昨今、継続的に購買をしてもらうための施策としてロイヤルティマーケティングを強化する企業やブランドが増えています。
その背景には、商品やサービスに満足していても、購入プロセスが複雑であったりカスタマーサポートの対応に不満があったりすると、顧客は継続的に商品を購入しないことが明らかになってきています。
そのため顧客が継続して購買を続けるきっかけを創出し、企業やブランドに対する信頼や愛着の大きさを表す顧客ロイヤルティを高め、最も重要な顧客層であるロイヤルカスタマーを育成する取り組みが重視されています。
本記事では、どういった顧客のことをロイヤルカスタマーとして捉えるべきなのか考察していきます。
1.顧客ロイヤルティを捉える3つの視点
顧客満足と売上(収益)を結ぶ重要なキーワードがロイヤルティです。企業により顧客ロイヤルティの定義が異なりますが、ロイヤルティには「心理ロイヤルティ」「行動ロイヤルティ」「経済ロイヤルティ」の3つがあると考えます。
一般的には「心理ロイヤルティ」と「行動ロイヤルティ」で顧客ロイヤルティを捉えていますが、ここ最近のロイヤルティプログラムの設計ご支援に入らせていただく中で、購買以外のアクション(行動)に対するベネフィットを重要視する企業やブランド様が増えてきており、「行動ロイヤルティ」をさらに分解して行動と経済(主に購買)という2つの側面からロイヤルティの度合いとして捉えるアプローチを行っています。
心理ロイヤルティ:ブランドや商品に対して愛着、信頼、共感といった顧客の自社に対する感情を指標にしたもの。顧客から見たブランドや商品への愛着度合い(顧客目線)
行動ロイヤルティ:顧客のブランドに対するアクションを指標にしたもの。来店頻度やイベントへの参加回数、自社や商品やサービスの利用頻度など(企業目線)
経済ロイヤルティ:顧客がどれだけ売上(経済的)に貢献しているかを指標にしたもの。企業収益に直結して分かりやすいが極めて(企業目線)
ブランドや商品への共感や愛着(心理ロイヤルティ)が高まると、それが購買以外の行動(行動ロイヤルティ)に影響をもたらし、さらにそれが実際の購買やサービス利用(経済ロイヤルティ)を促進し、収益に貢献します。
つまり顧客ロイヤルティを捉える際には、顧客目線でみた心理ロイヤルティの度合いに着目することが重要です。
2.優良顧客とロイヤルカスタマーの違い
一般的に購買頻度や購買単価が高い顧客のことを優良顧客と呼びます。企業の売上への貢献度が高いという点では、ロイヤルカスタマーと同じニュアンスになりますが、優良顧客=ロイヤルカスタマーとは必ずしもなりません。
例えば、近所のコンビニに通っている人が、単に近くにあるという理由で何度も購入していたとします。
しかし、さらに近くにコンビニができた場合、より近くのコンビニで購入するといった環境要因で変化してしまうケースがあります。
この場合、行動ロイヤルティは高かったものの心理ロイヤルティは低かったというケースになります。
つまり購入頻度や購買単価が高いからロイヤルカスタマーと判断していたのは間違っていたことになります。
積極的に商品を購入してくれている顧客であっても企業やブランドに対して良い印象や愛着をもっているとは限らないためです。
LTVが高いだけではロイヤルカスタマーと断言できず、心理ロイヤルティの高さの度合いが優良顧客とロイヤルカスタマーを区別する重要な要素となります。
ある会員制度設計のご支援先では、ハイエンドな高価格帯の商品を購入するお客様をロイヤルカスタマーとして位置づけていましたが、低~中価格帯の商品を購入し、SNSをフォローしてくれてイベントなどにも参加して情報を拡散してくれているようなお客様はロイヤルカスタマーとは言えないのか?という議論になりました。
心理ロイヤルティの高さ=ブランドへのファン度の高さ、と言い換えることができると思います。
この案件では既存の「購買を重視したロイヤリティプログラム」から「ファン度を高めることも意識したロイヤリティプログラム」に変更し、購買行動とブランドが期待する購買以外の行動、それぞれにお客様がブランドに期待するであろうベネフィットを検討し、ロイヤリティプログラムを作りあげました。
