「スターバックス・ユナイテッドアローズ・シップスなど有名企業が見直した今 御社のポイントプログラム、見つめなおしてみませんか?」と掲げて、プリズマジャーナルがお送りする連載企画。全6回にわたって「ロイヤルティプログラム」をテーマに、様々な切り口で記事を短期間で投稿していきます。
本記事では、企業がどのようにしてデジタルとオフラインの接点を最適に統合し、顧客に一貫した体験を提供するかに焦点を当てて記載していきます。
1.購買体験の進化
購買体験は、単なるPOS(販売時点情報管理)の瞬間を超え、SNSやデジタルコミュニケーションを含む統合体験へと進化しています。
この変化は、コロナ禍による「デジタルシフト」が加速したことで特に顕著になり、教育からショッピングに至るまで日常生活の多くの側面がデジタル化されました。これにより、アマゾンなどのデジタルプラットフォームの重要性を際立たせ、リモートワークの普及とともに、家庭や個人の時間が増える新しい生活様式を創出しました。その結果、顧客はデジタルを通じて継続的につながる体験を提供する企業を選ぶ、新しい消費者行動を形成しました。
また、デジタルを通じて継続的につながる体験を提供する企業に対する需要を高めました。その結果、顧客はつながる企業を選択し、新しい消費者行動を形成しています。
このデジタル接点を持つことは、現代の企業にとって必須ですがそれだけでは不十分であり、企業はデジタル接点を効果的に活用し、顧客との関係を維持することが求められます。
スマートフォンの普及とともに、顧客は企業と常につながっている状態にあります。
顧客が企業とのつながりを価値あるものと感じさせるためには、単にデジタル接点を提供するだけでなく、顧客に向き合う企業姿勢と、サービスの利用前から利用中、利用後までを含む一貫した統合体験を設計することが重要です。
2.前後を含めた体験の重要性
購買体験の進化は、顧客のデジタルおよびオフラインの行動と密接に連動しています。
現代の消費者は購入前にウェブサイトやSNSで製品情報を収集し、オンラインショップや実店舗での購入を選択します。また、支払い方法も現金、クレジットカード、QR決済など多岐にわたり、商品の受け取り方法も自宅配送、店舗受け取り、コンビニ受け取りなどさまざまな方法で対応しています。
その中でサービス利用後のフォローアップも重要な要素であり、メールやアプリなどデジタルの接点を通じて顧客サポートが行われています。
こういった企業の活動によって、顧客の購入前から購入後まで一貫した体験をサポートし、全ての時間軸にわたっての体験を同じにさせることが可能になります。
つまり企業には顧客がデジタルとオフラインのどちらの環境にいても、一貫した高品質の体験を提供することが求められているということです。
顧客がスムーズに商品やサービスを購入し、問題なく購入完了できるような体験は、顧客満足度を大幅に向上させることができます。また顧客視点で快適に設計されたこの種の体験は、顧客の再利用意欲を高め、ブランドへのロイヤリティ強化に寄与していきます。
3.自社の強みを活かした体験設計
市場は絶えず変化しており、デジタル技術の進化は特に顕著です。
過去の施策やプロモーション手法が通じなくなってしまったり、これに順応することが企業には求められています。他社の成功事例を単に模倣するだけでは、顧客の期待に応えることは難しく、市場での競争力を維持するためには、『独自の顧客体験』を設計することが不可欠になっています。
『独自の体験設計』を作るには、自社の強みを深く理解し、それを顧客体験に活かすことが重要となってきます。製品の品質が自社の強みである場合、それを単にアピールするだけでなく、その品質が顧客にどのような価値を提供するかを具体化し、購入率やリピート率を向上させる体験を創出することが求められているのです。
さらに、記述してきたように顧客がサービスを利用する際には、オンラインとオフラインの接点をシームレスに繋ぐ体験を提供することが競争力の源泉となります。企業は顧客がどこにいて、何を求めているかを理解し、そのニーズに応じて接触ポイントを増やしたり、デジタルツールの活用により顧客データを収集・分析し、個々の顧客に最適な情報やサービスを適切なタイミングで提供することで、顧客エンゲージメントを高めることによりロイヤルティを構築していきます。
顧客の期待を単に満たすだけでなく、期待を超える体験を提供するには、自社の強みを生かしたユニークな顧客体験を通じて、継続的に顧客との関係を築くことが、持続可能な成長への鍵です。
4.その上でのデジタルとオフラインの一貫した体験作成
現代の消費者は、オンラインとオフラインの境界を意識することなく、サービスを楽しめることを期待しています。記述してきたように企業はこれらの接点をシームレスに統合し、一貫した顧客体験を提供する必要があります。それをどのように実現可能なものに落とし込んでいくのでしょうか。
最初に行うべきは、自社の強みの発見と現状のサービスの整理です。
これには、顧客にとっての強みがどのように価値を提供するかを可視化し、業務の流れや顧客接点の中での弱点を特定し、改善策を議論する作業が含まれます。
プリズマティクスでは、株式会社顧客時間が作成した下記の顧客時間体験設計のフレームワークを利用しています。(奥谷孝司・岩井琢磨『世界最先端のマーケティング 〜顧客とつながる企業のチャネルシフト戦略〜』日経BP、2018より引用)
顧客時間体験設計のフレームワークに基づいて、プロセスを整理し、オンラインとオフラインの経験が顧客にとって適切に連携するように議論していきます。上記に記載した図をもとに、どこに課題があるのか、それを改善できるのか、軽減できるのか、回避できるのかを追記、議論することも大切です。
重要なのは、顧客のゴールを明確にし、そのゴールに向かう過程で顧客が直面するかもしれない障壁を理解し、それをどのようにして取り除くかを常に考えることです。このアプローチによって、企業は顧客が直面する問題を最小限に抑え、彼らが求める結果に導くことが可能になるのではないでしょうか。
最終的に、企業はオンラインとオフラインの体験を無縫に統合し、顧客がどの接点であっても一貫した品質と体験を享受できるようにすることで、競争上の優位性を築き、持続可能な成長を達成することが可能となっていくのではないでしょうか。
プリズマティクスは、そのためのお手伝いを行わせていただいております。
執筆者プロフィール
田中 由希子
デザイナー
印刷、WEB、MDMベンダーを経て2016年5月にClassmethod入社。2020年心理学専攻で大学卒業。銀座コーチングスクール卒。UX Japan Forum 2015運営委員、UXシンポジウム2016福岡運営メンバー。クラスメソッドでは、エンタメ企業アプリ、薬局アプリ、小売アプリ、ハイブランドアプリほかCX OREDER、LINE miniアプリまたは、管理画面のデザイン・体験設計に従事。
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