プリズマジャーナルTOP今さら聞けない素朴な疑問を解決したいので「データドリブン」について金子に聞いてみた No3
今さら聞けない素朴な疑問を解決したいので「データドリブン」について金子に聞いてみた No3

今さら聞けない素朴な疑問を解決したいので「データドリブン」について金子に聞いてみた No3

皆さんは、周りの人が当然知っているはずだと思われていることを、実は理解していなかった経験はないでしょうか?そんな「今さら聞けない」疑問を解決するべく、小売業界での業務経験豊富なプリズマティクスのシニアコンサルタント金子にインタビューを行い紐解いていく記事シリーズ第2弾です。

前回は、「データドリブン」を利用するためのビジネス理解を実務的な視点でお聞きし、顧客理解と洞察を深め、データと現場のギャップに対応し、さらには組織横断的な連携を図ることの重要性が明らかになりました。

今回は、その続きとして、経営層の理解と組織変革について話を聞いていきます。

1.データドリブン経営におけるトップの役割

データドリブン経営において、具体的にどのような役割とビジネス理解が必要なのでしょうか?

田中:データドリブン経営で成功したといった事例は、Amazonなど海外企業ばかり出てくるのですけど、日本企業は何が難しいのでしょうかと考えながら今までのお話を聞いていました。

金子:スタートアップとか元々データネイティブな会社がデータドリブン経営をやりやすいのは、トップの理解があるから、データを軸に横串をさせという指示が出る。だから、早い。

一方、そういったトップダウンの指示がない状態で、いきなり現場ベースで「データこうなるかな」って他の部門と会話をしていくような特殊な人って、なかなか生まれてこない。
基本的にそういうことができる上司の方針は、「多分こっちが正しいと思うからやっちゃいます」と言えてしまえる人です。なかなか生まれてこないけど。

田中:確かに、スタートアップに見られる傾向です。どちらかというと時間が大切な文化。わからないならやってみて、失敗したらすぐ修正しよう。そうした方がコストも安くすむといった文化ですからね。

金子:逆に古くからある企業とか大企業で、「本当に変革だとか経営に近いところの意思決定までをデータをもとにできるか」という部分はかなりトップに委ねられてる気がする。
トップの理解と、実際にその横串を刺すような動きをする中間管理職レベルの動きっていう感じですね。

田中:中間管理職の覚悟の話な気がしてきました…。

金子:実際そうだと思う。業務改革とか経営改革のプロセスを踏まなかったら、データドリブン経営に転換はできないからね。

2.日本企業における課題とバズワード

日本では3〜4年に1度位の頻度で「オムニチャネル」「DX」「IT変革」のようなバズワードが流行しています。
「データドリブン」もどこか似ているようにも見えますがどうなのでしょうか。

田中:日本だと流行り始めた段階というぐらいで終わる印象もあります。

金子:そう。だけど日本は流行りはずっとある。特にIT系はバズワードが3〜4年に1回位でる。
例えば「オムニチャネル」しかり「DX(デジタルトランスフォーメーション)」しかり、「IT変革」とかもあったし、「データドリブン」もしかりだよね。

田中:確かに。やってることは実は変わってないんだけど、言葉だけ変わっている状態にみえます。それはそうなのですけども、経営層とか中間管理職の覚悟のような話になると、あまり広まってない感はあります。

金子:そこに踏み込めるかどうかだけだと思うけどね。「データを使うといいらしいぞ」で手を出して、結果のデータでこう変えたいという感じになっても、プロセスがそのままだったら何も変わらない。PoC(Proof of Concept:新しいアイデアの実証実験)はかなり多いけど、PoCから先に事業展開してないことも多い。

田中:はい。社内スタートアップみたいな話もよく聞きますが、そこで終わることも多いイメージです。

金子:そう。新しい取り組みは実行するのだけども、そもそもそれを基に既存事業を変えていかないからね。PoCをもとに既存事業を変えるとか、既存事業がシフトするとかに意思決定すれば成長するけど、そこがないことも多い状態なんじゃないかな。

