顧客のデータを活用して「LTVを向上させたい」や「お客様の声を商品開発に活用したい」「店舗の健康状態・棚割を改善したい」など各課題に取り組む企業が多い中、「企業が見たい」視点が強いため、顧客視点でのデータはどう見えるのかが十分に考慮されていないのではないでしょうか。
今回は「顧客満足度」の視点でデータをどのように見て活用すべきなのかをお伝えしたいと思います。
データ分析に関してはこちらの記事もご参考ください。
1.「顧客満足度」とは
顧客満足度とは、自社ブランド商品の購入者や利用者が「どれぐらいその商品に満足しているのか」をデータとして数値化したものです。英語ではCS(Customer Satisfaction)となります。
そのデータを取るためにマーケティングでは主にアンケート調査が多いと思います。アンケート方法も多種多様であり、「仮説・質問・回答・分析・施策反映」の順番を整備して実施できている企業はまだまだ少ないのではないでしょうか。
もちろん「まずは顧客のインサイトを見てみよう。その後、打ち手を考えよう」とする場合もあるとは思いますが、気づけば、ずっと同じQ&Aを定期的に繰り返して、施策反映になっていない場合もあるかと思います。
調査や分析の時点でしっかり仮説を立てないと効果を生み出せないジレンマは多くのマーケティング担当者の課題だと思います。
データを通じて「顧客が何に満足している、満足していない」のか、「何を改善する必要があるのか」の導線を整えていきましょう。
2.「顧客満足度」から見えるデータ分析
今回、顧客のデータとしては、大きく以下に分類します。
1.ネットでアンケート調査(例:1,000名)
2.来店客に対するアンケート調査(例:NPS)
3.既存会員に対するアンケート調査
4.既存会員に紐づくデータ(デモグラフィック、アクション、嗜好、購買、商品、利用店舗等)
データドリブン経営に取り組む企業が増えてきている中、上記3・4は回答した会員に対して次のアクションを促すこともできるので、今後も重宝されるデータになります。
1~3に関してはブランド・商品に対する「顧客満足度」の観点を加味した設計が多いはずなので、今回は「4.既存会員に紐づくデータ(デモグラフィック、アクション、嗜好、購買、商品、利用店舗等)」を中心に解説したいと思います。
企業別顧客データ
まずはどのような顧客データが取れるのでしょうか。企業別に整理していきます。
<海外企業>
Amazon:購買履歴、閲覧データ、デモグラフィック情報
Netflix:視聴履歴、評価データ、デモグラフィック情報
Starbucks:モバイルアプリを通じて収集した購買データと位置情報
Airbnb:ユーザーの検索履歴、予約データ、デモグラフィック情報
<国内企業>
ユニクロ:顧客の購買データとアプリの利用データ、店舗の在庫状況(リアルタイム)
セブン&アイ・ホールディング:顧客の購買履歴や嗜好
ソニー生命保険:顧客との対話データや契約データ
楽天:ECサイトでの購買データ、Edy等の電子マネー利用データ、クレジットカードの利用データ
JR東日本:Suicaの利用データを分析し、駅の混雑状況や利用者の移動パターン
オリックス自動車:レンタカーの利用データとテレマティクスデータ
リクルート:求人情報と求職者のスキル・経験データ
このように、特性によって集めるデータも活用方法も異なるため、次はデータ活用に課題を抱える企業が多い「小売」や「外食」に絞って検討していきたいと思います。
スーパーマーケットの場合
スーパーマーケットの場合、以下の観点で分析から施策への展開があります。
●背景:広いスペースに多くの商品があるため、お客様が目当ての商品を探すのが大変、商品を見つけられなくて購入を諦める
●課題:売場を効率的に歩けて、ほしいものや興味あるものを買いやすいようにしたい
●施策:習慣化した商品の購買履歴から「買い物パターン」を可視化後、売場の棚列を整理したり、期間限定商品コーナーを設置して「これもほしい」と追加購入を促す
顧客が困っていることを改善するためにデータ活用して「顧客満足度」を高める施策展開となります。
アパレルの場合
アパレルの場合、デジタルとリアルをクロスする行動とLTVの比較をすることで「顧客満足度」を可視化することもできます。
購買以外の行動をする会員を計測した場合、通常会員よりもLTVや客単価が大幅に高い結果を可視化することができます。
購買以外の行動の具体例としては、来店予約、試着予約、お気に入り登録(商品、スタッフ、店舗)、アンケート、衣料品回収、ショッピングバッグ辞退などがあります。
これらの行動に対してはポイント付与を設けることで顧客が購買しなくても行動しやすくなるメリットがありますので、「顧客満足度」が高まることは自然かもしれません。
データ分析後に「顧客の行動を引き上げる購買以外行動」を拡張するのも良いと思います。ブランドと顧客の接点は購買以外にもたくさんの接点があり、その接点の利用を後押しすることで、ブランドへの愛着を育成することにもつながるでしょう。
外食の場合
外食の場合、来店頻度が高い業態、来店頻度が低い業態で大きな差異があるため、「顧客満足度」を捕捉する機能も変わります。
共通しているのは、
・購買行動:店舗決済、モバイルオーダー、ポイント利用、クーポン利用
・購買以外行動:来店予約、お気に入り登録(商品、店舗)、お知らせ閲覧
アパレルと異なり、EC決済、お気に入りスタッフ等の機能がない外食ブランドが多い傾向です。
一部の外食企業は顧客を楽しませたい、ブランドに愛着を持ってほしい視点から購買以外行動の機能の拡張として、購買以外行動に対するポイント付与、ガチャ、占い、ゲームなどを実装しているケースもあります。
アパレルと同様に、購買以外行動が多い=購買行動も多い=顧客満足度が高い、という仮説でデータ分析をしてみるのが良いでしょう。
3.まとめ
「顧客満足度」の視点でデータを見る時は、顧客が困っていることを改善するために活用したり、LTVと購買以外行動の連動性から顧客の行動を後押しすることにつながるでしょう。
顧客との接点は購買以外行動がとても多いので、ブランドへの愛着や親近感を高める機会を逃さずに活用していくと良いのではないでしょうか。
プリズマティクス株式会社では、会員制度の導入やリニューアルを考えている企業向けのコンサルティングサービスを提供しています。「どんな制度を作れば顧客に支持されるのか」という構想から、会員制度を運用するために必要なツールの導入まで、幅広くサポートしてきた事例があります。
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執筆者プロフィール
清水 圭介
コンサルタント
株式会社EPARKを経て、2018年に物語コーポレーションに入社。外食チェーンストア(焼肉きんぐ・丸源ラーメン・ゆず庵)におけるデジタルマーケティング・DXの部門を立ち上げ、OMO構想からCDP構築を軸にアプリ・web開発からマーケティングまで網羅した戦略立案・企画推進、開発からマーケティング運用を担う。2021年にレインズインターナショナルに入社。デジタルマーケティング部の部長として、牛角・温野菜を中心にCDP構築・web広告・順番受付開発運用などを担う。2023年9月クラスメソッドに参画。