近年、企業がマーケティング戦略を立てる上で、顧客ロイヤルティの存在が注目されています。
顧客ロイヤルティを意識したマーケティングを成功させるためには、まず現状の把握が欠かせません。
そこで役立つのがNPSを始めとした、顧客ロイヤルティを計測するための指標です。
この記事では、代表的な7つの指標について、計算方法や数値の改善方法などを解説します。
さらに顧客ロイヤルティの向上におすすめの施策や、成功事例についても紹介します。
目次
1.顧客ロイヤルティとは 2.顧客ロイヤルティを計測する指標とそれぞれの活用方法 3.顧客ロイヤルティを高めるための戦略 4.顧客ロイヤルティを向上させた成功事例 5.顧客ロイヤルティ向上の実現施策に、会員・クーポン・ポイント管理システム「fannaly(ファンナリー)」1.顧客ロイヤルティとは
顧客ロイヤルティとは、顧客が特定の企業・商品・ブランドに対して持っている愛着や信頼のことです。
ロイヤルティ(loyalty)には、英語で忠誠心という意味があるため、「顧客の忠誠心」と言い換えることも可能です。
顧客ロイヤルティは、「心理ロイヤルティ」「行動ロイヤルティ」の2種類に分けられます。
心理ロイヤルティは、顧客が持っている愛着などの感情を表し、行動ロイヤルティは、商品の購入・口コミを広めるといった行動をどれくらいしているかを表します。
顧客エンゲージメントとの違い
顧客エンゲージメントとは、顧客と企業の親密さのことです。
ただし、顧客エンゲージメントにおける親密さは、購入頻度などの「行動」をもとにして計算したものです。
一方、顧客ロイヤルティは顧客へのアンケート結果などからわかる「気持ち」をもとに計算します。
顧客エンゲージメントは行動ロイヤルティに近い存在と考えることもできるでしょう。
顧客ロイヤルティが重要視される背景
日本は、少子高齢化により人口が減り始めているというニュースを多くの人が目にしていることでしょう。人口が減れば、当然消費者も減少します。
これから新規顧客を集めようとしても、そもそも対象となる消費者の人数が少ないため、獲得は難しくなるでしょう。
そこで既存の顧客を大切にして、できるだけ長い期間買い続けてもらうことで、売上の安定を図る戦略が重要になってきました。
2.顧客ロイヤルティを計測する指標とそれぞれの活用方法
顧客ロイヤルティについて分析する方法は数多くあります。
ここでは代表的な7つの指標と、計算方法や活用方法を紹介します。
NPS(Net Promoter Score)
NPSは、その商品やサービスを勧める人がどれくらいいるのかを表す指標です。
NPSは「Net Promoter Score」の略語であり、Promoterには英語で促進や推奨をする人という意味があります。
顧客ロイヤルティを知るための手段として広く知られており、多くの有名企業がNPSを活用しています。
NPSは顧客にアンケートを行い、結果を集計することで調査が可能です。
顧客分析に関する詳しい知識がなくても実施しやすい点がメリットです。
●計算方法
まず顧客に「この商品・サービスを親しい人にどれくらい勧めたいと思うか」の度合いを0点(まったく勧めたくない)から10点(とても勧めたい)の間で回答してもらいます。
そして、0点から6点と答えた顧客は「批判者」、7点から8点の顧客は「中立者」、9点から10点の顧客は「推奨者」という名前でグループ分けします。その後、各グループが全体の何割を占めているのかを計算しましょう。
最後に「推奨者」の割合から「批判者」の割合を差し引くことで、NPSが分かります。
推奨者や批判者の人数ではなく、割合を使うことがポイントです。
なお、「中立者」の割合は使いません。
●調査方法
自社の顧客に対してアンケートを実施します。
回答する人数が少ないと正確なNPSを把握できない可能性があるため、できるだけ多くの人に回答してもらうことを目指しましょう。
アンケートの質問文は「もしあなたの周りに○○で悩んでいる人がいたら、この商品をどれくらい勧めたいと思いますか?」など、顧客が具体的な場面をイメージして答えやすいよう工夫してください。
NRS(Net Repeater Score)
NRSは、顧客がどの程度、1年後も継続利用したいと思っているかを表す指標です。
顧客に対して「1年後もこの商品を使い続けたいと思いますか?」というアンケートに回答してもらう形で調査します。
NPSと似ていますが、質問内容が異なります。
NPSでは、商品をほかの人に勧めたいと思っているかどうかしか分かりません。
「自分はこの商品を気に入っていて使い続けるつもりだが、ほかの人に勧めるつもりはない」というタイプの優良顧客がいたとしても、その存在に気づけない恐れがあります。
一方、NRSを利用すれば、自社で買い続けてくれそうな顧客の存在を容易に把握することが可能です。
●計算方法
顧客にアンケートを実施して「1年後もこの商品・サービスを使い続けたいか」を1点(絶対に使い続けたくない)から5点(積極的に使い続けたい)の5段階で回答してもらいます。
そして1点から3点と回答した顧客を「離反リスク者」、4点を「中立者」、5点を「リピーター」として顧客をグループ分けします。