3.今の危機感の高まりと変革

2024年(※)、なぜ今切羽詰まった感を感じるのか。危機感の背景と求められる変革とは何なのでしょうか。

田中:個人的には、様々なお客様と色々な案件をさせていただいている中で、同じような話を色んなところでした印象があります。けれど2024年の今(※)、変わらないとまずいぞといった雰囲気は一番高いような気がします。(※2024年11月インタビュー時点)

金子:変わらないとまずいのは、事実みんなそうだと思う。そこの切羽詰まった感は、国内だけでまず言うと、人口が減ってる、イコール国内の需要が減っているとこに起因してるかな。

田中:内需が減るということは日本はかなり厳しいですよね。

金子:そう。そしたら顧客理解を深めて1人の方がどれだけお金を使っていただけるか、利益をいただくようにするかっていうのを考えなきゃいけなくなってくる。それは実際ある。

海外を見ても、実際にそんな簡単にうまくいかないことをみんな理解してしまったことも関係ある。昔は日本には高度成長のビジネスモデルがあった。そして、当時アジア圏には30〜40年前の日本と同じ状況があった。そこに成長した日本のモデルをある程度移植するだけで、多少文化の違いはあるけど成長する未来が見えた。

今は?になると、中国とか韓国の方が成長しちゃってるし、そちらがもう参入してしまっているし、海外のプレイヤーも日本に入ってくる。あれ?というか予想外の状況になっていて、そうなると危機感は自然と高まる。

田中:はい。危機感がある状態で何となくデータドリブンが有効だと考えたので、導入したけど結構失敗してらっしゃるという感じです。

金子:結局、最後の改革までいかないからだよね。「データ活用します」「DXを推進していきます」と言うけど、「DXを進めて経営を変えます」はなかなかうまくはいかない。

データドリブン経営を、全員がやりますとなれば変わるけど、そこがないとやっぱり失敗してしまう。
データが揃っても、経営や現場の意思決定は変わらなかった。ということは何も変わってないとなるからだろうね。

4.まとめ

データドリブン経営の実現は、トップの理解と現場の実践力の両輪が不可欠であることが、今回のインタビューで理解できました。

特に日本企業では、「DX」や「IT変革」といったバズワードが定期的に登場するものの、真の変革には至らないケースが多く見られます。その背景には、実証実験(PoC)で終わってしまう傾向や、既存事業の本質的な変革に踏み込めない組織の課題があります。

しかし現在、人口減少による内需縮小や国際競争の激化により、変革の必要性は過去最高に高まっています。この状況下での実践的なアプローチとして、担当範囲での実践と成果の積み重ね、地道な取り組みが、組織全体の変革につながる可能性を秘めています。
データドリブン経営は単なるデータ活用ではなく、経営そのものの変革を意味します。トップの本気度と現場の実践力が噛み合ったとき、初めて組織は真の変革への道を歩み始めることができるのではないでしょうか。

次回は「データドリブン」のインタビュー最終回として、現場での対応などについてお届けします。

田中 由希子

執筆者プロフィール
田中 由希子
デザイナー/コンサルタント

印刷、WEB、MDMベンダーを経て2016年5月にClassmethod入社。2020年心理学専攻で大学卒業。銀座コーチングスクール卒。UX Japan Forum 2015運営委員、UXシンポジウム2016福岡運営メンバー。クラスメソッドでは、エンタメ企業アプリ、薬局アプリ、小売アプリ、ハイブランドアプリほかCX OREDER、LINE miniアプリまたは、管理画面のデザイン・体験設計に従事。

⾦⼦ 傑 執筆者

執筆者プロフィール
金子 傑
シニアコンサルタント

2000年イオングループのミニストップ入社。システム部⾨にてECサイト、DWH、商品マスタ等のPMを担当。2011年以降はシステム部門を離れ、九州営業部長、社長室長、サービス・デジタル推進部長、マーケティング部長等を歴任。2018年11月にクラスメソッドに参画。OMO/EC、CRMを中⼼に、事業戦略から業務設計、PMまで幅広い領域を担当。
【支援実績】
OMO/EC:アンファー、グラニフ、⼤⼿スーパー、雑貨⼩売店(戦略策定、業務設計)、大手生活用品メーカー(D2C)等
CRM:サンリオ、大手アパレル(会員制度設計)等

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