プリズマジャーナルTOP外食・小売業界における、TikTok活用の課題とは?
外食・小売業界における、TikTok活用の課題とは?

外食・小売業界における、TikTok活用の課題とは?

企業が利用するSNSとして、TikTokは日本で2017年10月に始まりました。企業によるTikTokアカウントを利用した投稿や、フォロワーを増やす活動は徐々に伸びてきています。

従来はX(旧Twitter)、Instagram、YouTubeでしたが、この7年間でTikTokはどのように企業に利用されているのでしょうか。またどんな投稿をしてどんな効果を担っていくのでしょうか。

1.外食業界のTikTokアカウント

外食業界で、TikTokフォロワー数が多いアカウントを整理してみました(※2024年6月26日時点のTikTok検索結果を参照)。

10万人以上のアカウントがほとんどいない状況です。また投稿内容は、外食らしく、商品の楽しみ方の構成が多い傾向です。

外食ブランド フォロワー数 累計いいね!数 投稿内容
マクドナルド 60.3万人 1,041万件 商品・TVCMとの連動が多く芸能人も登場
ドミノ・ピザ 40.8万人 1,124万件 商品の楽しみ方の構成
ほっともっと 21.1万人 568万件 商品の楽しみ方の構成
スシロー 18.5万人 293万件 顧客目線での店内体験系
サブウェイ 10.6万人 264万件 商品の楽しみ方の構成
焼肉きんぐ 6.2万人 119万件 商品の楽しみ方の構成
スターバックス 4.8万人 27万件 商品・アニメーション・スタッフの構成
サイゼリヤ 4.7万人 74万件 商品画像
焼肉の和民 2.6万人 69万件 商品・スタッフ・楽しみ方

2.小売業界のTikTokアカウント

小売業界でフォロワー数が多いTikTokアカウントを整理してみました。外食同様、知名度は高くても、フォロワー数10万人以上のアカウントが少ないことが分かります。

アパレルブランド フォロワー数 累計いいね!数 投稿内容
GU 51万人 1,038万件 商品・コーデ・スタッフの構成
SHEIN 33万人 637万件 商品・コーデ・スタッフの構成
ユニクロ 29万人 247万件 商品・コーデ・スタッフの構成
おかたべOKATABE
(大丸松坂屋)
18万人 67万件 商品・コーデ・スタッフの構成
ワークマン 11万人 68万件 商品・コーデ・スタッフの構成
3coins公式HITOMI 5.7万人 138万件 商品・使い方の構成
.st(ドットエスティ) 5.3万人 37万件 商品・コーデ・スタッフの構成
しまむら 4.8万人 52万件 商品・コーデ・スタッフの構成

ちなみに、フォロワー数がとても多いのは、キャラクターが強いブランドアカウントです。外食・小売と比較にならないアカウント力があります。

ブランド フォロワー数 累計いいね!数 投稿内容
ポケモン 670万人 5,266万件 キャラクターのダンス、アニメーションが中心
sanrio 328万人 4,292万件 キャラクターのダンス、アニメーションが中心
トムとジェリー 300万人 3,619万件 アニメーションが中心
ONE PIECE official 264万人 2,133万件 漫画の世界観の紹介や新商品・イベント情報
SEGA 213万人 2,647万件 キャラクターのダンス、アニメーションが中心

3.外食・小売業界のTikTokの課題

TikTok公式サイトには以下の特徴が記載されています。

TikTok内でグルメ関連動画は、毎月約4億回視聴されるほどの人気カテゴリ。再生数および投稿数は月を追うごとに伸びており、グルメ動画は毎月約7万件増加しています。平均エンゲージメント率は約5%と高く、平均動画再生数は全体平均の20倍以上という「質」的にもかなり高水準となっています。

グルメ動画の視聴者は男女比でいうと、男性:女性が1:2で女性がほぼ倍。また性別によって好みのジャンルが分かれており、女性は「飲み物」「洋食」、男性は「和食」「中華」に熱中する傾向が見られます。朝食、夕食といった食事よりも、「間食」が最も投稿数、再生数ともに多くなっています。

さらに、再生回数が多い投稿にはこのような法則があります。
1. 商品名より店名の方が、再生回数が多くなりやすい。
2. 動きのあるものは、再生回数が多くなりやすい。
ロールアイス、ラクレット、チーズハットグ、お好み焼き、エスプーマ、抹茶ティラミス etc..

