「LTV(顧客生涯価値)を上げましょう!」──小売業界では今、様々な場面でこのセリフが話されているかと思います。そんな時私は決まって「それは分かってるので、具体的な上げ方が知りたいんですけど……」という気持ちになってしまいます。今回は、その「LTVを上げる」切り口となり得る「習慣化」についてECに落とし込んで考えてみる、“やってみた”系記事をお送りします。
1.「LTVを上げる」なぜ習慣化する必要があるのか?
私のかつての職場はサービス業でした。サービス業においては、顧客にいかにリピートしてもらうか(離脱を防ぐか)ということは最重要指標の一つであり、「習慣化」という考え方は元々重視していました。
そんな中、オンラインサービス開発の話が持ち上がりました。オンラインという場になった場合、「習慣化」はどのように考えたらよいのでしょうか。その変化を知る為に、「インターネット環境における習慣化のトップランナー」という問いを立てました。
そこで調査を重ねた結果、トップランナーといって良いもののひとつは、スマホのソーシャルゲームではないか、と考えました。スマホのソーシャルゲームのほとんどは無料で遊び始めることが出来ます。そしていつの間にか、暇が出来たら無意識にゲームアプリを開くように習慣化されており、更にいつの間にか、課金をしてでも(or 実際に課金して)ゲームを進めたい、と思うようになっている……。
このような「オンラインにおける習慣化」や、「熱量がいつのまにか上がる理由」を、より理解したい。そうして参考になる書籍を探すうちに出会ったのが、以下で紹介する『ハマるしかけ』でした。
「実践の現場でもすぐに役立ちます」(リブセンスCTO平山宗介)
Facebook、Twitter、Instagram、Pinterestになぜユーザーは「ハマる」のか? なぜこのサービスは注目を集めたのに、あのサービスは失敗したのか? 熱心なファンがつくサービスとそうでないものにある差は何か?
デジタルでもアナログでも、すべての企画者・開発者にとっての死活問題であるこの問いに、行動心理学とデザインに裏打ちされた「フック・モデル」という明快なフレームワークと、豊富なケーススタディーで答えるのが本書です。
◎フック・モデルの4ステップ ・- トリガー(きっかけ) 人々に行動を取らすための引き金。外的トリガーと内的トリガーの2つがあり、すべてのフックの始まりとなるフェーズ。 ・- アクション(行動) アクションのしやすさと、それを行うための心理的動機の2つを用いて、特定のアクションが発生する可能性を高めるフェーズ。 ・- リワード(報酬) ユーザーを惹きつけるために欲望を生み出させるフェーズ。報酬にはトライブ(集団)、ハント(狩猟)、セルフ(自己)の3つがある。 ・- インベストメント(投資) ユーザーにわずかな仕事をさせて改善を行わせることで、新たなフック・サイクルを作り出す確率を高めるフェーズ。
2.書籍『ハマるしかけ』が教えてくれる“4つの要素”
『ハマるしかけ(フック・モデル)』で解説されている内容から、習慣化に関する箇所について、ここで少しだけご紹介だけさせていただきます。
この本では、「トリガー(きっかけ)、アクション(行動)、リワード(報酬)、インベストメント(投資)」という4つの段階を繰り返し経験することにより、ユーザーの習慣を形成するとされています。
「トリガー」はそのサービスを使用するきっかけとなるもの。Push通知やMAツールはすぐ頭に浮かびます。人の感情も重要なトリガーとして捉えている点が面白いと感じました。
「アクション」はそのサービスを利用いただく行動自体のことです。行動の源泉となる“モチベーション”を上げつつ、逆に行動の阻害となる“ハードル”を如何に下げるかが重要です。
「リワード」はアクションの為のモチベーションを強化する要素です。本書では「予測不能な報酬」が必要だと主張しており、ガチャのようなギャンブル性や、称号のような達成感、また集団への帰属意識などもここに当てはまります。
「インベストメント」はサービスの為にちょっとした時間や労力を費やすことです。人はプロダクトやサービスに労力をつぎ込むほどそれを高く評価してしまう傾向にあり、その労力をプロダクトやサービスを改善するようなものに設計することが重要です。
3.オンラインサービス立ち上げ時に“4つの要素”を当てはめてみた
私が新しく立ち上げるオンラインサービスを考えるに当たり、トリガー(きっかけ)、アクション(行動)、リワード(報酬)、インベストメント(投資)、という4つの要素の考え方は非常に役に立ちました。ユーザーのストーリー立て、組み込むべき機能の検討をする上で、頭を整理し易くし、アイデアを生み出すことに非常に大きな効果があったと実感しています。
例えば、オンラインのサービス自体はオフラインのサービスを基に整合性を取りながら検討をしていきます。「今のサービスで行動を起こすトリガー(きっかけ)にあたる部分は○○、これをオンラインに直すとトリガーになりうる要素は○○」といった具合であてはめてみて検討しました。
当時は元々展開しているオフラインにおけるサービスステップが存在していたので、そこにあてはめることで抜け漏れの防止や要不要の判断、要素の深堀りに役立てていました。
LTVは、計算式で表すと以下のようになります。
LTV(顧客生涯価値)=
平均顧客単価×粗利率×購買頻度×継続期間-(顧客の獲得コスト+維持コスト)
「習慣化」という切り口で考えると、「継続期間」の伸長はもちろん、多くの場合「購買頻度」も上がります。更には外部からの動機付けを徐々に必要としないようになっていくので「維持コスト」の低減に繋がります。また離脱が減った分、新規獲得の必要性が下がる為「獲得コスト」の低減にも繋がります。「LTVを上げなさい」と言われてお悩みの担当者の皆様が、この記事をきっかけに、LTV(顧客生涯価値)の習慣化について検討のお役に立てれば幸いです。
中西 悠太
コンサルタント
株式会社しまむらにて店舗運営と商品部を担当。2017年に株式会社カーブスジャパンに入社し、オンラインフィットネスの立ち上げに参画。サービス構想、システム開発、デジタルマーケティング、プロジェクトのローンチを経て、別の新規事業開発にジョイン。
ビジネスモデル、店舗運営や各施策開発、CRMの検討に携わり、サービスの主軸となるシステム開発はPMとしてプロジェクトをリード。その他 施策開発、物件開拓、店舗レイアウト、人材育成など複数業務のリードを経験し、2023年11月クラスメソッドに参画。
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