
プロフィールの通り、私はミニストップ株式会社にて人事部長、そして執行役員商品統括本部長といった要職を経験してまいりました。振り返ると、そのキャリアの中で常に意識してきたのが「業務の効率化」と「標準化」です。
日々の業務の中で、「もっと効率的に仕事を進めたい」「誰にでも分かりやすい業務の手順書があれば」と感じたことはありませんか?業務フローを作成することは、これらの課題を解決するための第一歩です。今回は、その経験に基づき、初心者の方にも分かりやすく、実践的な業務フローの書き方について解説させていただきます。特に、私がミニストップで実際に取り組んできた事例も交えながら、その重要性や効果をお伝えできればと思います。
目次
1.業務フローとは何か? 2.業務フローチャートの基本要素と記号 3.実践! 業務フローの書き方ステップ 4.より分かりやすい業務フローにするためのコツ 5.まとめ:業務フロー作成は業務改善の第一歩1.業務フローとは何か?
業務フローの定義
業務フローとは、日々の業務における一連の流れを、標準化された記号や図を用いて明確に示すものです。まるで地図のように、業務の開始から完了までの一連のステップ、判断、そして担当者を可視化します。これは、タスクの順序、意思決定のポイント、関係者などを視覚的に表現することで、複雑な業務プロセス全体を誰にでも理解できるようにします。
ミニストップにおける業務フローの必要性
私がミニストップで様々な業務に携わる中で痛感したのは、小売業においては特に、店舗運営から商品開発、人事管理に至るまで、多岐にわたる業務が複雑に絡み合っているということです。それぞれの業務を可視化し、標準化することは、お客様に安定した品質の商品とサービスを提供するために不可欠でした。
例えば、人事部長時代には、「働き方改革」の一環として、事業場外みなし労働時間制からフレックスタイム制へ労働時間管理の方法を変更いたしました。それに伴い、労働時間を減らしていくため、営業担当者が実施する業務を大幅に見直す必要がありました。営業担当者の業務内容を分類・整理し、関係者を洗い出し、なくす・へらす・まとめる・まかせるのステップで見直しを実施しました。
また、執行役員商品統括本部長時代には、商品総務・品質管理部を管掌し、商品部の登録ミスを減らすことを目的とし、問題点を洗い出すために業務フローや作業手順書を活用しました。一番大きな効果は、「この一連の作業を通じてなんでこの業務を実施しているのか?」「この作業は他と同じことやってるから不要だよね?」といったコミュニケーションが自然と生まれてくることだと実感しました。
人事部門担当者の時には、多くの手作業をExcelの関数などを活用して効率化を追及していました。現在においては、そのような過去に効率化を目指して作成されたマクロやいろいろなExcel関数などが却って阻害要因になっているケースもあるかもしれません。
業務フローの重要性
業務フローを作成し、共有することで、以下のような効果が期待できます。
業務の標準化: 誰が担当しても同じ品質で業務を行えるようになります。
課題の発見: 無駄な作業やボトルネックとなっている箇所が一目で分かります。
コミュニケーションの円滑化: チーム内や部署間の連携がスムーズになります。
教育・引継ぎの効率化: 新しいメンバーへの教育や、担当者の変更時の引継ぎが格段に楽になります。
2.業務フローチャートの基本要素と記号
続いては、業務フローチャートの基本要素と記号について解説します。
基本的な構成要素
業務フローチャートは、以下の基本的な要素で構成されます。
開始・終了: 角が丸い長方形や楕円で示され、業務の始まりと終わりを表します。
処理: 長方形で示され、具体的な作業内容を表します。
判断: ひし形で示され、「はい/いいえ」などの条件分岐を表します。
矢印: プロセスの流れを示します。
書類: 波型の長方形で示され、帳票や書類を表します。
特に「書類・帳票」を表す記号や、担当者や部門を示す「スイムレーン」が重要になります。