詳細はTikTok公式ページにてご確認ください。

ここで外食だけの視点になると、確かに商品・シズル・楽しみ方(真似したくなる)は必要に見えますが、それは単に「営業」行為に見えてしまいます。
インフルエンサー起用はBtoCtoCの導線で「営業」に見えにくくなることで効果が出やすいのも事実だと思います。さらに「人」が出てこない場合、TikTokでは基本的に「人」とモノかコトがセットなのが大半なので、ますます営業感が高く見えるでしょう。

逆にInstagramは商品の魅力・美しい・可愛い・映えるなどをユーザー自体が楽しめるメディアと言えるので、商品・シズル・楽しみ方は相性が良いのです。しかしTikTokは、YouTubeと似たような演出を期待するユーザーの方が多いのではないでしょうか。警備会社や航空会社などのTikTokアカウントではスタッフがダンスをするのは当たり前、社長も出てきたりなど「他のメディアでは見れないブランドの一面」があり「ユーザーとの距離を縮める好感度」をもたらしています。

つまりTikTokは、

・ブランドのアカウントが商品情報(商品とスタッフが出てきて商品情報や楽しみ方を説明する)を訴求しても、営業感が強くて興味を持たれにくい

・ブランド並びに企業イメージの好感度を高めるために、ブランドの側面をフレンドリーに演出すると共感を持たれる

ということだと思います。

TikTokでそのブランドが注目されたり、その投稿を見て顧客が来店したくなるのは、UGCになるということです。商品情報・楽しみ方はUGCを増やしていくことを重視した方が良い傾向にあると言えるでしょう。
そして、ブランド公式TikTokアカウントの役割は「ユーザーとの距離を縮める好感度」を高めることになってきます。企業イメージの距離感が近くなるわけですから、採用にも効果があるかもしれません。

外食だけではなく、小売業界も似たような傾向です。TikTok広告として目新しい・使いたくなる・着たくなる商品はECとして多いと思いますが、通常投稿としては外食と似たような「商品・コーデ・スタッフの構成」が顕著です。アパレル業界はスタッフ毎にコーデやコンテンツを発信しているブランドが多いので、TikTok用の公式アカウントは必要としていないかもしれません。

ただしアパレルを超えて、ワークマンや3coinsのように着る以外の「機能」に長けた部分が多いブランドになってくると、商品の強みが高いのでTikTok上でもフォロワー数やエンゲージメントが高いのが可視化されていると見えます。

4.企業アカウントとしてのTikTok

外食や小売だけではなく多くの企業・ブランドは「すぐにマネタイズに繋がらないならSNS投稿はしない」という方針が多いかもしれません。ですが、YouTubeよりも1日の試聴時間が長くなってきたTikTokにて、企業・ブランドの存在をユーザーに触れてもらう必要はないのでしょうか。
ユーザーがよく使うチャネル=顧客接点になるはずです。長期的にユーザーに好感度・愛着を持ってもらうにはTikTokを活用することを勧めます。

清水 圭介

執筆者プロフィール

清水 圭介
コンサルタント

株式会社EPARKを経て、2018年に物語コーポレーションに入社。外食チェーンストア(焼肉きんぐ・丸源ラーメン・ゆず庵)におけるデジタルマーケティング・DXの部門を立ち上げ、OMO構想からCDP構築を軸にアプリ・web開発からマーケティングまで網羅した戦略立案・企画推進、開発からマーケティング運用を担う。2021年にレインズインターナショナルに入社。デジタルマーケティング部の部長として、牛角・温野菜を中心にCDP構築・web広告・順番受付開発運用などを担う。2023年9月クラスメソッドに参画。

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