プリズマジャーナルTOP「お客様に最高の体験を届ける」を実現するためのデジタル戦略 〜7/19開催オンラインセミナーレポート
「お客様に最高の体験を届ける」を実現するためのデジタル戦略 〜7/19開催オンラインセミナーレポート

「お客様に最高の体験を届ける」を実現するためのデジタル戦略 〜7/19開催オンラインセミナーレポート

プリズマティクスは2023年7月19日、小売企業向けウェビナー、三越伊勢丹、ジンズ から学ぶ「現場起点のデジタル戦略と見えてきた課題」を開催し、大変多くの皆さまにご参加、ご好評を頂きました。

本記事では、「『お客様に最高の体験を届ける』を実現するためのデジタル戦略」と題した、株式会社ジンズホールディングス 執行役員でテクノロジー戦略管掌の松田真一郎氏の登壇内容をご紹介致します。また本セミナーの内容について更にご興味がある方へ向け、動画アーカイブの配信もご用意しております。是非ご覧ください。

共催:プリズマティクス株式会社、クラスメソッド株式会社

1. 自分たちで“あたらしいあたりまえ”をつくる、既存の文化をデジタルにも

松田氏はアンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に21年間勤め、製造業・小売業の企業向けシステムの導入企画・開発・保守まで、幅広く携わってきた経験を持ちます。エンジニアとしてシステム設計からアプリケーション開発、納品後の運用保守まで担当する中で、「プロダクトやサービスに最後まで責任を持つ立場で仕事をしたい」と思うようになり、事業会社である株式会社ジンズホールディングスにジョインしたそうです。

松田氏は現在、執行役員CIOとしてグローバルのグループ会社全体のシステム企画から運用保守の全てを担当しています。松田氏はデジタル戦略のキーコンセプトとして、最高の顧客体験の実現を中心にした「デジタルは手段、動かすのは私だ」というワードに据えました。このコンセプトには、「デジタルはツールであり、それを活用するのは自分たちなんだ」というメッセージが強く込められています。

ジンズの企業ビジョンは「マグニファイ・ライフ」。人々の生活を豊かにしていくというビジョンがあり、その中には「“あたらしいあたりまえ”を自ら切り開いていく」という内容が含まれています。自分たちでゼロからつくりだしていくことを良しとする、これまで培ってきた社内文化をキーワードとして散りばめているそうです。

「実は、入社当初はIT部門とビジネス部門に距離があったんです。ちょっとでもデータ分析っぽいこと、ITシステムっぽいことがあると『これは情シスの仕事ですよね』とビジネス側はIT側に投げてしまう……そんな感じでした。このコンセプトを設定することを通じて、そこのギャップを出来るだけ小さくしたかったんです」と、松田氏は当時の様子を振り返りました。

2.1スクラムチームを社内に置き、パートナーシップも活用した“内製化”

松田氏は、入社当初十数人だったIT部員を約40人になるまで採用を進めてきました。これまではソリューション選定からパートナーベンダーに依頼し、中身について社内の人間は詳しくわからないという状態でしたが、IT部門の体制が整ってきたことで、完全内製ではないものの既存のPOSシステムとの連携等も自分たちで考えて組み立てていけるようになってきたと言います。

これを受け、モデレーターの濱野から「“内製”の在り方もいろいろあると思うんですが、現在位置と、どこまでを目指しているかの目標を教えてもらえますか?」という問いかけがありました。すると、松田氏からは「世間では内製化がトレンドだが、ジンズとしては100%の内製化は考えていない」との回答がありました。

「最低限のラインとして、パートナーの実力を判断するためには、自社の中でも“どう作るのか”を理解しておかないといけないと考えています。そこで、1スクラムチームは内製出来るようにリソースを持ち、2チーム目、3チーム目は外部パートナーチームや混成チームとする形を目指しています」(松田氏)

ジンズが最近店頭にリリースした新しいソリューションとして、自分のメガネをかけたままバーチャル試着が可能な「JINS BRAIN」、スマホから待ち時間を確認できる「スマート受付」、メガネの受け取りを待ち時間なくできる「PICK UP LOCKER」があります。新規の企画を考える時は、会議室の中だけで考えるのではなく、店舗に視察に行くことをメンバーに推奨しているそうです。

