外の全商品、洗濯機、ベット、ソファまでが店舗で受け取れるようになりました(詳細は公式のニュースリリースをご確認ください)。

「6月頃、全店舗の店長が集まる店長会議に出席させて貰い、『店舗受け取りサービスというのはただの受け取りサービスというだけではなく、こんなベネフィットがある』とお伝えして、店長さんたちとディスカッション出来たことがすごく良かった。このおかげで課題が多く発見できて、プロジェクトも“二歩目”を進めることが出来るようになりました」(篠原氏)

この取り組みで“店舗受け取りサービス”の利用率は前年比3倍となっているとのこと。この後も“感じよいオンラインの提供”をOMOの概念で実現に近づけるために、オンラインとオフラインを越境した取り組みを行っていくと語る篠原氏。その詳しい内容については“見逃し配信”にてご覧ください。

 

3.「IT視点でみる無印良品のOMO~世界観を実現するための課題と展望~」髙林氏

ITサービス部 ビジネスサービス個客・EC課に所属する髙林 貴仁氏は、これまでヤフー株式会社や株式会社リクルートに所属し、検索エンジンの開発、研究組織の立ち上げや産学連携に携わってきた。直近では株式会社ピアラにてCTOを担い、マーケティング業務に携わってきました。良品計画には、“第二創業”に共感したことから2021年10月に入社されました。

中期経営計画で書かれていることを実現すべく、IT・ECデジタル部門では、ECを超えた「感じよいオンライン」サービスの拡充、売り上げを伸ばすことを目指しています。また「地域に根付いた」「自律分散型業務に合わせた」システムとなるべく、基幹系システムを刷新、再構築しようとしています。

「無印良品のWebとMUJI passportは、月間1億PV超、アプリの累計DL数は2365万、店舗フォロワー数は1291万を抱える大規模なものです。本来であればIT部門は180名体制で構築したいのですが、現状は半分位の人数しかいない。OMOに関わっているメンバーは数人レベルで、しかもほぼ兼務です。圧倒的に社員が足りません。社員が足らない状況で何をしてるのか、ご説明します」(髙林氏)

セミナー内では、MUJI passportの機能など、構成図を用いて具体的に紹介。ECだけでなく、イベント、バーコード発行など多様な機能が搭載されていることがよく分かる内容となっています。またシステム基盤としては主にAPIを利用しながら、Webサーバー、CNSなども併用しています。これらのうち、開発頻度が高い部分について、無印良品がやりたいことをスピーディーに実現するために内製化を進めているそうです。

「新しいことをするためには、これまでの資産、負の資産も含めて整理する必要があります。時間が必要です。無印の目指す『OMOを実現する』ということは、最終的に“個客”と“店舗”を繋げることであると考えています。地域によって生活が違うということは、当然、必要なモノも違います。それを店舗からも発信していけるような仕組みが最終ステップ。これが第3フェーズだとして、今はまだ0.5のところ。あるものを整理して、プラスになるような仕組みを再構築しているところです」(髙林氏)

「顧客」を「個客」として捉え直すことができるような仕組みをつくり、もっと「お客様の役に立つ」が出来るようにしていきたい、と語る髙林氏。このような思いに共感してくれるエンジニアにジョインして貰うことで、妥協の無い「これでいい」システムを共創していきたいと、組織体制についての抱負も語ってくださいました。

4.“見逃し配信”で、現場目線ならではのパネルディスカッションをチェック!

最後は、プリズマティクス濱野、無印のお二人によるパネルディスカッション。ナビゲーターとして参加した濱野も、実はMUJI passportには結構関わってきた経歴があります(参考記事「“キラキラした顧客体験”をつくりたい!が原動力 プリズマティクスのこれまでを振り返る〜“プリズマの愛され社長「濱野さん」インタビュー!”」 )。

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そんな3人がお送りするパネルディスカッションは、OMO実現に取り組む道のりの困難さと楽しさを感じられる、現場の肌感ある熱いセッションとなりました。プリズマティクス濱野からの質問や疑問も含め、パネルディスカッションでの話題をご紹介します。

・無印良品におけるOMO世界観を実現するための事業部とIT部門の連携に求められるものとは?
・無印良品におけるOMOを実現するコストと、その効果とは?
・無印良品におけるOMOの特徴と、小売業における一般的なOMOとの違いは?
・小売業でOMOを実現するためのステップとは?

配信当日に参加された約400人の視聴者の皆様からも質問を募集したところ、大変多くの質問を頂きました。本セミナーは、プリズマティクスの「動画閲覧」にてアーカイブ動画を配信中です。動画閲覧ページよりお申し込みを頂くと、“見逃し配信”にて無料でご覧頂くことが出来ます。

 

プリズマ編集部

「the engagement commerce platform for wow! experiences」をコンセプトに、小売業における顧客エンゲージメント向上の支援、戦略的OMOを実現するプラットフォーム提供を行うプリズマティクス株式会社が運営する、オウンドメディア『プリズマジャーナル』編集部。

『プリズマジャーナル』では、プリズマティクスで活躍するコンサルタントが執筆するコラム「徒然ジャーナル」、業界の先端を走り続けるプリズマティクスアドバイザーからの寄稿文など、小売業の皆様に向けて伝えたいこと、耳寄りな情報などをお送りします。

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