オムニチャネル、継続的な進化の為の“3つの視点” 〜顧客に寄り添ったオムニチャネル実現の為に〜
オムニチャネルは一度出来たら終わり、ではありません。世の中のデジタルやデバイス、市場やお客様の変化に応じて、進化する必要があります。
これまでオムニチャネルの概念や国内外の事例、実際にオムニチャネルを社内で構築・推進する際に意識すべき事、またその実務について触れて来ました。今回はこれらを継続的に進化させるために必要な「3つの視点」について述べたいと思います。
1.社内教育は全階層で行う
新入社員研修や若手社員向け研修は多くの企業で行われていると思いますが、オムニチャネルは経営戦略そのものなので、経営者や幹部も継続的な教育を受ける必要があります。そうしなければ世の中の変化についていく事が出来ません。
いくら現場のメンバーが学んでいて社内で提案をしても、経営陣が理解出来ないのであれば実現されません。経営陣は自分たちの経験に基づいて確実な経営を行いたいと思っています。一方で現場はお客様の要望や市場の変化を直接感じているので、変化しなければならないと考えます。
双方とも会社を良くしよう、成長させ続けようと思っているのですが、手段ですれ違っているのです。こうした対立を起こさない為にも、同じ判断基準を持てるような教育が必要なのです。
2.社外との交流を拡大する
社内でいくら話していても、同じ環境で働くメンバー同士ですから、なかなか新しい視点は生まれません。だからこそ積極的に、勉強会やイベント等で社外との交流を増やす必要があります。
重要なのは、様々な社外の話を聞きながら、常に自社の取組に置き換えて考える事です。役に立つ話も立たない話も決して無駄にはなりません。セミナーを受講する前に、良いか悪いか判断することは出来ません。話を聴いたうえで、自社に置き換えて役に立つかどうか考えて初めて、“自社にとって”良い悪い、の判断が出来るのです。役に立つものだけ聴きに行く、というのは無理な話です。
コンサルタントや業務委託など、社外メンバーに社内で働いてもらえる時には、委託した案件の話だけではなく、積極的に客観的な意見を発信してもらうのも重要な事です。自社が外部からどう見えるのか常に意識する事で、お客様との間のギャップも見つける事が出来ます。そのギャップを埋めることを課題として、解決し続けることで、進化し続ける事が出来るのです。
3.常に「顧客視点(CX)」「従業員体験(EX)」で考える
“オムニチャネル”というと、お客様向けの施策を中心に考えがちですが、社内の業務負荷や仕組みの改善も同時に考えていかなければいけません。業務が増え続けてしまうことで社内のモチベーションが下がり、結果としてお客様の満足度も下がっていきます。
新しい事を始める時ほど、前回お話した社内の業務フローできちんと課題を見つけて改善案を考えておく事が大事です。現場に近くなるほど新しい変化を嫌がるのは、お客様の視点(CX)で考えたら必要な事はわかっていても、自分たちの業務負荷が増え続ければ、継続的にサービス提供出来なくなることがよくわかっているからです。
だからこそ現場を「ラクにする」事を約束した上で新しい取組を行う事が必要なのです。
4.連載「顧客に寄り添ったオムニチャネル実現の為に」あとがき
これまで約1年間に渡ってオムニチャネルについての連載をしてきました。読んでくださった皆様、ありがとうございました。
私はこれまで様々な企業の社員として、また外部のコンサルタントとして、数十社のオムニチャネル化に取り組んで来ました。そこで非常に重要なキーワードが「評価軸」「作業負荷の軽減」となることは、これまでにお伝えした通りです。
顧客視点で考えてオムニチャネルを進化させていくことはもちろん重要なことですが、その裏側できちんと業務整理がなされていなければ、現場は協力したくても難しくなり、オムニチャネル化そのものが頓挫してしまいます。
数値化・定量化・見える化をしながら、社内外の仲間を増やし、経営陣をも巻き込むことで前進することが出来る。これは、オムニチャネル化に限ったことではありません。是非チャレンジしていただければと思います。
執筆者プロフィール
逸⾒ 光次郎 Adviser(アドバイザー)
三省堂書店店舗勤務、ソフトバンク・イー・コマースのちセブンネットショッピング立ち上げ、アマゾンジャパンBooksMD、イオンにてネットスーパー立ち上げとデジタルビジネス戦略担当、カメラのキタムラ執行役員EC事業部長としてオムニチャネル化推進を経て独立。
株式会社CaTラボ代表 オムニチャネルコンサルタント。日本オムニチャネル協会理事、防音専門ピアリビング取締役等を兼務。
店舗とネットを融合し、顧客満足を高める買い物の楽しさを追求し続けている。
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