プリズマジャーナルTOP「“CRM”って結局、なんなんですか?」“今さら聞けない”小売業界の素朴な疑問、プリズマコンサルにぶつけてみたインタビュー!
「“CRM”って結局、なんなんですか?」“今さら聞けない”小売業界の素朴な疑問、プリズマコンサルにぶつけてみたインタビュー!

「“CRM”って結局、なんなんですか?」“今さら聞けない”小売業界の素朴な疑問、プリズマコンサルにぶつけてみたインタビュー!

皆さんは、周りの人が当然知っているはずだと思われていることを、実は理解していなかった経験はないでしょうか? 小売ビジネスの現場で「当然知っているはず」とされながらも、実は十分に理解出来ていない概念を、小売業界での業務経験豊富なプリズマティクスのコンサルタントインタビューを通して、理解していければと思います。

今回は「CRM」という言葉について、プリズマティクスのシニアコンサルタント金子にインタビューしました。CRMについて「今さら聞けない」と感じていた方、また「CRM」について深く理解したい方は、是非ご一読ください。

1.CRMって何? 企業によって違う意味と本当の目的

CRMという言葉を聞いたことがありますか?
一般的には、Customer Relationship Managementの略で、「顧客関係管理」と訳されます。でも、実は企業によってその意味合いは大きく異なることも多い言葉です。

田中:じゃあまず「“CRM”を金子さんが簡単に説明すると、なんなのか」を伺いたいです。

金子簡単に

田中簡単にお願いしたいです。

金子:おぉ〜、CRMは簡単じゃないんだよなっていうのは、ぶっちゃけなところですが、そのまま訳すと「お客さまとの関係をどう作り上げるかっていうマネジメントしましょう」って話なんですよね。

企業活動していればお客様は絶対にいらっしゃるから、どの企業も絶対やっていることである……というのは、正直、思います。

なんだけど、各ベンダーだとか事業者の人は自分のイメージするところを切り出して、「CRM」って呼んでる。人によってはコールセンターの仕組みをCRMって呼んでることもあるし、MAとかコミュニケーションツールをCRMと呼んでいることもあるし、顧客軸での分析をすることをCRMと呼んでいる企業もあるし、うちみたいにポイント制度とかロイヤルティプログラムを作ることをCRMと呼んでる企業もある。

田中:つまり、定義が、広い……?

金子:広い。広くて人によって解釈が多様になることもある。ただ、本質的には「顧客との関係をどう作り上げていくか」っていうのをマネジメントすること。そのためのツールをすべて「CRMツール」って呼んでいるんだと思います。

商談や相談を受ける時には「CRM」という言葉だけだとふんわりしているので、「企業にとって、お客さまとの関係を作り上げるのに何が一番重要なんでしょうか?」という問いを丁寧に問いかけています。それで初めて、その企業に合っているCRMがわかる企業さんが多いんじゃないかな、という気はしています。

2.業態・企業ごとに異なるCRMアプローチ

CRM(顧客関係管理)と聞くと、他の企業と同じようなことをすればいいと思っていませんか? 業界や企業によって、CRMのアプローチは全然違うようです。

田中:人による、ということは解釈が広いので、最初に前提を話し合いましょうという感じですかね。

金子:そうなんだよね。例えば、少し古い例だけどザ・リッツ・カールトンとかオリエンタルランドが「CRMはすごくホスピタリティが重要だ」っていっていた時期がある。

それはそうなのだけど、そういう企業は現場にしっかりと権限が渡されているから、現場の人たちがホスピタリティのあるアクションを取れるわけです。現場に権限を渡されてない会社の場合、ホスピタリティが重要だと言われても、現場の人にホスピタリティを求めるのがボランティアになっちゃう。それは違うんじゃないか、と思ったりしてる。

例えば、「コンビニにホスピタリティって、本当に求めるの?」って言われちゃうと、なんか違う気がしてるんです。

田中:確かに、ちょっと……違う気がしますね。

金子:例えばおじいちゃんが1人で買い物にきてくださった時に、ドアを開けてあげるとか、ちょっと荷物を持ってあげるとかそういうのは全然やるべきだし、そのお客さまはちゃんと固定客に近づくのでいいと思うんです。ホスピタリティがあることそれ自体は、いいことでもあるんですよ。でもそれが本質なのかっていうと、……ちょっと違う気がしている。

私は前職がコンビニ業界だったので、じゃあ「コンビニだったら、何がホスピタリティの本質か?」と考えてみると、さっき言ったみたいなこと以前に、その地域のお客さまに合った品揃えを品切れさせないようにする、その商品をちゃんと確保してあげるということが、実は最も重要だったりする。そうすると日々の発注だとか売り場を作るところが、実はCRMの本質だとしちゃう。それ以外だと、レジオペレーションを早くした方がいいだろうってなってくる。

アパレルの例でいえば、しまむらさんみたいにオペレーションを徹底させて効率的に店舗運営をして、イイ値ごろ感で楽しいわくわく商品を展開する、っていうふうな方針だとしたら、接客などを充実するよりもオペレーションを重視して、売り場全体でお客さまの環境を作る方が良いっていう考え方になると思う。

そういうアパレルが目指すものと、ハイブランドでの接客が重要ですっていうところがやるCRMとは全然違う。でも、それぞれの考えるCRMがそれぞれ違って、全然良いのではないかと考えています。

3.顧客との関係性構築と差別化

次は、顧客との関係づくりについて、ちょっと深掘りしてみましょう。

実は、顧客との関係性を築く方法は、企業によって全然違うんです。同じ業界でも、アプローチはバラバラ。「うちはコーディネートのプロ!」だったり、別の企業は「うちはお客さまのニーズに合った商品選びが得意!」だったり、どちらも正解なんです。大切なのは、自社の得意分野を活かすことで差別化することだったりします。

田中:顧客との関係性を築く方法って、業態によってある程度パターン化ってされるんですか?

