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データ分析ってまず何をすればいい? 外してはいけないステップと理由について

データ分析ってまず何をすればいい? 外してはいけないステップと理由について

近年AIの急速な発展と共に「データドリブン」という言葉が再注目されており、弊社でも、データ活用に関するお客様からのお問い合わせが増加しています。皆さんの周りでも、データ活用の見直しや新しい取り組みについて話題に上がることが増えているのではないでしょうか。

一方で「データ活用に取り組みたいが、何から始めれば良いかわからない」という声もよく耳にします。
本記事ではそんな方に向けた、データ活用を始める際に必ずすべきことと、その理由をお伝えしていきます。

1.データ活用に取り組む際にすべきこと

「わが社も、これからデータ活用・分析に本格的に取り組んでいきたい」
会社の方針が示され、あなたが会社でデータ活用推進の担当になったとしましょう。最初に何をすべきでしょうか?

多くの人が、とりあえず「データ分析 ツール」で検索し始めると思います。
確かにBI(ビジネスインテリジェンス)ツールや比較サイトなど数多く表示されます。

とにかくまずはミニマムで始めたい・・・
でも幅広い活用が出来ないと意味がないな・・・
とりあえず有名企業が使っているものなら・・・

私も過去実際に、同僚が上記のような状態に陥っている状態を見たことがあります。
当時はとりあえず有名なBIツールを採用し、結果として普段エクセルで分析していた業務をBIツールに置き換えて、
ある程度業務を改善して終わりました。

しかし今思えば、ツール選びを急ぐ前に、もっと大切なステップがあったと思います。
それは、「会社として部署として、なぜデータを活用し、何をしたいのか」という目的を明確にすることです。

(例:どの部署でどんな分析をしたいのか?)
・営業部門:商品の売上予測をして、新しい顧客を見つけたい
・マーケティング部門:広告の効果を分析して、続けるべきかどうか判断したい
・製造部門:生産ラインの効率を上げるために、製造データを監視したい
・商品部:売上データを分析して、来年はどんな商品を作るか考えたい

上記の例に共通して言えることは「データに基づいてどのような意志決定をしたいのか」です。
データ活用の目的は、単にデータを集めて分析することではありません。
最終的には、会社の重要な判断をサポートすることなのです。
当然、その意志決定が貴社のビジネスにおけるインパクトが充分あるかも判断基準となるでしょう。

理想は企業の中期経営計画などからデータ活用の目的が明確に落とし込まれている状態ですが、必ずしもそうでない場合もあります。それでもデータ活用に取り組まなければいけない状況もあります。
そんなときは社内の各部署とコミュニケーションを取る必要があります。
その際に「何か分析したいことはありますか?」と聞くと、相手が答えに詰まるかもしれません。
そんなときは、以下の順番で質問をしてみてください。

「解決すべき部署の課題は何ですか?」
「その課題はデータ分析で改善できそうですか?」

課題はいくらでも出てくるでしょう。課題に基づいてデータで解決したい問題が見つかれば、データ活用の方向性が見えてきます。
重要なのは、ツールを選ぶ前にまず目的を明確にすることです。目的が決まれば、それに合ったツールや方法を選びやすくなります。また、データ活用の成果も測りやすくなるでしょう。

2.最初に実現したいことを明確にすべき理由

データ活用を始める前に「何を実現したいか」を明確にすることが重要です。その理由は主に3つあります。

ビジネスへのインパクトと導入後の推進のし易さ

目的が明確でない状態でツールを導入してしまった場合(よくある状況は、冒頭でも触れた現状の分析ツールとの置き換え)、単に既存の作業を少し効率化するだけで終わってしまうことがあります。これでは、せっかくの投資が十分に活かされません。

対して目的が予め明確になっている場合、ビジネスへの影響度が大きい分野に照準を合わせてプロジェクトを走らせることが出来るだけでなく、関係者間で目的・目標が共通認識になります。
認識が揃っていることでシステム導入後の活用がスムーズになり、目的に照らし合わせて「仮説 → 実施 → 検証」のサイクルを回すことが出来ます。そのため、担当者の手元の軽微な改善に留まらず、ビジネス全体に大きな影響を与えるプロジェクトになる可能性が高まります。

以上の理由から、データ活用を始める前に「何を実現したいか」を明確にすることが非常に重要なのです。
これにより、適切なツールの選択、効果的な予算の使用、そしてビジネスへの大きな影響を期待できます。

データ分析の壁「データの取得とクレンジング」

次はデータ分析をはじめる上で避けては通れない重要な準備段階である「使えるデータを用意する」ことについてです。
目的が不明確な状態では、現時点で取得可能なデータの範囲で分析を開始することになります。
一方で目的が明確であれば、現状のデータの有無にとらわれずに必要なデータを定義することができます。
しかし、目的と照らし合わせるときにデータの取得が思わぬ壁になることもあれば、データ内容が不適切で分析結果の信頼性を損なうこともあります。

