リアル店舗(以下、店舗)もECも、小売であるからには「売り場」が存在します。店舗、ECの売り場づくりには、どんな共通点、相違点があるのでしょうか。店舗における売り場づくりの基本であるISM(In-Store-Mercahndising:インストアマーチャンダイジング)をベースに、店舗とECを比較し、各モデルの理解を深めてみたいと思います。
目次
1.売り場づくりの目的は「客単価アップ」 2.“売り場づくり”のベースとなる「ISM」を知ろう 3.ISM視点での店舗とECの比較 4.店舗とECの「売り場づくり」それぞれの特徴を押さえた対策を1.売り場づくりの目的は「客単価アップ」
今回は「売り場づくり」をテーマとしますので、顧客は既に来店、来訪されている状態であることを前提に考察を行うことにします。また、扱う商品は主に生活必需品をイメージしていただければと思います。
売り場をつくる上で目指すべきことは、主に客単価の向上です。回遊性を高め、より多くの商品を認識してもらい、いかに多く購入していただくかが焦点です。
これはリアル店舗、EC問わず共通であると思われます。快適な買物体験を提供することによる利用頻度向上も期待できますが、本記事では「単価アップ」に着目します。
2.“売り場づくり”のベースとなる「ISM」を知ろう
店舗とECの売り場づくりを比較する上で、ベースとして扱うISMとは何でしょうか。
ISM(In-Store-Mercahndising)とは、堅苦しく表現すると「小売店頭において、顧客が求める商品構成を効果的、効率的に提示する手法」です。
誤解を恐れず単純化すれば「店舗で客単価を上げる為の、売り場づくりの手法」ということになります。ISMの要素をそれぞれ長く、高くして掛け合わせることで、客単価をアップさせるというロジックです。
ISMは以下の要素で構成されます。
・動線長 :店内をいかに回遊してもらえるか
・立寄率 :どれだけ多くの売り場に立ち寄ってもらえるか
・視認率 :どれだけ多くの商品を視認してもらえるか
・買上率 :視認した商品を買い上げてもらえるか
・買上個数 :ひとつではなく多数買ってもらえるか ※今回対象外
・商品単価 :より高い商品を買ってもらえるか ※今回対象外
3.ISM視点での店舗とECの比較
それでは、ISMの各要素(動線長~買上率)ごとに、店舗とECの売り場づくりを比較していきたいと思います。
店舗
店舗の売り場には、より長く歩いてもらうことで商品との接触機会を増やしたい、という意図があります。その為、消費頻度が高い商品群を壁面に沿って展開する場合が多いです。こうした商品群は人を惹きつける力が強いことから、「マグネット」と呼ばれます。スーパーの生鮮食品、コンビニのドリンクをイメージするとわかりやすいかもしれません。
EC
ECにおいても回遊性が重要である点は変わりありません。トップページからカテゴリーページ、商品一覧まで、いかに引き込めるかが鍵となるので、検索窓やナビゲーションを目立つように配置する必要があります。PCやスマホなど、デバイスにより目立たせ方が異なる点もポイントとなってきます。また、商品詳細ページに、類似商品や関連商品を掲載することで回遊性を高めることもできます。
店舗
店舗での動線を長くした上で、お客様にはより多くの売場で“立ち止まってもらう”必要があります。そのための工夫として、お勧め商品を大量に陳列して注意を引いたり、POPを設置して情報提供したりします。「エンド」と呼ばれる通行量が多い動線上の箇所で、立ち寄りが期待できる売場をつくると、より効果を高めることができます。
EC
ECの場合、トップページにお勧め商品、新商品、キャンペーン等の大きなバナーを貼り、注目が集まるようにします。売れ筋商品のランキングを掲載するなどして、興味を惹くのも効果的です。また、サイト内検索にて入力頻度が高いキーワードを、「商品カテゴリー」としてナビゲーションに追加するような工夫も考えられます。
店舗
「視認率が高い」とは、「商品をよく見てもらえる」状態のことです。これは売場の商品陳列(棚割)を工夫することで、高めることが出来ます。目線に近く、手に取りやすい高さの棚にお勧め商品を陳列したり、同カテゴリーの商品を分かりやすく括って比較検討し易くするような工夫です。
EC
ECでは「商品一覧」まで進んだ状態を想定します。その先の「商品詳細」まで進んでもらうために、鮮明な商品画像、大きな価格表示は勿論のこと、割引率、商品評価(★の数など)、推奨アイコン等の表示も有効です。限られたスペースなので、無意味に長い固有の商品名は敢えて表記せず、必要な情報にのみ表示することもあります。
店舗
商品を手に取り購入を決定する場面なので、価格表示や、比較検討しやすい棚割り、POPによる情報提供が肝要となります。業態によっては接客による説明や後押しが有効です。
EC
店舗であれば、顧客が支払いの直前で全ての買物内容を放棄するということはなかなかありません。しかし、ECでは不安や疑問を解消できず、確定手前で離脱してしまうことが珍しくありません。ECでの購入を決める「商品詳細」ページで最も重要なのは、眼前にない商品を購入する不安を払拭することです。
サイズや機能をはじめとした、詳細情報の丁寧な説明は必須になります。また「商品レビュー」は客観的な評価として信用度が高く、購入を後押しする安心要素になるでしょう。この他、配送方法、決済手段、返品手順等、お客さまの疑問に先回りした説明が、買上率向上に繋がります。
4.店舗とECの「売り場づくり」それぞれの特徴を押さえた対策を
店舗とECにおける売り場づくりを比較してみると、共通点が多く見られました。中でも共に重要と思われるのは、顧客の導線を設計している点です。具体的には下記のような活動になります。
・顧客がどのように回遊し、商品に触れ、購入を決定するかについて導線の仮説を構築する
・仮説をもとに売場をつくり、得られた検証結果をまた売場に反映する
仮説と検証を繰り返すために、徹底して「顧客の視点に立つ」という点もまた共通となります。
一方で明確に異なる点もあります。例えば、店舗の場合は全ての顧客が入り口から入って来ますが、ECの場合はトップページを経ずに直接カテゴリーページに訪れることがあり得ます。このため、カテゴリーぺージにもトップページ同様のわかりやすいナビゲーションを配置して回遊を促す必要があります。
また買上率の項目で触れたように、ECでは商品を手に取って確認することができません。購入前の疑問に答え、不安を解消できないと購入前に離脱する可能性が大きくなる点も店舗とは異なります。
その意味でECの売り場づくりの要諦は『回遊性を高める』『不安を解消する』になるのかもしれません。
以上、ISMの項目を通して、店舗とECの売場づくりを比較してみました。比較対象を置くことで特徴が炙り出され、より理解できることがあります。当記事がそのような理解促進の一助となれば嬉しい限りです。
執筆者プロフィール
渡邊⼤吾 ビジネス・業務コンサルタント
2003年イオングループのミニストップに⼊社。店舗指導の現場経験を積んだ後、営業企画・戦略部⾨で業務効率改善や販売戦略に従事。2016年にMBAを取得後、マーケティング部⻑として商品計画、プロモーション戦略を統括。2019年より新規事業部⻑として飲⾷専⾨店を事業展開。2021年3⽉にクラスメソッドに参画。豊富な現場経験を活かした⼩売および外⾷でのCRM⽀援、業務設計に強み。
≪⽀援実績≫
・OMO/EC︓グラニフ、⼤⼿⽣活⽤品メーカーのD2C施策検討等
・CRM︓⼤⼿アパレルの会員制度設計等
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