
デジタル化が進む現代において、企業の成長には顧客データの戦略的な活用が欠かせません。購買履歴やWeb行動、アンケートなど多様なデータを収集・分析することで、顧客理解を深められます。
本記事では、顧客データ活用の基本から分析手法、実践ステップ、課題と解決策まで体系的に解説します。
1.顧客データ活用とは?
顧客データ活用とは、企業が顧客から得た情報を収集・分析し、マーケティングやサービス向上に活かす取り組みです。氏名や年齢などの基本情報だけでなく、購入履歴やWebサイトの閲覧履歴、アンケート結果など、あらゆる接点で得られるデータが対象となります。
顧客データ活用が重要な理由
近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)が進むなかで、顧客のニーズや行動が多様化し、従来の画一的なマーケティングでは成果が出なくなっています。
そこで、顧客データを活用することで、顧客一人ひとりの好みや購入傾向を深く見極め、最適なタイミング・コンテンツでのアプローチが必要となりました。そのため、顧客データの活用がビジネスの成長のカギを握る手法として注目されています。
データドリブンマーケティングとの関係
データドリブンマーケティングとは、ユーザーの行動データや予測の効果データを収集・分析し、その結果に基づいて意思決定や施策を実施するマーケティング手法です。
従来の勘や経験に頼るアプローチとは異なり、データに裏付けされた顧客データ活用がデータドリブンマーケティングの基盤です。効果的なPDCAサイクルの実現や担当者が変わってもノウハウを継承できる点が強みです。
顧客データ活用で得られるビジネス上のメリット
カスタマーデータを活用することで、以下のようなメリットが得られます。
メリット | 内容 |
売上拡大 | 顧客の購買傾向や嗜好を分析し、パーソナライズ提案等を実施できる |
解約率低下 | 顧客の行動データや満足度を分析し、解約リスクの高い顧客を早期に特定できる |
業務効率化 | データの統合や自動化により、作業を削減し迅速な意思決定を支援する |
顧客満足度向上 | 顧客に合わせたサービスの提供を実現し、顧客体験の質を向上させる |
このように、顧客データの活用は企業の競争力を高め、持続的な成長を支える戦略となっています。
2.顧客データ分析の基本手法
ここでは代表的な顧客データの分析手法について特徴を解説します。
RFM分析で優良顧客を特定する
RFM分析とは、「最終購入日(Recency)」「購入頻度(Frequency)」「購入金額(Monetary)」という3つの指標をもとに、顧客をグループ分けする手法です。
●最終購入日(Recency):顧客が最後に商品やサービスを購入した日からの経過時間
●購入頻度(Frequency):一定期間内の購入回数
●購入金額(Monetary):顧客の購入金額
これらを数値化して、たとえば「最近よく購入し、高額な買い物をしている顧客」を優良顧客として抽出できます。
セグメンテーション分析 でターゲットを絞り込む
セグメンテーション分析は、顧客を年齢や地域、購買履歴、興味・関心といった多様な切り口で考え、グループ(セグメント)を作る分析手法です。
この手法を活用することで、顧客の特性やニーズをより詳細に把握し、それぞれの分野に最適な商品・サービスやメッセージを届けることができます。
クラスター 分析で顧客グループを発見する
クラスター分析は、複数の属性や行動データから似た特徴を持つ顧客を自動的にグループ化する手法で、多変量解析のひとつです。大きく分けて階層型クラスタリングと非階層型クラスタリングの2種類があります。
●階層型:データの類似度に基づいて段階的にグループを形成
●非階層型:事前に決めた数のグループにデータを分類
この分析によって、新たな顧客層や隠れたニーズの把握、ターゲティングの精度向上が期待できます。
購入パターン分析でクロスセル・アップセルの機会を発見
購入パターン分析は、顧客の購買履歴から商品間の関連性を見出し、効果的な販売戦略を構築する手法です。この分析により、異なる商品カテゴリーを組み合わせて提案する「クロスセル」や、より上位グレードの商品への移行を促す「アップセル」の機会を特定できます。
具体的には、ECサイトでの「この商品を買った人はこんな商品も買っています」機能の実装、購入後の関連商品メール配信などにつなげられます。そして、店舗での商品陳列最適化などに活用でき、顧客満足度向上と売上増加の両方を実現可能です。
顧客ジャーニー分析で購入プロセスを進行する
顧客ジャーニー分析は、顧客が商品やサービスを認知してから、購入・利用に至るまでの一連のプロセスを時系列で可視化する分析手法です。各接点(タッチポイント)での顧客行動や感情を把握することで、ボトルネックや離脱ポイントを特定し、顧客体験の最適化を図ります。
顧客データをエクセルで分析して管理する
エクセルは、顧客データ分析の入門ツールとして多くの企業で利用されています。RFM分析やセグメンテーション、クロス集計やグラフ作成など、基本的な分析を簡単に実施できます。
特にデータ量が少ない場合や専門ツール導入前の段階では、エクセルで十分に実践的な分析が可能です。ただし、データ量が増加したり複雑な分析が必要な場合は、BIツールや専用の分析ソフトへの移行も検討しましょう。
3.顧客データ活用の5ステップ
顧客データ活用を成果につなげるには、段階的なプロセスを踏むことがポイントです。ここでは、実践的な5つのステップを順を追って解説します。
ステップ1:目標設定と必要データの特定
まずは、データ活用の目的と明確な目標を設定します。たとえば「売上拡大」「解約率低減」「顧客満足度向上」など、具体的なビジネス課題を定めます。目標が明確になることで、必要なデータの種類や分析手法も決まります。