金子:パターン化されてる間は、多分差別化できないから、埋没するんじゃないかと思う。

田中:差別化はかなり重要なんですね。

金子:他の競合他社よりも、お客さまとの関係が一歩抜きでないと勝てないからね。

田中:確かに、関係を高めるのが目的ですからね。

金子:でしょう。みんな同じレベルのCRMになったら、それはもう差別化にならないから。

田中:その差別化は、どうやって見つけていくんですかね。

金子:同じ業態の小売販売でも、ブランドや企業によって接客についての“答え”は違ってきたりもしますよね。

例えばコーディネートすることを優位に捉えているなら、コーディネート力を生かすために、じゃあどんなお客さまとの関係を作りますかってアプローチになる。一方で、ブランドからはあまり売り込まずに、お客さまが求める製品商品を、お客さまのニーズに合わせて提供してあげようっていうスタンス、そんな接客をするのが“答え”になる。

同じ業態でも、これだけアプローチが違うんだよね。どんなCRMとお客さまの関係を作るかは、その企業のブランドとか、その特徴によって全然違ってしかるべきです。ブランド力はお客さまとブランド間のその絆の深さだと思うので、その絆の深さはブランドの特徴と、そのブランドに惹かれるお客さまの特徴によって全然変わるのは当たり前なんですよね。

田中:では、金子さんが考える「絆」って何ですか。

金子:絆はね。ええとなんだろうね。難しいね。難しい問いだね。「ブランドって何か」というのは、結構難しいんだよ。私がいたコンビニ業界だったらで考えてみても……うーん、絆ってなんだろう?

ミニストップの社員ですら、コンビニはミニストップしか行かないってことはありえないよね。セブンイレブンにもローソンもファミリーマートにも、当然、行っていたわけで、「同じ条件でお店が同じ距離にあったらどっちに行きますか?」って時に、どっちとの絆が深いんだろうなっていうとこで、ちょっと見えるてくるかなと思う。

量販店みたいなビジネスだったら、例えば「ヨドバシとビックカメラどっちに行きますか?」だったら……同じ駅に同じビル規模のビルが建ってました、だったら、どっちか好きな方に、選んで行くんだろうなと思うけど。

田中:確かに、愛着や何かしら関係性があれば、そっちに行きますね。

金子:その“関係性”を、どう作り上げるかなんですよね。

ポイントも関係性の1つだし、行った時に受けた接客も関係性の1つだし。あと何かあった時にクレーム入れたり、問い合わせした時の対応も関係性の1つだしね。

だから、その関係性の「どこを重視するんですか」ということが、その企業がやるCRMがポイントプログラムなのか、もしくはコールセンターなのか、もしくは店頭の接客力を高めるのか、というところで、何のツールが重要なんですか、っていうのが分岐していくはずです。


 

ここまでの内容で、CRMが単なる顧客管理システムや接客テクニックではなく、企業の本質的な顧客戦略に深く関わる概念であるではと思いました。また、業界や企業の特性によってCRMのアプローチが大きく異なることは、非常に興味深い話です。

企業がCRMを効果的に活用するためには、自社の特性や顧客との関係性を深く理解し、それに基づいた独自のアプローチを開発することが重要だと感じます。

引き続きインタビューを公開していく予定ですので、お楽しみに。

田中 由希子

執筆者プロフィール
田中 由希子
デザイナー

印刷、WEB、MDMベンダーを経て2016年5月にClassmethod入社。2020年心理学専攻で大学卒業。銀座コーチングスクール卒。UX Japan Forum 2015運営委員、UXシンポジウム2016福岡運営メンバー。クラスメソッドでは、エンタメ企業アプリ、薬局アプリ、小売アプリ、ハイブランドアプリほかCX OREDER、LINE miniアプリまたは、管理画面のデザイン・体験設計に従事。

⾦⼦ 傑 執筆者

執筆者プロフィール
金子 傑
シニアコンサルタント

2000年イオングループのミニストップ入社。システム部⾨にてECサイト、DWH、商品マスタ等のPMを担当。2011年以降はシステム部門を離れ、九州営業部長、社長室長、サービス・デジタル推進部長、マーケティング部長等を歴任。2018年11月にクラスメソッドに参画。OMO/EC、CRMを中⼼に、事業戦略から業務設計、PMまで幅広い領域を担当。
【支援実績】
OMO/EC:アンファー、グラニフ、⼤⼿スーパー、雑貨⼩売店(戦略策定、業務設計)、大手生活用品メーカー(D2C)等
CRM:サンリオ、大手アパレル(会員制度設計)等

この記事をシェアする
Facebook