最後にリピーターの割合から離反リスク者の割合を引けば、NRSが分かります。
NPSと同様に、中立者の割合は使用しません。
●調査方法
NPSと同様に顧客へアンケートを実施し、「あなたは1年後も、この商品を買い続けたいと思いますか?」という設問に回答してもらいます。
CSI(顧客満足度)
CSIとは「Customer Satisfaction Index」の略語で、顧客が商品・サービスに対してどの程度満足しているかを表す指標です。
顧客が自社商品に満足していない場合、当然、他社へ乗り換えてしまう可能性があります。
そこで、CSIを調査して自社の課題にできるだけ早く気づき、改善に取り組むことが大切です。
●調査方法
顧客にアンケートを行い、商品への満足度を0点から100点の間で回答してもらいます。
総合的な満足度だけでなく「購入前にどれくらい期待していたか」「価格の面で満足しているか」といった設問も用意することで、より細かい状況の把握が可能です。
回答する顧客の人数が少ないと正確な数値を測定しにくくなるため、できるだけ多く(誤差の許容範囲にもよるが最低100件程度)の顧客から回答を得ましょう。
●集計方法
アンケートの結果を回収したら、各顧客が回答した数値を合計し、回答者の人数で割って平均値を求めます。
複数の設問を用意した場合は、設問ごとに平均値を計算して、それぞれの高低を比較してみると、自社の強みや改善点が分かります。
LTV(顧客生涯価値)
LTVとは「Life Time Value」の略語で、該当の顧客が自社商品の購入を開始してから終了するまでの間に、どれくらいの利益をもたらすかを表す指標です。
長い間購入し続けてくれる顧客は、LTVが高くなると言えます。
●計算方法
LTVの計算方法は複数ありますが、計算しやすいおすすめの方法は下記の通りです。
1人の顧客が一度に購入する価格の平均(平均顧客単価)×収益率×1年間の平均購入回数×購入を続ける年数
自社が得られる利益を計算するため、顧客の購入金額に収益率をかける点がポイントです。
●高めるためのポイント
LTVの計算に用いる4つの数値のいずれかを上げることで、LTVは上昇します。
収益率のアップは難しいという企業も多いかと思いますので、下記のような施策がおすすめです。
・セット販売やほかの商品とのまとめ買いを促進して平均顧客単価を上げる(クロスセル)
・より性能の高い高額商品の販売を促進して平均顧客単価を上げる(アップセル)
・キャンペーンの実施や定期的なメルマガ配信などで顧客の平均購入回数を上げる
・顧客満足度や顧客ロイヤルティを向上させて、顧客が長く購入を続けたいと思える環境を作る
解約率(チャーンレート)
解約率(チャーンレート)とは、自社商品の購入やサービスの利用をやめた顧客の割合を示す指標です。
解約率という名前ですが、月額利用料などが発生しないタイプの業態でも「どれくらいの顧客が自社での購入をやめたのか」を把握するために利用されています。
●計算方法
一定期間(1年間、半年間など)に利用をやめた顧客の人数÷一定期間が始まった直後の顧客数×100
「一定期間」をどれくらいの長さにするかは、その企業のビジネス形態によって異なります。
仮に2023年の1年間とした場合、2023年中に利用しなくなった顧客の人数を、2023年初めの顧客数で割って計算します。
●改善方法
解約率を改善させる(低下させる)ためには、顧客がリピーターであり続けたいと思うような仕組み作りが必要です。
月額制のサービスを提供している場合、解約以外に、一時的な利用休止や利用料の安いプランへの変更ができるようにすることも手段の一つです。
またCRMのメール配信機能などを利用して各顧客のライフスタイルに適した商品を提案したり、顧客が困ったときにすぐ問い合わせを行えるよう効率化したりといった施策を取り入れてみることをおすすめします。
CES(Customer Effort Score)
CESは、顧客が商品・サービスを利用するとき、どれほどの手間や時間をかけたかを表す指標です。
CESが高い企業は、顧客にたくさんの手間をかけさせているということになります。
そうなれば顧客はストレスを感じ、「もうこの店では買いたくない」と思うでしょう。
そのため、CESはできるだけ低く抑えることが重要です。
●測定用アンケートの例
CESは、おもに顧客にアンケートを実施する形で調査します。
「商品を購入する際、どれくらいのストレスを感じましたか?」という質問に、0点(まったくストレスはなかった)から10点(とてもストレスを感じた)の11段階で回答する、または「感じた」「感じなかった」の2択で回答する形がよく用いられます。
厳密なやり方が決まっているわけではないため、自社が提供する商品・サービスの内容に応じてカスタマイズしてみるのも良いでしょう。
●計算・計測方法
11段階で回答する方法を採用した場合は、各顧客が回答した数値をすべて合計し、回答者の人数で割って平均値を求めます。
2択で回答する方法の場合は、「ストレスを感じなかった」(肯定的)回答の割合から「ストレスを感じた」(否定的)回答の割合を引く形で算出します。
