
食品業界は本当にECに不向きか? [今月の注目ニュース]
経産省の電子商取引市場規模の調査によると、2021年時点で物販全体のEC化率が8.78%に対して、食品業界のEC化は半分以下の3.77%。新型コロナウィルス感染拡大によりEC市場規模は8%以上の伸長率にも関わらず、食品関連のEC伸び率はなんと1%程度に留まっています(参考:経済産業省「令和3年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査」))。消費者が生鮮品の品質不安を抱えやすい、鮮度を保つための物流や配送が困難など、食品業界はECに不向きと言われがちです。しかし、本当にそうでしょうか?
小売り×DXの気になるニュースを、リテール業界の現場経験が豊富なプリズマティクスのコンサルタントがチョイスしてお届けする「今月の注目ニュース」。今回はシニアコンサルタントの金子が、食品ECの成功事例をチョイスしました。リテール業界の豊富な現場経験から、コメントを交えて業界の潮流をご紹介します。
目次
1.サブスク型、自社配送網整備、鍵付きロッカーで構築した収益モデル「スーパーサンシ」 2.多様なECチャネル活用と“ファン”を喜ばせるコミュニケーション「ルタオ」 3.パーソナライズECと情報発信で目指す“一人ひとりの食のパートナー”「Qummy」 4.まとめ1.サブスク型、自社配送網整備、鍵付きロッカーで構築した収益モデル「スーパーサンシ」
●三重県に拠点を構えるスーパーサンシは、ネットスーパーによる宅配事業に注力
●月額課金のサブスク型で、宅配ロッカーを無料貸し出し、消費者の送料負担を抑える
●同業他社に対してネットスーパーのプラットフォーム「NetMarket」を提供
現在のネットスーパーの多くが「黒字化」を目的としている中、いち早く利益を出し注目されているのがスーパーサンシの取り組みです。スーパーサンシの高倉常務はインタビューの中で「リアル店舗とネットスーパーは全く異なる業種。同じなのは取り扱う商品だけ」といったコメントをされているのが印象的です。
リアル店舗販売は、店舗にかかる固定費の比率が高いビジネスですが、ネットスーパーは配送費を中心とした変動費比率が高いビジネス。そこで、売上を追うだけではなく、いかに1件あたりの取引で利益を生み出すかが成功のポイントとなってきます。リアル店舗を展開している企業にとって、ECの収益構造が全く異なることにいかに気づけるかが、利益を生み出す上では重要な点となってきます。
2.多様なECチャネル活用と“ファン”を喜ばせるコミュニケーション「ルタオ」
●洋菓子店ルタオの人気商品・フロマージュが、LINEギフトで「最も贈られた商品1位」に
●限定数量の新製品は専用ページ特別感を演出、ブランドファンを超えた集客に成功
●LINEギフトやソーシャルギフト活用で気軽にギフトを贈ることが出来る環境を用意
ルタオは通常ECサイトを立ち上げたりモールに出店するだけでなく、20年10月からLINEギフトへ出店、ソーシャルギフト活用などの取り組みをしてきました。また新商品は専用ECサイトをつくり、誕生秘話や素材、味などを詳しく紹介し、先行抽選販売を実施。別サイトにすることにより、ルタオファンだけでなくスイーツファンを幅広く集客することが出来ています。
旅行客への土産品のイメージが強かったルタオですが、スイーツギフトとしての認知が拡大し、コロナ渦で売上を1.8倍に伸長、売上全体の40%をECが占める程の成長を見せています。ルタオが大切にする“ファンづくり”には、Web上の様々な販売チャネルの適切な活用が欠かせないことが分かります。
3.パーソナライズECと情報発信で目指す“一人ひとりの食のパートナー”「Qummy」
●キユーピーがサラダ、ドレッシング、スープなどのセットを届けるD2Cサービス「Qummy®」開始
●会員専用サービス「Hi! kewpie」連携で目指す“一人ひとりの食のパートナー”
●デジタル活用で顧客とのつながりを構築、健康的な食生活を応援することでファン化を推進
最後に紹介するのは、キユーピーが9月21日に発表したD2Cサイト「Qummy」と会員専用サービス「Hi! kewpie」です。「Qummy」では通常のEC機能に加え、「Qummy便り」「キユーピーポイント」「チャットボット」を備えています。目指すところは単なるECサイトではなく、「デジタルを活用した顧客の食の幸せの実現」や「顧客と直接つながることによる顧客理解」を視野に入れた展開であることが分かります。
食に関わる情報発信に力を入れ、今後はパーソナライズされた食の提案を行うことで、キユーピーグループは、2030ビジョンに掲げる「一人ひとりの食のパートナー」の実現を目指していることが窺えます。ECを“商品を買っていただく場所”としてだけではなく、“買ってからも繋がるチャネル”と定義しているのが特徴的です。
4.まとめ
かつてアパレル業界は「ECではサイズ感や色合いがわからないから、ECには不向き」と言われていました。しかし試行錯誤を繰り返し、ライブコマースやバーチャル試着、スタッフによるコーディネート提案等、従来のECにはない機能や販売方法を実装することで、重要な販売チャネルとしてECを育ててきました。現在はEC化率が20%を超え、ネットで服を購入することは当たり前の時代になっています。
今回はEC化の遅れる食品業界において特徴的な成功事例を紹介しました。どの取り組みも、リアル店舗とECのビジネスモデルの違いを理解した上で、Webやデジタルだからこそできる販売方法や、顧客との関係づくりをしています。このような取り組みが広がっていけば、食品ECも伸長していくに違いありません。今後も食品ECの“伸びしろ”に注目し、一緒に新たなビジネスをつくり出していけたらと考えています。
(構成・編集=プリズマ編集部)
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執筆者プロフィール
金子 傑
シニアコンサルタント
2000年イオングループのミニストップ入社。システム部⾨にてECサイト、DWH、商品マスタ等のPMを担当。2011年以降はシステム部門を離れ、九州営業部長、社長室長、サービス・デジタル推進部長、マーケティング部長等を歴任。2018年11月にクラスメソッドに参画。OMO/EC、CRMを中⼼に、事業戦略から業務設計、PMまで幅広い領域を担当。
【支援実績】
OMO/EC:アンファー、グラニフ、⼤⼿スーパー、雑貨⼩売店(戦略策定、業務設計)、大手生活用品メーカー(D2C)等
CRM:サンリオ、大手アパレル(会員制度設計)等
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