プリズマジャーナルTOP将来の消費を担うα(アルファ)世代に向けた取り組みの必要性を紹介 [プリズマコンサルの注目ニュース]
将来の消費を担うα(アルファ)世代に向けた取り組みの必要性を紹介 [プリズマコンサルの注目ニュース]

将来の消費を担うα(アルファ)世代に向けた取り組みの必要性を紹介 [プリズマコンサルの注目ニュース]

少子化が加速している日本において、Z世代をはじめとする若年層の割合は高くありませんが、世界に目を向けると今なお人口は増加しつつあり、その中心はα世代(2010年~2024年生まれ)になります。α世代は2025年には全世界で20億人に達し、最も人口の多い世代になると予測されています。これは世界人口の歴史上、最も多い人口数で、将来的に経済に与える影響は計り知れません。

α世代はまだ子供にあたる年齢のため、今すぐ経済に与える影響は少ないです。彼らの消費行動が実際に影響するまでに時間はかかりますが、α世代の心をつかみ価値観や行動に寄り添うためには、早い段階からのアプローチが必要でしょう。今後のビジネス展開を考える上で、α世代をどう取り込んでいくかが成長戦略の鍵となると考えます。今回は、企業による具体的な取り組み事例を紹介していきたいと思います。

1.ビームス、アバター用ファッションアイテムのコレクションを販売

●全世界で4億6000万のユーザーが参加するアバターベースプラットフォーム「ZEPETO」に、2023年2月ビームスが日本のファッション企業初のコレクションを販売スタート。
●「ZEPETO」人気クリエイターとビームスは共同でファッションアイテムを制作。メタバースだからこそ楽しめる、新しいファッション体験が注目を集めている。
●「ZEPETO」上でビームス公式モデルAM(アム)とユーザーがコミュニケーションを取ることで、ブランドへの親近感醸成が期待されている。

α世代は2024年時点で14歳以下、1番大きい子で中学生になります。人格が形成される幼少期から、性格が決まってくる青春期という時期に、企業やブランドに対して共感を覚える経験や、大切な思い出の一部だと思える感情的なつながりを形成することは、成人した後のLTV(顧客生涯価値)に寄与すると考えます。

親世代の多くがミレニアル世代であり、ミレニアル世代はインターネットの発展と共に成長してきた世代です。ITリテラシーが高く、スマホやPCといったデジタルデバイスや、オンラインツールを日常的に使いこなすため、その子供世代のα世代は、幼少期からインターネット空間に触れながら育つことが予測されます。

親子ともにデジタルネイティブで、α世代は物心が付く前からデジタルデバイスに触れていることからも、バーチャル空間やメタバースで、アバターを操作して人と関わりをもつ機会や、バーチャル空間で商品体験ができることは、α世代からすればごく当たり前のことになるかもしれません。

ビームスは早くから消費の中心になるZ世代や、近い将来の消費を担うα世代とのタッチポイントを模索し、熱量の高いコミュニティを持つプラットフォームで、デジタル上でのファンとの結びつき方を検証していると推察します。

デジタル空間でのファッションを通した自己表現を可能にすることが、新たな体験価値を提供し、洋服に対する価値観も変わっていくのではと考えます。リアルでは日常を、バーチャルでは自分の理想や普段とは違う自分の一面、非日常をファッションで表現するなど、ファッションの楽しみ方や表現も広がっていくかもしれません。またバーチャルでの出会いからリアルで会う機会に繋がったり、バーチャルとリアルの接点の可能性は、私達が体験したことのない楽しみを与えてくれるかもしれません。

2.米国マテル社、バービー人形やブロックのリサイクルプログラム開始

●マテル社は2021年より、使われなくなったおもちゃに第2の人生を与える玩具回収プログラム「Mattel Play Back」を開始。
●環境意識の高い親が安心して購入できる玩具製造に取り組んでおり、2030年までに、リサイクル素材、リサイクル可能素材・生物由来プラスチックの使用割合100%とすることを目標に掲げている。
●玩具メーカーのサステナビリティな取り組みは、ミレニアル世代とα世代の購買理由にも強く結びついている。

現在のα世代の中心は小学生以下の世代でもあり、彼らの消費行動は親世代(ミレニアル世代)が主導権を握っています。α世代の多くの親世代であるミレニアル世代は、SDGsやサステナブルなど、社会課題に対する意識や、環境に配慮した商品への関心が高いと言われており、そのような親から影響を受けるα世代も、同様に社会課題への関心や、環境に配慮した商品やサービスの選択、環境意識が高くなる可能性が予測できます。

米国ではプラスチックのおもちゃを子供に買い与えたくないと考える親たちが増えている、急速に高まるプラスチック反対の流れが消費者行動を形作っている現状に、玩具メーカーは認識、対応しなければならない状況だと言われています。