ファン度の度合いが優良顧客とロイヤルカスタマーの違いとも言い換えることができる事例になります。
3.ロイヤルカスタマーが重要視される理由
ロイヤルカスタマーが重要視される理由として以下があげられます。
・新規顧客の獲得につながる:
ブランドに愛着や信頼があり、口コミやSNSで商品やサービスを積極的に紹介してくれる可能性が高く、コストをかけずに新規顧客獲得につながりやすい。
・LTVが向上して安定的な売上を期待できる:
商品やサービスだけではなくブランドや企業にも愛着や信頼があるため、アップセルやクロスセルなど別の商品の購入や購買回数の増加が見込めLTVの向上が期待できる。
・商品開発やプロモーションへの活用:
愛着や信頼があるからこそ建設的な意見や良質なフィードバックが期待でき、サービス改善や商品開発への活用が期待できる。
マス調査では得ることのできないロイヤルカスタマーならではの上質な情報。
4.まとめ
ロイヤルカスタマーはほかのブランドや企業ではなく、あえて自社を選ぶ価値を見いだし結びつきを深めてくれているお客様になります。顧客との心理的なつながりは感動的な顧客体験によって創出されます。
ロイヤリティプログラムの設計ご支援に入らせていただく中で、顧客体験を重ねていくことでブランドに対してお客様の意識と行動が広がっていく傾向が業種問わず見られます。とくに顧客体験の中で強く心を動かされる体験、例えばサプライズ的なサービスや特典などの期待していた以上の体験を提供された場合、また対象的にかゆいところに手が届くような細かな配慮やおもてなし的なサービスを受けた体験が思いやりのような印象をお客様に与え、ロイヤルティが高まるような感動的な顧客体験として捉えられる傾向があります。お客様の生活文脈の中で接点を増やし、各接点の中でブランドの特徴を結び付け、お客様に体験を提供し続けることがロイヤルカスタマー、つまりファン度の高いお客様を育成していくうえで重要だということを常に感じています。
ロイヤルカスタマーの育成にはECや店舗、SNS、メール、カスタマーサポート、チャットボットなど顧客とのさまざまなタッチポイント(接点)を増やし、各接点での顧客心理や購買データ、興味やニーズをデータやアンケートなどから分析し、どのようなタイミングでアプローチすることが感動的な顧客体験につながるのか、顧客視点で考え取り組んでいくことが大切です。
とはいえ、ロイヤルカスタマー戦略として「具体的にどのような取り組みを実施すれば良いか分からない」という方も少なくありません。そのような課題をお持ちの方に、会員・クーポン・ポイント管理システム「fannaly(ファンナリー)」がおすすめです。
会員証やポイント管理、クーポンといった基本機能はもちろん、店舗やECの利用を促す行動をチャレンジとして定義し、実際にLTVを高める会員アプリをLINEミニアプリとして提供します。
また、プリズマティクス株式会社では、会員制度の導入やリニューアルを考えている企業向けのコンサルティングサービスを提供しています。「どんな制度を作れば顧客に支持されるのか」という構想から、会員制度を運用するために必要なツールの導入まで、幅広くサポートしてきた事例があります。
気になる方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
執筆者プロフィール
西田 信義
コンサルタント
2002年FREE’S INTERNATIONAL(現TSIホールディングス)に入社。店舗運営管理、営業MDを担当。Barbieなど海外ブランドの営業部長や国内ブランドの事業責任者を歴任。株式会社三陽商会にて新規事業開発、株式会社マッシュスタイルラボにてMD担当部長など事業推進に従事。ブランドディレクション、製販計画の策定など中心に大手アパレルにてSCMを担う。D2Cのベンチャー企業、株式会社TOKIMEKU JAPANのCOOを経て、2023年9月クラスメソッドに参画。
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