プリズマジャーナルTOP自社に最適なポイント・会員制度とは? 企業と顧客との関係性から構築する重要性 [今月の注目ニュース]

自社に最適なポイント・会員制度とは? 企業と顧客との関係性から構築する重要性 [今月の注目ニュース]

「ポイ活」という言葉が話題になり、多くの小売や外食企業等でのポイント・会員制度の導入が急速に進んでいます。一方、これらの取り組みにより利益が出ている企業、ポイントプログラム導入そのものに悩まされている企業等、各社の取り組み状況は様々です。ポイント・会員制度の設計において重要なことは何でしょうか。

小売り×DXの気になるニュースを、リテール業界の現場経験が豊富なプリズマティクスのコンサルタントがチョイスしてお届けする「今月の注目ニュース」。今回はシニアコンサルタントの金子が、「ポイント・会員制度」の最新動向事例をチョイス。リテール業界の豊富な現場経験から、コメントを交えて業界の潮流をご紹介します。

1.日常的な利用を促す、毎日原則付与のポイント制度開始「Yahoo!ショッピング」

●大手ECサイトは、利用者へのポイント還元やセールを積極的に実施。
Yahoo!ショッピングは、2022年10月から毎日原則5%のポイント付与を開始。
●いつ、誰が、何を買っても5%還元をアピールし、日常利用を促進。

物価高に伴う節約への意識が高まる中で、セールやポイントで消費者の取り込みを図っているのが大手EC3社です(Amazon、楽天、ヤフー)。特に楽天グループは、楽天市場のセールでポイントをためて、普段のリアルも含めた買い物でポイントを使うという行動が増えており、巨大な経済圏を確立しています。

ただし、セールとポイントを使った施策は劇薬でもあります。セール乱発は通常価格への信頼性を無くす可能性があり、企業への不信感を招きかねません。

そういった状況を懸念してか、ヤフーは2022年10月からセール回数を減らし、「毎日原則5%のポイント付与」として、日常的に利用する消費者を増やす方針に変更しました。同様の施策に方針転換する企業は、今後増えていくでしょう。

2.顧客との関係性を深める会員プログラム「スターバックス」

●スターバックスは、2023年1月に会員プログラム「スターバックスリワード」をリニューアル
●トッピングのカスタマイズからコーヒー豆の購入まで、幅広い製品をStar(ポイント)と交換可能。
●キーホルダーなど、スターバックスリワード限定のオリジナルグッズなども提供。

「スタバらしさ」を表現しながら顧客との関係性を深める会員プログラムを目指し、2023年にこれまでの制度を刷新したのがスターバックスです。

これまでは購買に対してStarを付与し、一定量貯まったStarはドリンクチケットに交換出来る、といったポイント・会員制度でした。利用頻度が高くないユーザーは恩恵を得辛く、一方でヘビーユーザーはチケットを使い切れないという課題が発生していました。

今回の変更では、貯まったStarから交換可能なチケットの種類を大幅に増やしています。ライトユーザーからヘビーユーザーまで、それぞれがそれぞれの立場でスターバックスを楽しめるチケットを準備することで、経済的なインセンティブ以外のリワードを得られるように配慮しています。

今後は、会員プログラムのステージを上げていくことで会員同士が繋がりを感じられるような基盤を目指すとのこと。一般的なポイント・会員制度とは方向性そのものが変わったことが感じられます。

3.コインランドリーを便利にするプラットフォーム「Smart Laundry」

Smart Laundryは、コインランドリー専用のプラットフォーム。
●ランドリーの利用によって獲得できるメダルの取得枚数に応じて会員ステータスが決定。
●会員ステータスに応じて、ブラインド機能やドアロック機能が利用可能。

最後にビジネスモデルの中に会員・ポイント制度が組み込まれている例として、コインランドリー専用プラットフォーム「Smart Laundry」を紹介します。Smart Laundryに対応したコインランドリーでは、専用のアプリで洗濯機や乾燥機の空き状況を確認および利用することができ、決済はキャッシュレス、洗濯終了時にはアプリに通知が届くサービスを提供しています。

利用状況に応じてアプリ内に仮想的な「メダル」が貯まり、割引チケットや「ドアロック」機能、のぞき見防止の「ブラインドモード」等のサービスを利用できるようになります。

また価格に関しては、アプリで取得した利用状況や時間帯や天候を考慮してダイナミックプライシングを導入。セールで集客している大手ECとは全く違う価格の考え方を取り入れています。

4.まとめ

セールとポイントで経済圏を作っている大手EC、自分らしさと顧客との関係性強化に焦点をあてたスターバックス、ポイント・会員制度単独ではなくサービス自体をデジタル接点で提供しているSmart Laundry、それぞれ特徴のある3つの事例を紹介させていただきました。

いずれの事例でも、本来のビジネスモデルや顧客との関係性を基にポイント・会員制度を検討し、ブラッシュアップさせていることがわかります。取り組みから効果を得るためには、単純に競合他社の制度を真似するのではなく、自社ビジネスにおいて「お客様との関係をどう作るべきか?」検討の上、制度設計をする必要があります。次の自社制度見直しのタイミングでは、これらの取り組みを参考にしながら進めてみてはいかがでしょうか。

(構成・編集=プリズマ編集部)

⾦⼦ 傑 執筆者

執筆者プロフィール
金子 傑
シニアコンサルタント

2000年イオングループのミニストップ入社。システム部⾨にてECサイト、DWH、商品マスタ等のPMを担当。2011年以降はシステム部門を離れ、九州営業部長、社長室長、サービス・デジタル推進部長、マーケティング部長等を歴任。2018年11月にクラスメソッドに参画。OMO/EC、CRMを中⼼に、事業戦略から業務設計、PMまで幅広い領域を担当。
【支援実績】
OMO/EC:アンファー、グラニフ、⼤⼿スーパー、雑貨⼩売店(戦略策定、業務設計)、大手生活用品メーカー(D2C)等
CRM:サンリオ、大手アパレル(会員制度設計)等

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