「コミュニケーションリテイラーを目指す」エイチ・ツー・オーリテイリングのデジタルコミュニケーション 〜6/7開催オンラインセミナーレポート
プリズマティクスは2023年6月7日、小売業・外食業向けウェビナー、グッデイ、吉野家、エイチ・ツー・オー リテイリングに訊く 「顧客とつながるデジタルコミュニケーション、ファン育成の鍵とは」を開催し、大変多くの皆さまにご参加、ご好評を頂きました。
本記事では、プリズマティクス株式会社CEOの濱野をモデレーターに、エイチ・ツー・オーリテイリング株式会社の小山徹氏をお迎えしたセッション「コミュニケーションリテイラーを目指す」の内容をご紹介致します。
本セミナーの内容について更にご興味がある方へ向け、動画アーカイブの配信もご用意しております。是非ご覧ください。
共催:メグリ株式会社、クラスメソッド株式会社、プリズマティクス株式会社
目次
1.コロナ禍を機に打ち出した、未来への方向性「コミュニケーションリテイラー」 2.約3万人の従業員が「お客様」と向き合うための基盤づくりをスタート 3.表面的なDX推進では、業務トランスフォーメーションにはつながらない 4.「どうやったらお客様に選んでもらえるのか」を基点とした発想で新サービスリリース1.コロナ禍を機に打ち出した、未来への方向性「コミュニケーションリテイラー」
エイチ・ツー・オー リテイリング(以下、H2O リテイリング)は、関西エリアを中心に、阪急百貨店、阪神百貨店をはじめ、食品スーパー、ショッピングセンター、その他ホテル、専門店など多種多様な事業を展開する生活総合産業グループです。小山氏は流通業界を中心に数多くのコンサルティング経験をお持ちで、2021年から同社の執行役員、IT・デジタル推進室長に就任されました。
まずモデレーターの濱野から、H2O リテイリングが目指している「コミュニケーションリテイラー」という言葉の意味、そしてこれまでの歩みと未来展望を伺いました。小山氏からは「これはとても大きなテーマで、とても難しい部分です」との前置きがあった上で、2021年に発表した中期経営計画についてご説明いただきました。
コロナ禍という小売業にとっては極めて重い事態を受け、2019年に発表した中期経営計画を一旦ストップし改めて発表したのが、この2021年の中期経営計画です。
「これまでは目の前のお客様にどう対応するかということを日々やっていたわけですが、そもそも人を集めてはいけない、店舗という“リアルの場”を生かせない状況となった時に『これまでのやり方はもう通用しない』『デジタル化するしかない』と、新しいビジネス構造に向けての検討を始めたんです。そして新しく発表された したグループとしての方針に、『コミュニケーションリテイラー』を目指していくという展望が組み込まれました」(小山氏)
2.約3万人の従業員が「お客様」と向き合うための基盤づくりをスタート
このようにH2Oリテイリングは、これまでの「モノ」「店舗」中心のビジネスモデルから、「ヒト」中心に考えるビジネスモデルに転換していかなければならないとした上で、2021年の新しい中期経営計画では「2030年を目標に新しいコミュニケーションをベースとした新事業モデルに挑戦する」ということを目標に盛り込みました。
「お客様」を基点に考えた場合、情報発信やコミュニケーションするその相手は、店頭にいらっしゃる方や関西圏の方という枠を大きく超える可能性が出てきます。
またH2O リテイリングには約1万人のグループ従業員がいますが、パート・アルバイトを含めるとその数は2万8千人と、3倍にのぼります。このパート・アルバイトスタッフもお客様との大事な接点であることを改めて認識し、百貨店の店頭にいらっしゃるお取引先様の販売スタッフも含めてお客様の情報についても連携していかなければならないと考えています。
「この中期経営計画で描かれた新たな取り組みとは、つまりこれまでに“無かった”ことでして、ある意味でこれらを実現するために、3年間で260億円というIT・デジタル投資を行い 『コミュニケーションリテイラー』となるべく基盤整備に取り組んでおり、今年がちょうど3年目となります」(小山氏)
3.表面的なDX推進では、業務トランスフォーメーションにはつながらない
顧客向けの基盤整備の具体的な取り組みとしては中期経営計画に「グループ顧客データ基盤の構築」「グループEC/OMO基盤の構築」「既存プラットフォーム強化によるOMO化試行」という3点が挙げられています。