「“視察”といっても、ただ見て来るだけでは無く、ちゃんと制服を着て、接客して、お客さまにメガネを販売して、自分たちの作ったもの(システム)が想定通り使われているかどうかを確認して、フィードバックして欲しいと伝えています。私自身も、先週は2店舗で実際に制服を着て販売スタッフをしたんですよ」(松田氏)

3.“メガネ”という商品の購買サイクルと、“求められる”顧客体験とは

話題は顧客との接点作りに移ります。ジンズの主力商品はメガネですので、一顧客あたりの購買サイクルは2〜3年となります。そこで、購買から2〜3年経ったタイミングで、いかにジンズを想起してもらうかが重要なテーマであると松田氏は言います。今年新たにクリエイティブディレクターをジンズ迎え、顧客体験に関して今改めて検討している最中とのことです。

「新しいアイディアを出すだけではなく、新しく出たアイディアを『やりたい』となった時、すぐに実現できる体制づくりが必要です。せっかく良いアイディアでも『2〜3年後じゃないと実現できない』となってしまうと、機を逸してしまうことになりかねません。それをするために、意思決定する体制、マインドセットを含め、データ基盤の整備を進めなければならないと考えています」(松田氏)

新しい顧客体験の創出だけでなく、既存の取り組みも忘れてはいけないと松田氏は語ります。メガネという商品の特性上、お客様が欲しいというタイミングでメガネを提供することが最も重要で、それが出来ないと顧客体験を損なうことに直結してしまいます。そこで求められるのは表面的なDXや最新技術を用いたサービスでは無く、メガネのサプライチェーンをしっかり作っていくという地道なことです。

「これらのことは“顧客体験”という言葉からは程遠いこと、と感じるかもしれませんが、ビジネス上では大事なことです。プロダクトをしっかり揃えることと合わせて、“メガネ屋”としては視力測定やフィッティング等の店頭での専門サービスの質を底上げしていくことも顧客体験としては重要な点です。『商品は良かったけど、いまいち納得のいく説明をしてもらえなかった』といった体験が無いように改善していく必要があります」(松田氏)

4.「システム基盤」と「顧客体験」を、経営の立場から変革するチャレンジ

ここでモデレーターの濱野から「システム基盤の整備と顧客体験、この2つは直接結びつくことなのかと問われると、悩ましいところもあると思います。コンサル会社から事業会社に転じた身として、この辺りはどう考え、説明されていますか」との問いかけがあり、松田氏からは「そうですね。経営陣からは、システム基盤へ時間とお金をかける投資効果について、必要性を問われることは多々あります」との答えがありました。

「そういう場合にはまず、状況を車に例え『今のシステムは車検が切れている状態のようなものです。壊れたらすぐには直せませんし、高速道路で止まってしまったら何も出来ない状態ですよ』とリスクについて説明しています。また一方で前向きな話として、『次に新しい体験をお客さんに提供しましょうとなった時、1年後にしか出来ないのか、2週間後にリリース出来る基盤にしておくか』ということもお伝えしています」(松田氏)

また顧客に向けた新たな取り組みという側面だけで無く、社内メンバーのモチベーション維持のためにも新しい技術にチャレンジしていくことを推奨しているそうです。「“あたらしいあたりまえ”を切り開いていく」という企業文化を、顧客だけでなく従業員にも提供していきたいと、松田氏は今後の展望を語りました。

本セミナーの様子は、プリズマティクスの「動画閲覧」にて全編を無料アーカイブ動画として配信中です。松田氏の取り組みにまつわる具体的なエピソードや、詳しいシステム構成図についても語られています。下記動画閲覧ページよりお申し込み頂き、ご覧ください。

プリズマティクスは今後もデジタルを活用した顧客接点の取り組みやファン育成などをテーマに、課題解決となるようなヒントやアイデアをご紹介していきます。

プリズマ編集部

「the engagement commerce platform for wow! experiences」をコンセプトに、小売業における顧客エンゲージメント向上の支援、戦略的OMOを実現するプラットフォーム提供を行うプリズマティクス株式会社が運営する、オウンドメディア『プリズマジャーナル』編集部。

『プリズマジャーナル』では、プリズマティクスで活躍するコンサルタントが執筆するコラム「徒然ジャーナル」、業界の先端を走り続けるプリズマティクスアドバイザーからの寄稿文など、小売業の皆様に向けて伝えたいこと、耳寄りな情報などをお送りします。

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