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“永遠の課題”商品マスタ、外部サービス利用で享受できるメリットの数々

“永遠の課題”商品マスタ、外部サービス利用で享受できるメリットの数々

# 在庫管理 # 商品マスタ # アパレル業界 # オムニチャネル

モノを売る企業(小売業)にとって、商品マスタの整備や適正化は“永遠の課題”です。時間もコストも要する作業ですが、今でも多くの企業は管理表等へ手入力で管理しているのではないでしょうか。「クラウドサービス」「APIサービス」という言葉を見聞きして興味はあっても、実際に自社システム上で何が出来るのか、具体的なメリットを知る機会はなかなか無く、導入に踏み切れない企業を多く見てきました。

そこで今回は「在庫管理」や「商品マスタ管理」にフォーカスし、私が過去在籍していたアパレル業界での業務経験を例に挙げながら、これら外部サービス導入に一歩を踏み出す“具体的なメリット”についてお話しさせていただきます。

1.業界実務に特化したクラウドサービス利用で、大幅に作業効率アップ

商品マスタの管理と設計は、手間もコストもかかるため後回しになりがちです。データ分析と在庫管理の精度を上げるためにはとても重要ですが、「分かってはいるけど手が回らない」という方が多いのではないでしょうか。

エクセルファイルで商品リストを作り管理している等、手動での管理を求められる状況では、膨大な時間とコストをかけてまで商品1つ1つに詳細情報を設定することが出来ない、ということにならざるを得ません。手動での登録作業は商品マスタに入力ミスが出やすく、商品マスタの不備は物流の入出庫遅延や、売上機会ロスの発生も招いてしまいます。商品マスタの適切な管理運用は、サプライチェーン全体に影響する重要なものです

ECサイトが今ほど利用されていなかった頃、多くの小売企業では実店舗の在庫管理や物流向けの商品マスタで商品管理を行い、EC担当者はEC用の商品マスタを別途作成して運用していたと思います。私もアパレル業界時代に、実際にそのような運用での業務を行っていたことがありますが、商品マスタのメンテナンスを定期的に行う必要があり、かなりの作業負荷が発生していました。また店舗とECの商品マスタが別に存在していることから、情報分析のギャップや在庫連携でエラーが生じる等、弊害とも言える現象に悩まされました。

ECを利用するお客様が増えてくると、お客様自身での商品検索がしやすいように、素材、カラー、アイテムカテゴリー、属性等を細かく整理する必要が出てきます。店舗とEC、それぞれ別の限定商品や施策が増てくると、販路や商品属性のカテゴリー等、商品情報以外の情報も設定する必要が出て来たりと、管理はどんどん複雑になってしまう状況があると思います。

これらの課題を解決する為に便利なツールとして、アパレル業界の実務ベースに特化したクラウドサービスがあることを知り、当時そのサービス導入を推進しました。受発注業務管理、商品の仕様書、JANコードの附番管理、商品マスタ作成等、商品情報を総合的に管理できるようになり、作業効率が大幅に改善しました。

リソースが確保できるようになれば、本来力を注ぐべき企画立案や分析業務の強化を推し進めることが出来るようになります。

2.商品マスタシステム導入でセールス強化、発注精度アップも

アパレル企業は季節商品(春夏シーズン、秋冬シーズン)の割合が多い為、他業界の商品と比較すると販売期間が短いのが特徴です。また取り扱うアイテムについても洋服だけでなく、雑貨、アクセサリー、シューズ等、多岐にわたります。商品の販売開始後、販売動向を細かく分析するためには、商品マスタも細かく分類して設計しなければ──そう思いながらも、商品構成や企画を検討することに時間を取られ、最低限の商品情報を登録して済ませてしまうことは、よくあることなのではないでしょうか。

またシーズン入れ替え以外にも展示会等の際に、商品マスタ登録業務は発生します。私は以前、展示会を年に4回開催する企業に在籍していましたが、大まかな流れは次のようなものでした。

まずMD計画(展開商品構成)を組み立て、企画チームとデザイン検討し仕様を決め、サンプルアップします。この段階で大まかな仮の商品マスタを作成し、展示会を迎えます。展示会ではモデルや業界関係者、お客様の感想や受注状況を集計、最終的に生産に入る品番とDROP(生産中止)する品番を、検討会で確定させます。この決定を踏まえ、再度商品マスタの変更、修正をかけます。この一連の流れを約3ヶ月毎に繰り返します。

ひとつの展示会が終わっても「終わった…!」と思う間もなく、また同じ流れで翌々シーズンのMD計画の組み立てを開始します。生産のリードタイムが4〜6ヶ月ある為、つい昨日までは春夏シーズンの構成で頭をフル回転させていたのに、翌日からは秋冬シーズンに向けて頭を切り替えていかなければなりません。

スワッチ作成を始め、展示会にまつわる大変なことはいろいろあったのですが、そのうちの一つが商品マスタの作成でした。当時はまだシステム化されておらず、展示会直前は苦労して深夜まで作業していたのを思い出します。展示会後の各種データの集計作業もアナログに“人力”でしていたので、作業時間をかなり費やした上にミスも多かったように思います。

このような展示会の受発注業務も、デジタル化した受発注サービスと連携することで作業の効率化をはかることが出来ます。それだけでなく、リアルタイムで受注情報を確認出来るようになるため、展示会開催中のセールス強化や生産計画の修正等も出来るようになり、最終的に発注精度の向上にも繋がるというメリットもあります。

3.本質的な業務に取り組む時間を作るため、作業時間の軽減を

ビジネスの生産性を高められるデジタル化サービスは色々種類がありますが、今回は「在庫管理」や「商品マスタ管理」にフォーカスしてメリットをご紹介してきました。

現在は、半自動で商品マスタを生成するサービスや、“百貨店向け” “ECモール向け”等の専門領域に特化した商品マスタ作成管理サービス等、様々なタイプのAPIサービスやクラウドサービスがあります。今後はAIを活用した商品マスタ管理も普及していくでしょう。それぞれ自社事業に合ったサービスを見つけていただければと思います。

商品マスタの設計と管理は、データ分析と在庫管理の精度向上に不可欠であるのはもちろん、今の時代に求められているOMOやオムニチャネル戦略を実現するためにも避けて通れない道となっています。

本記事が今まさにこれらの課題に向き合っている、業務担当者の方々の参考になれば幸いです。

西田 信義

執筆者プロフィール

西田 信義
コンサルタント

2002年FREE’S INTERNATIONAL(現TSIホールディングス)に入社。店舗運営管理、営業MDを担当。Barbieなど海外ブランドの営業部長や国内ブランドの事業責任者を歴任。株式会社三陽商会にて新規事業開発、株式会社マッシュスタイルラボにてMD担当部長など事業推進に従事。ブランドディレクション、製販計画の策定など中心に大手アパレルにてSCMを担う。D2Cのベンチャー企業、株式会社TOKIMEKU JAPANのCOOを経て、2023年9月クラスメソッドに参画。

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