DWB(Definitely Would Buy)
DWBは、顧客がどれくらい該当商品を買いたいと思っているかを示す指標です。
顧客ロイヤルティが高い顧客を見つける際に役立ちます。
また、新商品を開発している段階で顧客の反応を知りたいときにも便利です。
●測定方法
顧客にアンケートを実施します。
「この商品をどれくらい買いたいと思いますか?」という質問に、1点(絶対に買いたい)から5点(まったく買いたいと思わない)の5段階で回答してもらいましょう。
そして1点(絶対に買いたい)と回答した顧客の割合から、自社にロイヤルティの高い顧客がどれくらいいるかを把握します。
「絶対に買いたい」と考える顧客が多ければ、それだけ自社のブランド価値が高いとも言えます。
3.顧客ロイヤルティを高めるための戦略
顧客ロイヤルティを高める方法はたくさんありますが、特におすすめの方法を3つ紹介します。
ロイヤルティプログラムを展開する
ロイヤルティプログラムとは、購入回数や購入金額の多い顧客に、より魅力的な特典を提供する仕組みのことです。
ポイントカードを作った顧客に、「100円購入ごとに1ポイント付与」などのサービスを行っている企業は多いでしょう。
ロイヤルティプログラムは、こういったポイントプログラムを発展させた形とも言えます。
顧客ごとにポイントの付与率などを変えることで「継続的に買い続ければもっとお得になる」と顧客に認識してもらい、より長期間の利用を促すことが可能です。
コミュニティサイトを立ち上げる
ここでのコミュニティサイトとは、自社のファンとなっている顧客同士が集まって交流するためのサイトのことです。
自社のコミュニティサイトを用意することで、下記のような効果を期待できます。
・ファン同士で感想を共有することで自社への愛着が強まる
・良質な口コミを収集できる
・ファンたちの意見から新商品のアイデアを発見できる
アンバサダープログラムを行う
アンバサダープログラムとは、自社商品への愛着が強い人物をアンバサダー(大使)として認定し、商品の良さを世の中に発信してもらうマーケティング手法です。
心から自社商品を愛している人物が素直な感想を発信することで、広告よりも信頼される情報となります。
なお、アンバサダーになる人物は、有名人でなくても構いません。
有名かどうかよりも、自社商品に愛着があり、自社が今後取り込みたいターゲット層に影響を与えられる人物であるかどうかが重要です。
4.顧客ロイヤルティを向上させた成功事例
株式会社サンリオ様は、グッズ販売やテーマパークの運営など多くの事業を手がけ、幅広い年代から愛されている企業です。
しかし以前は、部署ごとに顧客データベースを作成していたため、店舗でグッズを購入した顧客にテーマパークの来場履歴があるかなどの確認が行えませんでした。顧客ロイヤルティの高い顧客がいたとしても、それに気づけない状態となっていたのです。
そこでサンリオ様は、顧客ロイヤルティ向上のため、顧客情報を一元化し、シームレスなブランド体験を提供する取り組みを進めました。その一環として、2020年7月に会員アプリ「Sanrio+」を導入し、店頭・オンラインショップ・テーマパークでの共通ポイント「スマイル」を貯め、利用できる環境を整備しました。
「Sanrio+」では、顧客が好きなキャラクターを会員証に設定でき、会計時に店頭スタッフとキャラクターを介した会話が生まれるなど、顧客との温かな接点が生まれています。
さらに、購買データの一元化によって顧客の行動を把握し、よりパーソナライズされたサービスを提供する基盤が整いました。
顧客からも高く評価され、アクティブユーザー数も増加しました。
この施策は、サンリオが愛されるブランドであり続けるための強力な基盤となり、顧客との関係を一層深め、ロイヤルティの高いファン層を育成することに成功しています。
5.顧客ロイヤルティ向上の実現施策に、会員・クーポン・ポイント管理システム「fannaly(ファンナリー)」
顧客ロイヤルティは、単なる顧客満足度や顧客エンゲージメントとは異なり、企業やブランドへの深い信頼と愛着によって持続的な成長を支える基盤です。今回ご紹介した顧客ロイヤルティの計測指標を活用することで、現状を適切に把握し、顧客ロイヤルティを意識したマーケティング成功へとつながるでしょう。
とはいえ、顧客ロイヤルティの向上は、簡単に実現できません。
プリズマティクス株式会社が提供する「fannaly(ファンナリー)」は、ロイヤルティプログラムの導入や、顧客との接点を増やすことに適した会員管理サービスであり、下記のお悩みをお持ちの方におすすめです。
・「100円購入ごとに1ポイント付与」などの単純なポイント制度ではファンが増えず、苦心している
・店舗とECなど、複数チャネルと連携して会員情報を一元管理したい
・ライト層へアプローチすることで、顧客頻度を増加させたい
コンサルティングサービスも行っているため、顧客ロイヤルティを高めたいと考えている人は、ぜひ下記よりお気軽にお問い合わせ下さい。
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