3.実践! 業務フローの書き方ステップ
それでは、実際に業務フローをどのように書いていくのか、具体的なステップを見ていきましょう。
ステップ1: 目的を明確にする
何のために業務フローを作成するのかを最初に明確にしましょう。例えば、「業務の課題を見つけたい」「新人教育に使いたい」「業務を標準化したい」など、目的によって記載する内容や粒度が異なってきます。
ステップ2: 関係者を洗い出す
その業務に関わる全ての人や部署を洗い出します。必要に応じて、スイムレーンを使って担当者を区別すると、より分かりやすくなります。
ステップ3: 業務のタスクを洗い出す
業務の開始から終了までに発生する全てのタスクを、細かいレベルで洗い出します。実際に手を動かしながら、または関係者にヒアリングしながら進めるのがおすすめです。
ステップ4: タスクを時系列に並べる
洗い出したタスクを、実際の業務の流れに沿って順番に並べます。矢印を使って、タスク間の流れを明確に示しましょう。
ステップ5: 図記号を配置する
各タスクに適切な図記号を当てはめていきます。最初は基本的な記号だけで十分です。
ステップ6: 条件分岐を記述する
業務の途中で判断が必要となる箇所には、ひし形の記号を使って条件分岐を記述します。分岐後の処理がどちらに進むかを明確に示しましょう。
ステップ7: 完成した業務フローを見直す
作成した業務フローが、実際の業務の流れと合っているか、誰が見ても分かりやすいかを確認します。可能であれば、関係者にも確認してもらうと良いでしょう。
4.より分かりやすい業務フローにするためのコツ
ミニストップでの経験から、特に効果的だったコツをお伝えします。
シンプルさを心がける: 記号の種類を増やしすぎず、簡潔に記述しましょう。複雑すぎると、かえって理解しづらくなります。
開始と終了を明確にする: 業務の始まりと終わりを一つに絞り、分かりやすく示しましょう。
流れを意識する: 基本的に左から右、または上から下へ流れるように記述します。
凡例を作成する: 使用した記号の意味を明記しておくと、誰にでも理解しやすくなります。
適切な粒度で記述する: 細かすぎず、大まかすぎない、目的に合ったレベルで記述しましょう。
5.まとめ:業務フロー作成は業務改善の第一歩
業務フローの作成は、一見すると手間がかかるように思えるかもしれません。しかし、一度作成することで、業務の効率化、ミスの削減、そしてチーム全体のコミュニケーション向上に大きく貢献します。
私がミニストップで経験してきたように、特に小売業のような複雑な業務環境では、業務フローの作成と活用が、組織全体の生産性向上に直結します。労働時間管理方法の変更時には、業務フローに踏み込んだ上で変更を進めたからこそ、新しい制度を浸透させることができました。また、商品登録ミスの改善においても業務全体を可視化することで、改善ポイントを特定し、効率的に対策を講じることができたのです。
今回ご紹介した基本的な知識とステップを参考に、まずは身近な業務から業務フローを作成してみてはいかがでしょうか。きっと、これまで見えなかった課題や改善点が見えてくるはずです。そして、それは皆様の業務をよりスムーズで快適なものにするための、力強い一歩となるでしょう。

執筆者プロフィール
板東 功太郎
コンサルタント
2001年イオングループのミニストップに入社。
営業現場および人事部門担当者およびMgrを経験した後、2015年から人事部長として人事制度・働き方改革、ダイバーシティ推進、採用、人材育成を実施。2019年から中国子会社社長として現地赴任し、DXが進んだ国で、コロナ禍の中で経営実務を担う。
2022年から執行役員商品統括本部長(マーケティング、サービス、物流、品質管理)として、主にデジタルマーケティングを推進。アプリのグロース、EC事業の立ち上げ、デジタルサイネージ導入、販促のDX化等を実施。2024年8月クラスメソッドに参画。
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