購買履歴やWeb行動、アンケート結果など、目的に合ったデータを選定し、どのようなインサイトを得たいかを整理していきましょう。
ステップ2:データ収集と統合の仕組みを構築
次に、顧客の属性データや購買履歴、Webサイトの行動履歴など、必要なデータを多様な接点から収集します。そして、会員登録やPOS、Webトラッキング、アンケートなどで情報を取得し、CDP(カスタマーデータプラットフォーム)などを活用して一元管理します。
ただし、信頼性を保つためデータのフォーマット統一や重複排除、欠損値の補正もポイントです。
ステップ3:データ分析と顧客インサイトの発見
統合・整形されたデータをもとに、RFM分析やセグメンテーション、購買パターン分析などを実施します。データ分析を適切に行うと、顧客の行動傾向やニーズ、離反リスクなどのインサイトを抽出できます。
たとえば、優良顧客の特徴や離脱しやすい顧客の傾向を把握し、ターゲットごとに最適な施策を検討できるようになります。
ステップ4:施策の立案と実行
分析で得たインサイトをもとに、具体的な施策を設計し実行します。たとえば、優良顧客にはロイヤルティプログラムや特別オファーを、離反リスクの高い顧客にはフォローアップや限定クーポンを提供します。
パーソナライズされたメール配信やレコメンド機能など、データに基づくアプローチを展開し、顧客体験や売上向上を目指しましょう。
ステップ5:効果測定と継続的な改善
施策実施後は、KPIや売上、解約率、顧客満足度などの指標で効果を定量的に測定します。そして、測定結果をもとに、PDCAサイクルを回して施策の成果や課題を分析し、次のアクションに反映させましょう。
データの蓄積と分析、施策の最適化を継続することで、顧客理解とビジネス成果を着実に高められます。
4.業界別・目的別の顧客データ活用事例
顧客データ活用は、業界や目的によってアプローチや成果が異なります。代表的な事例を紹介します。
製造販売:カスタマージャーニーを追跡・分析した事例
ヤーマン株式会社は「カスタマーストーリーアナリティクス」を導入し、10年分の購買データを高速分析できる環境を構築しました。その結果、顧客の購買行動を追跡・分析し、パーソナライズされた提案が可能になりました。特に美容家電は中国市場でも人気が高まっています。

プロ野球チーム:CRMを導入しファンマーケティングに取り組んだ事例
千葉ロッテマリーンズは、CRM「MIX」を基盤に顧客データ活用を進め、2023年にSnowflakeとクラスメソッドの「CSアナリティクス」で顧客データ基盤を強化しました。顧客データ、POS購入実績、チケット販売実績を5分ごとにリアルタイム連携し、Tableauダッシュボードで分析時間を大幅短縮しています。この取り組みにより2024シーズンには球団史上最多の191万人超の観客動員を達成しました。

BtoB 企業:関心の育成と商談成約率向上
BtoB 企業では、リードスコアリングを活用し、顧客企業の行動データや属性データをもとに適正度を数値化できます。それらのデータをもとに、優先度の高いリードに集中してアプローチでき、商談成約率の向上が可能です。また、営業活動の効率化や、個別ニーズに対応した提案もできるでしょう。
サブスクリプションビジネス:月額料金削減のためのデータ活用
サブスクリプション型サービスでは、利用状況データをもとに解約リスクを早期に予測します。 具体的には魅力的なスコアを活用し、利用頻度の低下やサポート履歴などからリスク顧客を特定します。そして該当する顧客には特典やサポートを提供することで、解約率の低減が可能です。
5.顧客データ活用の課題と解決策
顧客データ活用は多くのメリットがありますが、課題も少なからず生じます。ここでは主な課題とその解決策を見ていきます。
課題
データ活用の現場では、人材不足やデータの分断、法規制対応などが大きな障壁となっています。
データサイエンティストの人材不足
データ分析やAI活用を担うデータサイエンティストは、近年ますます需要が高まっていますが、供給が追いついていません。特に高度なスキルを持つ人材の確保は、都市部だけでなく地方や中小企業でも難しく、現場のデータ活用推進に影響を及ぼしています。
データサイロの問題
データサイロとは、社内の各部署やシステムごとにデータが分断され、互いに連携できない状態のことです。この状態では、全社横断でのデータ活用や顧客理解が進まず、重複作業や非効率が発生します。
データサイロの原因には、レガシーシステムの存在や組織の縦割り構造、ガバナンスの不備などが挙げられます。
解決策
これらの課題を克服するには、技術面と組織面の両方からのアプローチが必要です。
プライバシー規制強化への対応
個人情報保護法やGDPRなど、プライバシー規制が年々強化されています。企業はデータの匿名化や削除、アクセス管理の徹底など、適切な管理体制を整備することが求められます。そのため、法令遵守のための教育やリスク管理体制の見直しも重要です。
社内におけるデータ活用文化の醸成
データ活用を推進するには、経営層のコミットメントと現場の理解が不可欠です。ビジョンの共有やスモールスタートでの成功体験の積み重ね、部門横断的なコミュニケーションを通じて、「データを見るのが当たり前」という文化を根付かせましょう。
トップダウンとボトムアップの両輪で、組織全体でデータドリブンな意思決定ができる環境を整備することが大切です。
6.まとめ
顧客データ活用は、売上拡大や解約率低減、業務効率化、顧客満足度向上など、企業の競争力強化に直結します。分析手法や活用ステップ、業界別事例、課題と解決策を押さえることで、データドリブン経営を実現できるでしょう。
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