プリズマジャーナルTOP外食産業の成功事例から考える「自社に最適なDX」の見極め方 [今月の注目ニュース]

外食産業の成功事例から考える「自社に最適なDX」の見極め方 [今月の注目ニュース]

# 外食産業 # DX # 顧客満足度 # 店舗DX

リテール業界の現場経験が豊富なプリズマティクスのコンサルタントが、小売り×DXの気になるニュースをチョイスしてお届けする「今月の注目ニュース」。

今回は、シニアコンサルタントの金子がモバイルオーダーやアプリを使った販促等、デジタルを使った施策が多く実施される外食産業のDXに注目。「自店にとって、自社にとって最適なDXとは何か」「本当に効果を出すためのDX施策とは?」──その見極め方のヒントとなる事例を3つ、コメントを交えて紹介します。

1.カスタムオーダーに注力、アプリ注文限定のカレー屋「TOKYO MIX CURRY」

TOKYO MIX CURRYは、店頭と宅配の全ての注文、決済をアプリのみで受付。
●ユーザーは待ち時間なく、自分好みにカスタマイズしたカレーを受け取ることが出来る。
●企業向けデリバリーを実施しており、導入企業は100社を突破

全ての注文・決済をスマホアプリに集約することで関連オペレーションを最小限にとどめ、リアル店舗は受け渡し、配達、接客の拠点としています。店舗スペースの面積を最小限にしたり、ランチの時間帯のみ他店舗を間借りするなどの工夫で、都心部でありながら低コストでのサービス提供を可能にしています。

一方で、アプリを通して収集したデータは、アプリ上のコミュニケーションやマーケティング施策だけでなく、アナログな接客に活用。「店舗だからこそ出来る接客」の価値を高めています

スマホ決済、モバイルオーダー、“出前”など、施策の一つ一つは従来からあるものですが、デジタルを使っての効率化を組み合わせることで、従来の店舗とは違ったビジネスモデルを実現している好例です。

2.アプリを使って地域の顧客と繋がり続けるファミレス「ジョイフル」

●九州発のファミリーレストランジョイフルは、顧客接点としてモバイルアプリを積極的に活用している。
●アプリ限定クーポンの配布に加えて、来店数、ウォーキング数、ログイン数に応じたスタンプ機能を実装。
●スタンプを配布するウォーキング目標値を調整するなど、細かなアップデートを続けている

ジョイフルはスマホアプリ導入に際して、一般的なプロモーション施策とは違うKIP「来店頻度」を設定しています。モバイルアプリと位置情報、Bluetoothなどのデジタル技術を使って、実際の来店数を把握することを可能にしました。

地域のお客様と繋がり続けることを重視し、累計歩数に対してポイントとスタンプがもらえる「ウォーク機能」などを実装。来店頻度は平均で3.5倍に上昇し、さらに月に4回以上来店する優良顧客は約12倍に増加しています(2021年10月時点)。

九州を中心とした店舗展開、また過疎化が進む地域にもあえて出店している状況の中で、既存顧客の来店頻度を高める施策にフォーカスして、デジタル技術によってしっかりと効果を見える化しました。出店している地域と顧客の特性に合わせたデジタルマーケティング施策を展開すること、その重要性がわかる事例です。

3.本質的な課題を捉えたDX施策に注力「クリスピー・クリーム・ドーナツ」

●2022年6月から、注文から支払いまでLINEで完結するモバイルオーダーの提供を開始
●店舗の運営力の向上に動画型マネジメントシステムを活用
顧客満足度の測定を緻密に行い、店舗単位での改善とフィードバックを行っている。

クリスピー・クリーム・ドーナツは、急成長後の大量閉店という苦境の原因を店舗運営力の低下にあると見定めました。オリジナルアプリやクイックオーダー等のデジタルを使ったサービス展開の裏で、動画を使った店舗スタッフのオペレーション教育に力を入れています。

また、カスタマーサーベイの結果を元に「店舗ごと」にキードライバーを設定している点がユニークです。来店者数が多く行列が出来るような店舗と、比較的余裕のある店舗では、それぞれ違うキードライバーが設定されています。

店舗におけるDX施策はモバイルアプリ導入などが中心になりがちです。「顧客満足度」という店舗の本質的な課題に焦点を充て、デジタルを使って地道な取り組みを行った本事例は“DXの在るべき姿”のひとつと言えるのではないでしょうか。

4.まとめ

今回紹介した3社が取り組んだ施策は三者三様ですが、共通点も見えてきます。それは、「自社の強みと弱み」や「地域と顧客の特性」を見極めている点です。

アプリを作るのであれば「新たなビジネスモデルを作るのか?」「顧客とのコミュニケーションをどう変えるのか?」しっかり見極める必要があります。また、そもそもアプリで顧客との繋がりを深める以前の、「本質的な課題は何なのか?」といった検討も必要です。

「DXを推進する」と言った場合、ともするとそれそのものが目的になりがちですが、デジタルはあくまでもツール。ビジネス的な効果が得られなければ意味がありません。他社が行っているデジタル施策を表面的に模倣するのではなく、まずは自社にとって、顧客にとっての課題を把握、設定すること。それが結果的に、DXを進める上での“近道”となるでしょう。

(構成・編集=プリズマ編集部)

⾦⼦ 傑 執筆者

執筆者プロフィール
金子 傑
シニアコンサルタント

2000年イオングループのミニストップ入社。システム部⾨にてECサイト、DWH、商品マスタ等のPMを担当。2011年以降はシステム部門を離れ、九州営業部長、社長室長、サービス・デジタル推進部長、マーケティング部長等を歴任。2018年11月にクラスメソッドに参画。OMO/EC、CRMを中⼼に、事業戦略から業務設計、PMまで幅広い領域を担当。
【支援実績】
OMO/EC:アンファー、グラニフ、⼤⼿スーパー、雑貨⼩売店(戦略策定、業務設計)、大手生活用品メーカー(D2C)等
CRM:サンリオ、大手アパレル(会員制度設計)等

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