プリズマジャーナルTOPベイシアグループ竹永氏に聞く! 小売DXの最前線〜NRF2024にみる2024年に優先するべき課題[リテールテックJAPAN2024]
ベイシアグループ竹永氏に聞く! 小売DXの最前線〜NRF2024にみる2024年に優先するべき課題[リテールテックJAPAN2024]

ベイシアグループ竹永氏に聞く! 小売DXの最前線〜NRF2024にみる2024年に優先するべき課題[リテールテックJAPAN2024]

プリズマティクスは、2024年3月に東京ビッグサイトにて開催された「リテールテックJAPAN」EC・デジタルマーケティングゾーンに、クラスメソッドと共に出展しました。3月15日、展示ブース内に設置したセッションステージに株式会社ベイシアグループソリューションズ グループソリューション戦略室 室長、竹永 靖氏をお迎えし、「小売DXの最前線〜NRF2024にみる2024年に優先するべき課題」と題して、竹永氏が注目しているトレンドテクノロジーや注目すべきテクノロジー関連の課題についてご紹介いただきました。

1.2024年1月のNRFで出てきたキーワードは「生成AI」「リテールメディア」

「NRF」はNational Retail Federationの略で、アメリカ小売業界団体のことです。毎年1月に世界最大規模と言われるリテール業界の展示会、年次総会を開催しています。いわば「リテールテック」の“世界版”です。

「毎年注目すべきキーワードやメッセージが、キーノートにおいて多くの著名人によって語られ、それを現地で聞くことが非常に大切です。その中で今年特に話題になっていたことの1つ目は、生成AIについて。生成AIを小売業でどう活用するのかということに対して、関心が集まっていました。特に、マネジメント層がどう理解して使っていくのか、ということがよく話されている印象でした」(竹永氏)

例えば、スタッフ研修をどこまで簡単に出来るか、作業をシンプルに出来るか、少ない人数で運営するにはどうしたら良いか、といった課題に対して、生成AIをどう活用するか、という側面に特に注目が集まっていたそうです。今のアメリカは人材の流動性が激しく、またインフレによる人件費の高騰もあり、小売業界では従業員の確保そのものが難しいという状況に対応することが求められています。

またお客様に対しての生成AI活用としては、お客様がどういう動きをしているかカスタマージャーニーを描く際に、どの部分で生成AIが使えるかということを考えさせられるような内容が話題に上っていたそうです。

「あともう1つ話題に出ていたキーワードでご紹介したいのは、“リテールメディア”です。アメリカでは、Walmartが大きな規模感でやっています。日本企業の規模感とは違いますから、そのまま真似はできないと思うのですが、小売業として物を売って稼ぐっていうだけじゃなく、データを売ったり、“面”として何かを売ったり、ということについて、少し考えさせられますね」(竹永氏)

2.現実問題としての「DX」と、厳しい費用対効果の評価

竹永氏は、リテール業界におけるテクノロジーの利用や活用は、現実的な投資回収について厳しく見る時代になったと語ります。自分たちの利益にならないものには投資しない、効果ができるだけ早く出るものしかやらない、という態度をはっきり示している企業が多いと語りました。具体的なDX事例として、Walmartの小売店舗で実装されている電子棚札と、センサーカメラでの管理について紹介しました。

「今は日本でも、電子棚札タグの導入は進んできていますが、Walmartではそれだけではないんですよね。タグのところに小さいカメラをつけていて、正面の棚のタグをチェック出来るようになっている。つまり、タグ同士、お互いを見てるんです。日本の場合、従業員がタグを見て『これは棚が間違ってるな』とか確認するわけですが、それをする従業員がいない。従業員がいなくても運営出来るようにしていく、というのが非常に考えられています」(竹永氏)

「そもそもDX改革する前に、“社内になかなか人材がいない”と皆さんおっしゃいますが、近い将来その“人材”は、本当にいなくなっています。これにもっと現実感を持って頂かないといけない。よく私が管理職クラスの方にお話しするのは『小学校、中学校の時に皆さん1クラス何人、1学年何クラスでしたか』ということなのです。そろそろ定年退職するような年代だと、多いところだと当時小学校は1クラス50人、1学年10クラスあるような時代。つまり1学年で500人以上60〜700人いたのです。でも今の小学校って、1クラスは20人、1学年で100人程度です。こうお話しするとようやく、人がいなくてオペレーション出来ないということに実感を持って頂けるのです」(竹永氏)

3.「小売業が大好き、という人がテックを学び試行錯誤することで、世界は変わる」

リテールテックという展示会会場でのミニセッションであったため、竹永氏は小売業界の担当者だけでなく、小売業界へ技術提供するテクノロジー側へのメッセージも随所に織り込んでお話しされていました。そのひとつが、テクノロジーと投資効果について、提案する側にも意識してほしいという内容でした。

「小売業では今、投資効果を3〜5年という期間で考えていて、結果を求められます。そこで小売業に提案をする側の方々にも、そのストーリーを共有していただく必要があると思います。厳しい外部要因の中、3年後、5年後はこうなってなきゃいけないというビジョンをはっきり示すということが、ここに出展されている方々の使命のひとつでもある。そして当然、小売企業自身が、自分のお客様や事業が、3年後どうなっているか想像しながらその提案を聞かないといけない」(竹永氏)

「これからはデジタルと小売業のリアル、その両方が分かる人材育成が、どうしても必要になってきます。難しいことですが。小売業に自ら望んで入る人は、接客したお客様が自分からモノを買ってもらうことや、そもそも接客するのが大好きという、思いがスゴク溢れている人たちが多いのですよ。だからこそそんな人達がデジタルを勉強して、自分たちの売り方をどう変えていくか考えていくことが大事だと思うし、そういう人が増えることでベンダーさんと一緒にもっと色んなことが出来るのじゃないかと思います」(竹永氏)

セッションの最後に竹永氏は、リテールテックに来場している小売業界の方々に向けて、沢山のブースの中からパートナーとなるテクノロジー企業を探すことの難しさに理解を示しつつ、この機会に是非“自分の会社に合う”企業を探してほしいと語りかけました。

「このブースのクラスメソッドさん、プリズマティクスさんには開発をお願いしており、一緒に登壇していただいているメグリさんとは、ベイシアのスマホアプリを一番初めに作りました。この3社は特殊技術特化型のベンダーさん。テクノロジー特化という意味では、この3社はスゴイと思っています。こういう会社をどう探すかということに、小売企業の皆様はお悩みのなのだと思います。私もリテールテックに10年前から来ていますが、すご〜く、探しました。今日のこのお話が、小売企業の皆様がテクノロジー企業を探す、その一助になればと思っています」(竹永氏)

プリズマ編集部

「the engagement commerce platform for wow! experiences」をコンセプトに、小売業における顧客エンゲージメント向上の支援、戦略的OMOを実現するプラットフォーム提供を行うプリズマティクス株式会社が運営する、オウンドメディア『プリズマジャーナル』編集部。

『プリズマジャーナル』では、プリズマティクスで活躍するコンサルタントが執筆するコラム「徒然ジャーナル」、業界の先端を走り続けるプリズマティクスアドバイザーからの寄稿文など、小売業の皆様に向けて伝えたいこと、耳寄りな情報などをお送りします。

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