環境問題として海にプラスチックゴミが流出し、海の生態系を破壊しているとされる海洋プラスチック問題は、世界的な関心事になっています。資源の無駄使いの廃止と、地球環境への負荷低減は、α世代の親世代であるミレニアル世代にとっては、個人の消費活動だけではなく、企業活動の姿勢にも厳しい目を向けていると推察します。

私自身、前職では、海洋プラスチックゴミをリサイクルし、取り扱い製品の約90%がリサイクル素材、もしくは環境負荷が低い素材を使用して開発した商品しか販売しない、スペインのブランドにたずさわる機会がありました。海洋ゴミの75%は海底に眠っている、海にいる魚の1/3は体内にプラスチックを含んでいる、という事実を目の当たりにし、衝撃を覚えた経験があります。このブランドはまだ世界的な知名度も低く、創業してまだ15年(2024年時点)ですがB corpやGRS(グローバル・リサイクルド・スタンダード)など、国際認証も取得し、製品や事業全体に対して高いサスティナビリティの基準を持って取り組んでいます。

1959年にアメリカで初めて発売され、古くからバービー人形で知られる米国のマテル社のような歴史ある企業が、おもちゃという子供が日常的に接するものにサステナブルな素材を使用し、環境保護の思想を込めていくことで、自然と子供たちを啓蒙するロールモデルになっていくことを願いつつ、事例として紹介させていただきました。

3.サントリー、次世代環境教育「水育」20周年

●2004年に開始した次世代環境教育活動「水育」が20周年を迎え、世界8カ国で展開、累計参加者数は58万人以上となった。
●「水育」では、“水”が国という範囲に留まらず、地球全体の資源として大切なものであることを、グローバルに伝えている。
●正解のない環境保全というテーマに対して、「考える」を焦点を当てた独自プログラムを提供。天然水がどのように育まれるのか、その環境を保つ大切さ等、実際の木や土に触れながら“体験”を通した学びとなっている。

α世代は高品質なデジタル環境や、豊富な「モノ」に囲まれて育っており、物質的な豊かさにそれほど強い関心を抱かない可能性があります。物質的な豊かさよりも、体験を通じて得られる内面的な豊かさを重視する傾向があると推察します。「モノ」の消費よりも「コト」を通じた体験を重視するα世代には、体験を通して企業や製品に共感を覚える経験をしてもらうことが重要でしょう。

私は現在、海の環境教育に特化したあるNPO団体で活動しています。ビーチクリーンや海を体感するアクティビティ、ワークショップを通して海の生き物や環境、歴史、海の楽しみ方を伝える活動をしています。コロナ後の数年で、親子連れの参加者や企業での研修依頼が急激に増えました。個人に留まらず、企業活動においても必然的に取り組んでいかなければならない活動として、環境に対する認識が高まっているのを実感しております。

親子での参加が増えているのは、親世代(ミレニアル世代)の環境活動へ参加する意識の高さの現れだと思います。「コト」を通じた体験での学びの重要性ということが、環境活動に限らず、今の親世代であるミレニアル世代や、若い団塊Jr世代は子供への教育として必要と考えているのかもしれません。次世代教育とサスティナビリティ活動、持続可能な社会の実現に向けた取り組みの事例を紹介させていただきました。

4.まとめ

今回は、将来の消費を担うα世代やZ世代に向けた様々な取り組みを、早期から始めている事例を見てきました。

国内だけに目を向けると、少子高齢化で若者の減少が進み、若者をターゲットとする市場規模は小さくなり、ビジネスとして事業収益性が低いという判断をする企業は増えると思います。ただ世界的に見れば人口も増え続け、インターネットやSNS、デジタルの空間を通して世界中の人々と繋がることが可能になった今、グローバルな視点で今後マーケットの中心を担うα世代をターゲットに据えた成長戦略を描くべきではないでしょうか。

サスティナビリティやSDGsなど社会課題に対する意識が高く、「モノ」より「体験」を重視するα世代特有の価値観や、幼いころから日常の一部としてインターネットやSNS、デジタルデバイスに触れて育ってきた環境も理解したうえで、新しい消費社会をリードする世代に向けた取り組みの検討するきっかけになればと思います。

(構成・編集=プリズマ編集部)

西田 信義

執筆者プロフィール

西田 信義
コンサルタント

2002年FREE’S INTERNATIONAL(現TSIホールディングス)に入社。店舗運営管理、営業MDを担当。Barbieなど海外ブランドの営業部長や国内ブランドの事業責任者を歴任。株式会社三陽商会にて新規事業開発、株式会社マッシュスタイルラボにてMD担当部長など事業推進に従事。ブランドディレクション、製販計画の策定など中心に大手アパレルにてSCMを担う。D2Cのベンチャー企業、株式会社TOKIMEKU JAPANのCOOを経て、2023年9月クラスメソッドに参画。

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