ECサイトで商品を探すとき、皆さんはどのような検索方法を取りますか?様々な方法がありますが、探しているモノの具体的な商品名がわからない場合には、「カテゴリ検索」が有効です。
カテゴリ検索は便利な機能の一つですが、サイトを運用する側にとっては、地道な苦労が多い業務の一つです。そんな「カテゴリ検索」について、今回はお話させて頂きます。
1.カテゴリー登録は大変です
アイテムをカテゴライズすることは、ECサイトに限らず様々なシーンで行われます。カテゴライズすることによって、商品を探しやすくなりますし、品揃えが一目でわかるといった便利さも生まれます。
カテゴリーが存在しないECサイトやネットスーパーを見たことが無いのですが、このカテゴリー登録って、実はけっこう大変なんです。
商品を取り扱うコンピュータシステムの歴史からいえば、ECやネットスーパーの歴史はまだまだ浅く、商品マスタは発注システムや在庫管理システムといった大先輩たちのシステムの中に、ずっと前から、先に存在しています。
販売業において、管理工程の上流にあるシステムは「発注システム」になります。商品マスタは発注する為に作られています。発注システム内で管理されている商品マスタの殆どは、デパ・ライン・クラスでアイテムを分類しています。
この、デパ・ライン・クラスの設定をECサイトやネットスーパーのカテゴリ設定に流用できれば楽なのですが、おおむね分類は可能であっても、微妙に違っているのでそのままでは使えません。この“微妙”というのが、曲者です。
2.店舗の分類、ECにそのまま流用は出来ません
コンピュータシステムの中においては、新参者であるECやネットスーパー。「カテゴリマスター」に一番近いのは、棚割りシステムにおける「商品分類」です。こちらは分類(カテゴリー)の情報としては使えるのですが、商品と紐づけた情報となると鮮度の問題があって、そのまま流用というわけにはいかないようです。
目的が異なるデータをそのまま流用することは、カテゴリーに限らず完全なシステム化が難しく、少なからず人の手を入れなければならない宿命を負っているのが現実です。
店舗の売場では、商品分類(カテゴリー)を設定して、決められた棚に毎日品出しをしています。ECサイトやネットスーパーでは、そこに商品を紐づける設定をしなければ役に立ちません。
店舗と異なりECでは毎日行う作業ではありませんが、新商品が出る度にこの紐づけをしたり、廃盤品は紐づけから外したり、といったステータス制御が必要になります。定番商品はもちろん、季節商品、セール品、キャンペーン、…といった分類の仕方も必要になってきます。
3.罫線の無い紙を束ねた帳面はどこですか?
カテゴリ検索で、こんなことがありました。
友人の話です。一度気に入った商品は、何年も使い続けるこだわりのお方です。
ECサイトで、いつも使っているノートを探していました。いつもは店舗で購入しているのですが、引っ越しをした為、近隣に店舗がありません。探している商品は、「罫線が入っていないノート」だったのですが、商品名が分かりません。「文房具」や「雑貨」のカテゴリから商品一覧を見ても、愛用の商品は見当たりませんでした。
「ECでは売っていないのだろう」と思い、友人はECで買うのを諦めてしまいました。
しかし、長年気に入って使っているものなので、どうしても同じものが欲しいと思った友人は、近くに店舗がある同僚に購入を依頼して、ようやく、愛用の商品を手に入れたそうです。
その話を聞いた私は、ちょっと腑に落ちなかったので、該当のECサイトを開いて捜索を開始しました。きくた巡査、捜査開始です。
たしかに、「文房具」のカテゴリに、その商品はありません。となると、キーワード検索する手がかりは、「ノート」「罫線なし」くらいです。形容するなら、「罫線のない紙を束ねた帳面」なんですが、そんな商品名であるハズもなく、ワードがタグ付けされているわけでもないので、キーワード検索では手がかりがありませんでした。
「ECと店頭とでは品揃えが違うのだろうか?」そんな事を思いながら、地道に商品一覧を確認していきました。当時よっぽど暇だったのか、単なる好奇心なのか、カテゴリー設定に、これまで様々な思いがあるからなのか? きくた巡査、カテゴリーから、一通りの商品一覧を地道に確認していきました。
そして、ついに、発見しました。
ECでも販売していました!
その商品は「子供用品」という扱いでカテゴリ設定され、商品名は「お絵描き帳」でした。
早速友人に捜査結果を報告です!
「はぁぁ? 子供用品? ノートじゃん?」
その時の友人が言い放つ辛辣なワードは、なかなか面白かったですが、ある意味、お怒りはごもっとも。
小さい子供がいる大人だったら、「お絵描き帳」という発想があったかもしれません。「罫線の無い紙を束ねた帳面」は、正式な商品名が分からなかった為に、“大人のユーザー”視点では、ECサイトから見つけることはできませんでした。
友人のケースの場合、近くに店舗が無かったからこそ、ECサイトの果たす役割は大きかったはずなのですが、カテゴリー設定や検索ワードが適切でなかったため、その重要な役割を果たすことが出来ませんでした。
4.カテゴリーって大事です
カテゴリー設定が複数にまたがって設定を可能にする仕様であることは、絶対条件です。更に、検索する側に立った地道なカテゴリ登録をしていくことは、運用上重要なことだと痛感しました。
なぜ当該ECで、「お絵描き帳」が「文房具」で無いのかは分かりかねますが、こうやって販売機会を逃したり、お客様が離れていったりするのだろうな…と感じた出来事でした。
その友人は今もなお「お絵描き帳」を愛用し続けていることを付け加えて、今回の記事はここまでとさせていただきます。
執筆者プロフィール
菊田 亜由美 業務・システムコンサルタント
日航情報開発(現JALインフォテック)を経て、2000年からフリーランスにて、システム開発およびコンサル業務に従事。小売流通、サービス、⾦融等、あらゆる分野でのシステム開発を多数手がける。また、事業会社においてEC、CRM等のシステム導入経験あり。2018年2月クラスメソッドに参画。小売業を中心に幅広い業界での業務設計、要件定義、PM⽀援に対応可能。
≪⽀援実績≫
・OMO/EC:無印良品のDX推進⽀援、大手GMS/ネットスーパー構築、大手生活用品メーカーのD2C施策検討、家事支援サービスシステム強化支援、専門店オムニチャネル支援等
・CRM:大手アパレルの会員・ポイント基盤等
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