プリズマジャーナルTOP「顧客価値」から考える企業と顧客のつながり方2023 〜ネットショップ担当者フォーラム2023秋 登壇レポート

「顧客価値」から考える企業と顧客のつながり方2023 〜ネットショップ担当者フォーラム2023秋 登壇レポート

Web担当者の「参考になる」「役に立つ」情報をお届けするセミナーイベント『ネットショップ担当者フォーラム 2023 秋』が、2023年11月21~22日の2日間にわたり開催されました。4年ぶりの開催となる本イベントは、虎ノ門ヒルズフォーラムで行われ、デジタル戦略、ファンベース、OMO戦略など、ECビジネスの最新トレンドやソリューションが集結。

プリズマティクスからはCEO濱野が、DAY1「“顧客価値”から考える企業と顧客のつながり方2023」に、株式会社顧客時間 チーフプロデューサーの風間公太氏と共に登壇いたしました。多くのネットショップ担当の方々がメモを取りながら熱心に参加され、会場はほぼ満席となっておりました。本記事では、このセッション内容についてレポートします。

1.ネットショップ担当者が「顧客価値」を考える時代

今回登壇したイベントは「ネットショップ担当者」フォーラム。つまり、小売業界でECを担当する方々へ向けてのメッセージとなります。本セッションは「顧客価値」をテーマにスタートしましたが、プリズマティクス濱野から「Web担当者、EC担当者が、何故“顧客価値”について考えなければならないのか、という疑問もあるかと思われます」という発言からスタート。何故、ネットショップ担当者へ向けて“顧客価値”をテーマにするのか、ということが語られました。

「ECとは、モノが売れていくだけの単純な場所でしょうか。我々はECも実店舗と同じように、顧客とコミュニケーションする場所なのではないかと考えています。実際に、小売店舗でアプリを入れてもらい、そこからECへの誘導をすると購買率が高い、ECと店舗は実はとても繋がりが強いものだというのは、現場の皆様の実感としてあるのではないでしょうか。またお客様から見て繋がり続ける価値のあるコンテンツをWebやアプリで提供していくことは、アクティブ率のみならずEC売上にも直結していきます。そこで今改めて、顧客価値ということを考えて頂きたいと思います」(濱野)

顧客時間の風間氏からは、WEB上での顧客価値を実現するために、デジタル化の背景への理解が非常に重要であることが語られました。イノベーションが世の中に実装されるには、40年位の時間がかかると言われています。日本でインターネットが普及し始めたのは2000年位からですので、2040年がひとつの目安となります。その中間地点である2020年にコロナ禍が到来し、あらゆることのデジタル化が加速。これは日本に限らず世界中で起こっている変化で、これによりビジネスモデルや事業システムの変化にまで影響を及ぼしています。

「小売りの世界でもオンラインとオフラインのチャネルシフト、融合が進み、お客様との接点も変わってきました。コロナ禍以前の小売業界は“購買タイミング”に重きを置き、お客様に買ってもらう為の宣伝に力を入れていました。一方で、お客様目線では、商品を買うことはゴールではなく、どう使うかが非常に大事です。このお客様の“使用時間”に、企業がどう寄り添っていくのかを考えていくことが大切です。アプリやECは、お客様の購入後に繋がれるチャネルであり、デジタル時代になったからこそ寄り添えるようになった時間である、とも言えます」(風間)

顧客に対してどのような価値を提供していけばいいのか。風間氏は「機能価値」「体験価値」「つながっている価値」という3段階を明確に定め、思考を深める方法を紹介。これにより他社との差別化、お客様に自社企業を選んでもらう理由に繋がっていくことを説明しました。本セッションでは、顧客時間が支援した企業例や視察した企業等を例に出し、各社が具体的な「顧客価値」を考える際のヒントを提供しました。

2.山の保全活動支援にポイントを利用する、YAMAPのポイントプログラム

「YAMAP(ヤマップ)」は、日本の登山人口約600万人の半数以上がダウンロードしているといわれる、登山地図アプリです。山では携帯電話の電波が届かずインターネットは繋がらなくなってしまうことも多く、多くの地図アプリは利用できなくなってしまいます。「YAMAP」では事前にオリジナルのオフラインマップをダウンロードしておき、全地球測位システム(GPS)を組み合わせることで、登山での遭難や道迷いに対応出来るよう、サービスを提供してきました。登山日記サービスの提供等により、登山に関連するユーザー同士の情報共有やコミュニティ活動が盛んなのも特徴的です。