セミナー開催時、コロナ禍は収束を見せ始めてはいたものの、「リアル店舗の優位性や生活様式が、コロナ禍前と全く同じように戻ることはありません」と小山氏は語ります。コミュニケーションリテイラーやOMOに向けた取り組みも引き続き進めていかなければなりません。一方、店舗スタッフは、お客様に対して“これまで通り”も求められます。
「どれだけ良い方針を示しても、これまでの業務の上にポンと新しい業務を追加することは、実際には不可能です。現行業務と新規デジタルの業務の両方やるためには、まず現行業務をデジタル化して手間を減らさなければいけません。そして最終的には基幹システムにも手を入れないといけないということを意味します。表面的なところだけ例えばお客様向けのフロント部分だけDX推進しても、業務全体のトランスフォーメーションにはなりません」(小山氏)
あらゆるサービスを顧客基点で考えていく、そのためのデジタルプラットフォームを準備する。そのためのシステム基盤(バックエンド)とフロントのシステムを新たにつくり、業務フローを回していくこと。これは半年や1年という短期間のリフト&シフトで出来ることではありません。小山氏は「この2年間、業務に対する意識改革を社内に浸透させることに、最も力を注いできたのではないかと思います」と語りました。
4.「どうやったらお客様に選んでもらえるのか」を基点とした発想で新サービスリリース
モデレーター濱野が「百貨店にとっての“顔の見えるお客様”と言えば、これまでは自社カード利用者のイメージが強くありますね」とコメントすると、小山さんは「そうですね。でもお客様から見れば、カードはあくまで、決済手段の一つ。今は複数のカードを使い分ける方も多くいらっしゃいます」と言い、今後は売る側の都合ではなくお客様基点、お客様の希望される方法でつながるという発想にこだわっていきたい、という強い意気込みを語りました。
「お客様がどう考えておられるのか、お客様にどうやったら我々を選んでいただけるのか。このことを議論するは、社内で考えているだけでは不十分と考えて、我々は今まであまり第三者やコンサルを入れない会社ではあったのですが、今は外部支援も頂いて議論を重ねています。そして議論をすぐに実行出来るようにするため、そのためのデジタルプラットフォームを用意していかなければならない。そういう思いで今基盤をつくっています」(小山氏)
これらの取り組みが結実したものとして、店頭の商品を来店せずに購入(決済)できるリモートショッピングサービス「Remo Order(リモオーダー)」のビジネス特許取得、「阪急メンズアプリ」のリリースやスーパーマーケット阪急オアシスではLINEミニアプリでのコミュニケーションを進めている、等の紹介がありました。またリアル店舗での変化として、阪急うめだ本店にリユース、リペアのショップが入ったことについて、お客様のご要望やサステナビリティへの対応と説明がありました。
「お客様中心に考えたとき、我々が揃えるべきことは何だろう」と考え続け、少しずつ選択出来る手段を増やしているH2Oリテイリング。新しいもの好きで目と舌の肥えた関西圏の顧客と、これからどのようなコラボレーションが進んでいくのでしょうか。リアル店舗の運営という強みを更に生かしつつ、デジタルでの接点を増やしていくと語るその内容に、益々注目が集まります。
本セミナーの様子は、プリズマティクスの「動画閲覧」にて全編を無料アーカイブ動画として配信中です。下記動画閲覧ページよりお申し込み頂き、ご覧ください。プリズマティクスは今後もデジタルを活用した顧客接点の取り組みやファン育成などをテーマに、課題解決となるようなヒントやアイデアをご紹介していきます。ご注目ください。
「the engagement commerce platform for wow! experiences」をコンセプトに、小売業における顧客エンゲージメント向上の支援、戦略的OMOを実現するプラットフォーム提供を行うプリズマティクス株式会社が運営する、オウンドメディア『プリズマジャーナル』編集部。
『プリズマジャーナル』では、プリズマティクスで活躍するコンサルタントが執筆するコラム「徒然ジャーナル」、業界の先端を走り続けるプリズマティクスアドバイザーからの寄稿文など、小売業の皆様に向けて伝えたいこと、耳寄りな情報などをお送りします。
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