●データを取得する
そもそも目的に合ったデータがすぐに取得できるとは限りません。
例えば、実際にあったご相談として「お客様の行動を捕捉したい」という課題をお持ちの企業様がありました。その企業様では複数の販売チャネル(例:店舗、オンラインショップ、アプリなど)を運用しており、各チャネルでお客様IDを発行されていました。
つまり、チャネル毎の行動は捕捉できるものの、チャネルを跨いでの一人のお客様の全体的な行動は捕捉できないという状況でした。
その為、お客様の行動を分析する前に、まずIDを統合してチャネルを超えたお客様の動きをデータとして取得できるようにするプロジェクトが立ち上がりました。

このように、ID統合のようなプロジェクトを走らせる必要がある場合もあれば、WEBページに計測タグを仕込む、カメラのようなデバイス設置が必要な場合など、データ取得の方法は多岐に渡ります。
現在取得可能なデータで、目的を達成することは可能なのか。今一度検討してみて下さい。

●データを使える状態にする(データクレンジング)
取得しているデータが必ずしも分析に使用できる形になっているとは限りません。データが重複していたり、項目が欠損している場合など状態は様々ですが、そのデータを使用できる状態にする作業を「データクレンジング」と呼びます。

データクレンジングでは、不正確なデータ、欠損値、異常値、重複データなどを特定し、それを修正または削除して対処します。
これには「センサーデータにおいて、異常に高い値や低い値を削除または修正する」といったシステム面での課題があれば「商品マスタの特定の項目を、担当者によって違う意味合いで使用している」といった運用面の課題もある場合があります。
システムの設定で解決できる場合があれば、運用ルールを見直す必要がある場合もあります。

データの取得とクレンジングは、時間と労力がかかる作業ですが、信頼性の高い分析結果を得るために欠かせない重要なステップです。この準備をしっかり行うことで、その後の分析作業がスムーズに進み、より価値のある洞察を得ることができます。

適正なツールやサービス提供者(ベンダー)選定

社内のリソースによっては外部ツールの利用やシステム開発をベンダーに依頼することがあります。
先程、営業部門やマーケティン部門など例をいくつか並べてみましたが、データ分析の目的によって、
用意すべき分析環境が全く違うことが恐らくイメージできるのではないでしょうか。

例えば、
・営業部門の売上予測
・マーケティング部門の広告効果分析
・製造部門の生産ライン最適化

冒頭で「データ分析 ツール」と検索したときと違い、選定するツールやベンダーは目的に沿ったものになるでしょう。
目的が明確であれば、それに合ったツールやベンダーを選びやすくなります。
また、費用の規模が大きい場合や、既存のツール利用で済まない(新しいシステム導入)場合はベンダーに見積もりを依頼することがあります。その際に目的や要件が曖昧だと、ベンダーは以下のような対応をする可能性があります。

・余裕を見て高めの見積もりを出す
・最小限の機能で低めの見積もりを出す
・過去の似たような案件の平均を出す

このように企業や担当者によりバラバラです。
結果として、複数のベンダー間で前提が合わなくなることで、必要以上に費用が嵩んだり、要件が固まってきたら目的の機能と合致しなかったというような危険性が高まってしまうのです。

以上の理由から、ツールやベンダーを選定する際にも、目的や要件を明確にしておくことが重要だとお分かりいただけるのではないでしょうか。

3.まとめ

この記事では、データ活用を始める際の重要なポイントについて説明しました。主に以下の3つの点を覚えておいてください。

●目的を明確にする
 最初に目的を設定しておくことで、ビジネスへの影響を最大化し、また導入後の活用もスムーズになります。
●データの取得
 目的に照らし合わせ、必要なデータを定義します。その際、現時点のデータの取得可否にとらわれずに検討することが重要です。
●データクレンジング
 信頼性の高い分析結果を得る為に、不正確なデータ、欠損値、異常値、重複データなどを修正や削除して整えます。

これらのステップを踏むことで、データ活用プロジェクトの成功率が高まります。

とはいえ、「データ活用で実現したいことを描く」、「データ準備の課題を解決する」といったことが社内だけでは難しい場合もあります。そんなときは、外部の専門家に相談するのも一つの選択肢のひとつです。データ活用は簡単ではありませんが、適切に行えば企業に大きな価値をもたらします。

この記事を通じて、データ活用の第一歩についてイメージを持っていただけたら幸いです。

中西 悠太

中西 悠太

コンサルタント

株式会社しまむらにて店舗運営と商品部を担当。2017年に株式会社カーブスジャパンに入社し、オンラインフィットネスの立ち上げに参画。サービス構想、システム開発、デジタルマーケティング、プロジェクトのローンチを経て、別の新規事業開発にジョイン。

ビジネスモデル、店舗運営や各施策開発、CRMの検討に携わり、サービスの主軸となるシステム開発はPMとしてプロジェクトをリード。その他 施策開発、物件開拓、店舗レイアウト、人材育成など複数業務のリードを経験し、2023年11月クラスメソッドに参画。

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