~顧客との絆を深める体験構築~シップスの会員プログラム刷新の裏側〜10/10開催オンラインセミナーレポート
デジタル技術の進化により、小売業界では顧客との関係性を強化するため、新たな方法の模索が求められています。プリズマティクスは2024年10月10日、「デジタルを活用した顧客体験」をテーマに、『スターバックスとシップスの顧客体験とデジタル活用』と題したオンラインセミナーを開催し、大変多くの皆さまにご参加、ご好評を頂きました。
本記事では、株式会社シップス 営業本部販売促進部 主幹 三瀬 崇弘様をお迎えしたセッション、「~顧客との絆を深める体験構築~シップスの会員プログラム刷新の裏側」についてご紹介致します。本セミナーの内容について更にご興味がある方へ向け、動画アーカイブの配信もご用意しております。是非ご覧ください。
共催:プリズマティクス株式会社、クラスメソッド株式会社
1.会員プログラムを大幅刷新、購買以外のアクションにもポイント付与
国内外ブランドのセレクトとオリジナルブランドの企画・製造・販売を行うアパレル企業、シップス(SHIPS)は、全国に約70店舗の直営店を構え、公式オンラインショップなどの通販サイトを展開しています。「Stylish Standard」をコンセプトにメンズ、ウィメンズ、キッズのアパレル製品を中心に販売を行い、幅広い顧客層を有しています。
シップスは2008年にポイントカード「SHIPS Member’s Club」を導入し、シップスグループの各店舗と自社ECとの連携をさせデータ分析を行う等、顧客との関係構築への取り組みを行ってきました。この会員プログラムを15年の時を経て初めて大幅な刷新を行ったのが、この2024年4月です。
リニューアルに向けて動き出した背景には、2019年末から数年続いた「コロナ禍」で大きく変化したお客様の消費行動や顧客接点に対して、どう対応していくのかという課題感がありました。会員ステージの判定基準を生涯購入金額から年間購入金額にする等、ポイント付与条件や還元率を一新しただけでなく、購買以外の様々なアクションに対してポイントを進呈するようにしました。
「2019年以降、新規会員数が縮小傾向でロイヤルカスタマーも減少するなど、大きな課題を抱えていました。今後の成長には、お客様一人一人と良質な関係を維持していくことは不可欠です。LTVの向上にコミットした会員プログラムを実現しなければならないと考えて、プリズマティクス様のご支援を頂きながら、約8ヶ月のプロジェクトをスタートさせました」(三瀬様)
2.「サービス利用」の機会創出を意識したインセンティブ設計
顧客LTV向上のためにシップスが重要視するKPIとは何かを決めるにあたり、まずはシップス自身の強みや課題の整理、定量データの解析を行うことで、現状把握をすることから始めたと三瀬様は語ります。その結果、年間購買額が5万円以下の顧客層が全体の8割以上を占めること、そしてそのお客様のポイント失効率が高く、ポイントの利用率が非常に低いということが分かりました。
「ポイントが失効してしまっては、ユーザーLTV向上には繋がりません。8割以上を占めるこの層のお客様たちの行動は、事業全体におけるインパクトも大きく、ボトルネックとなってしまっています。そこでこの方たちの行動変容をいかに起こすかが最優先課題であると考えました。売上増になるという仮説のもと、不特定多数のお客様をターゲットにポイント還元のキャンペーンを行いがちだと思うのですが、無駄なコストを投下していたのだなと気付くことが出来ました」(三瀬様)
新しい会員制度をつくるにあたって、顧客の購買金額、頻度によって層を分け、ストーリー設計を行っています。購買額5万円というデータに裏付けされた購買価格を参考に、5万円未満をF0〜F3、5万円以上をF4以上と分けました。
F0〜F3層にはSHIPSのベーシックな価値を実感して貰うことを重視し、ブランドへの信頼性を高め、主要な買場として認知していただけるような設計を心がけました。F4以上のお客様については既に価値の認知や信頼性は高まっていると仮定し、シップスが目指す「最高の普通」のサービスを受けていただく、また深い繋がりを持てるようなポイント設計を目指しました。
8割以上を占めるF0〜F3層については更に細かく、個別の引き上げ策を講じています。例えばこれまで入会時に「新規入会キャンペーン」として、半年間1,000ポイントを付与していましたが、初回購入で500ポイント、会員情報入力・メルマガ登録で500ポイントと細かく設定。顧客と今後のコミュニケーションを取ることを想定して、インセンティブを設計しています。
設定を変更してからは、以前と比べ任意項目の入力率が上がり、メルマガの許諾率も向上するなど、お客様に情報が届きやすい環境が出来ているとのこと。また初期段階のフェーズでは、来店行為にインセンティブを設けたり、店舗のみ利用しているお客様にはEC限定のクーポンを発行するなど、シップスの提供するサービスを総合的に利用していただく機会を創出することに気を配った設計となっています。
3.現場スタッフとの合意形成が、プロジェクト推進の勘所
三瀬様は、会員プログラムのリニューアルプロジェクトを推進するにあたり、実際にお客様と向き合っているスタッフとの合意形成を「欠かせない要素」として、今回、認識を新たにしたと語ります。社内での事前説明会では、店舗スタッフからプロジェクトチームで考慮できていない、現場に即した細かい内容の質問が多く出たそうです。実際にお客様に対応する店舗スタッフに疑問が残らないように、コミュニケーションを重ねたといいます。
「お客様のことを最も理解している現場スタッフにプログラム刷新をポジティブに捉えてもらうことが出来たので、お客様にもそう伝えてもらう事が出来ました。また接客現場で起きている細かなインサイトを知ることで、FAQ等の事前準備やカスタマサポートの準備等がしっかり出来たというのも良かったことです。リニューアル後もお客様やスタッフの声をできるだけ細かく収集することは続けていて、改善対応に役立てています」(三瀬様)
今回のリニューアルでは、これまでの会員プログラムをお客様に活用いただけていなかったという反省を踏まえ、「プログラムを認知いただき、利用いただく」というところにも力を注いでいるとのこと。
具体的な施策としては、ステージアップやアクションポイント等の特典付与のメールを、月単位で配信しています。定期的な配信を続けることで、お客様のアクションに繋げる取り組みとなっています。また“アクションポイント”として、指名スタッフが店頭で買い物サポートしてくれる予約サービスを導入しました。実は、サービス自体はリニューアル前からありましたが、ポイント付与によって利用率が約4倍に増加。またスタッフとのコミュニケーションがスムーズになったことで、お客様からポジティブなレビューもあったとのこと。
セミナー動画内では、他の刷新後の変化や今後の取り組みの展望についても具体的に語っていただいています。
本セッションの全編は、プリズマティクスの「動画閲覧」にて全編を無料アーカイブ動画として配信中です。
動画閲覧ページよりお申し込み頂き、ご覧ください。
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