ヤマップは2021年から「DOMO」というロイヤルティプログラムをスタートしました。一般的なポイントプログラムでは、ECの購買額に応じてポイントが貰え、また価格からの値引きで利用出来るものがほとんどです。ところがこのロイヤルティプログラムでは、このような“値引き的”な利用が全く出来ません。ユーザー同士での「イイね」「ありがとう」の気持ちを贈り合うことに使ったり、植林や登山道整備等、山の保全活動の支援にポイントを使うことが出来る、というプログラムになっています。

「ヤマップがお持ちの『私たちが大事にしているのは山なのだ』という意識を、サービスを利用しているユーザーとも共有するようなポイントプログラムとなっています。こういうことは、やりたくてもなかなか出来ることではない、ユニークなプログラムになっていると思います。『人と山を繋ぐ』という価値を実現するためにどうしたらいいのか、考え抜かれたこのプログラムを見ることで理解できることも多いので、是非体験して頂きたいと思います」(風間)

3.顧客との信頼関係を強化する、ウォルマートの配達サービス

アメリカの小売大手Walmart(ウォルマート)は2022年、生鮮食品等利用者の自宅の室内まで届けるサービス「InHome Delivery(インホーム・デリバリー)」の対象地域を拡大すると発表しました。2019年から一部の地域を対象にテストを行っていましたが、コロナ禍まっただ中というタイミングで主要都市に広げるとして注目を集めました。配達するスタッフは入る度ごとにナンバーが変わるスマートロックを用いて鍵を開け、常にゴーグルを付け、何をしているのか外部からトラッキング出来る状況で業務を行います。

ウォルマートは2020年に有料会員制度「ウォルマートプラス(Walmart+)」を設けており、約100ドルの年会費を支払えばネットスーパーで購入した商品の当日配送サービスを無制限で利用出来る等のサービスを受けられていました。ここに更にオプション料金を支払うことで、「InHome Delivery」を利用することが出来ます。

「特別斬新なアイディアではありませんが、赤の他人が家の中に入ってくるというこのサービスは、本来ある程度の信頼関係がないと成り立たないところ、ウォルマートはテクノロジーを利用してこれを実現しています。ウォールマートといえば沢山の商品があって安い、という“機能価値”の部分が一番イメージされるところだと思いますが、このようなサービスに挑戦することで、お客様との信頼を深めることにも成功しています。それらが複合的に組み合わさって、業績も上がっているという状況があるのではないでしょうか」(風間)

4.ロイヤルティの高いお客様を意識した、ユナイテッドアローズ新会員プログラム

ユナイテッドアローズは2023年8月、会員向けの新プログラム「UAクラブ」の展開を開始しました。店舗やオンラインストアの購買時に「UAマイル」が貯まります。また購買時だけでなく、アプリ利用やお気に入り登録など、様々なアクションでマイルを獲得できる「アクションマイル」があるのが特徴となっています。貯まったマイルは「UAクーポン」に交換し、次のお買い物に利用できます。その他、獲得マイル数に応じた5段階のステージを設定しており、ステージに応じた様々な特典やサービスが設定されています。

「元々ユナイテッドアローズさんは一般的なポイントプログラムをされていましたが、今回の新サービスではポイント優遇も設定しつつ、高ステージ層には国内送料無料やお直し値引き特典を設定されています。ロイヤルティの高いお客様であればあるほど『ポイントがあるから買い物をしよう』となるわけではない、というのは、これまで小売企業の支援をする中で私自身、感じているところです。このような方々が求めているのはボーナスポイントよりも、自分だけのサービスや体験。これを体現したプログラムをつくられているなと感じています」(風間)

イベントでは他にも最新の注目すべき企業例を示しながら、今この時代における「顧客価値」とは何か考えを深めました。最後に濱野から「実際に企業が値引きに限らないポイントプログラムを実施したい場合、単純にアプリの話だけに留まらず、課題は非常に多岐にわたります。たくさんあるチャネルをどう繋ぐのか、ID連携をどうしていくのか、基幹システムとの繋ぎ方、分析も出来なければ……等々、色々な課題が出てくると思います。弊社ではポイント管理サービス『fannaly』、またAPIプラットフォーム『prismatix』を提供していますので、お悩みのことがあればご相談ください」と案内があり、セッションは終了となりました。

プリズマ編集部

「the engagement commerce platform for wow! experiences」をコンセプトに、小売業における顧客エンゲージメント向上の支援、戦略的OMOを実現するプラットフォーム提供を行うプリズマティクス株式会社が運営する、オウンドメディア『プリズマジャーナル』編集部。

『プリズマジャーナル』では、プリズマティクスで活躍するコンサルタントが執筆するコラム「徒然ジャーナル」、業界の先端を走り続けるプリズマティクスアドバイザーからの寄稿文など、小売業の皆様に向けて伝えたいこと、耳寄りな情報などをお送りします。

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