「ECのシステム構成の基本的な形がわかる絵ってないですか?」と、システム畑ではないメンバーから質問を受けました。ネットで検索すれば、そういう絵って検索できるものだと思っていたので改めて聞いてみますと、「ちょうどいいもの」に出会えなかったとのことでした。
たしかに企業によってシステム構成は異なりますし、いわゆる設計書のひとつなのでネット上では探せないものなのかもしれません。概要だけでも何かしらのドキュメントがありそうなものですが、たしかに「ECシステム構成」で検索すると期待しているものとは少し違ったようです。
「ちょうどいい」の定義はまちまちではありますが、そんな経緯もあったので、ちょうどいいECシステム構成について少しお話してみようと思います。
1.普通のECシステム構成図は、なぜ無いのでしょう?
ネットで「システム構成図」を検索すると、ハードウェア構成図はいくつも目に付いたのですが、ソフトウェア構成図はほとんど出てきませんでした。どれも少し足りないか、イメージと少し違っています。そもそも、「普通の」とか「一般的な」といった曖昧な位置づけの状態で、具体的なシステム構成は書けないのが正解なんですよね(笑)。
そういえば、最近システム鳥観図を見かけません。鳥観図って言葉自体すでに死語なのでしょうか? グランドデザイン?
大昔、基幹システムを担当していたころはよく鳥観図を見ましたが、ECシステムではあまり見たことがありませんし、「鳥観図」って言いません。あったとしてもリリース当時の納品物のままでしか残っていなかったりするのは、IT業界あるあるです。変化が激しいのでメンテも大変です。
ECシステムは基幹システムに比べると歴史が浅く、草創期の頃は外部連携までシステム化されていないものも多くありました。比較的独立したシステムだった印象です。多少の偏見が入りますが、基幹システム開発と比べてWEBシステム開発はドキュメント作成に重きを置かない時期があったように思います。WEBシステム開発と書きましたが、太古の昔OPEN系って言ってましたね(笑)。システムとしても新しいものですし鳥観図を書く文化が少なかったのではないかと推察します。(いったいどんな昔話をしているのやら…)
鳥観図ほど複雑ではない、ちょうどいい感じのECシステム構成図を、あくまで一般的な例として簡単な画にしてみました。
ここでは、初めてECシステムに触れるような方々向けに書かせて頂きますが、いろんな現場でシステム担当をしていると、方言にも近い感じで似たような言葉があり、言葉がさしている範囲が微妙に違ったりすることがあります。あくまで参考事例としてご理解いただければと思います。
2.フロントエンドとバックエンド
ヘッドレスコマースの回にも出てきましたが、ECサイトはフロントエンドとバックエンドの2つで構成されています。
お客様に見える部分の売り場にあたる役割がフロントエンドで、売場作りと販売の準備や注文後の事務方の役割をバックエンドが担っています。
ECサイトはフロントエンドとバックエンドで構成されていますが、それだけでは販売業務だけしか担えません。売場作りと販売の準備や注文を受けた後の業務を行うために、バックエンドは社内システムや外部システムとの連携が必要です。
3.バックエンドはECシステムの要
ECのシステム構成を図にすると、バックエンドを中心にして書くことが多いです。お客様(ECシステムオーナー様)にとって、フロントエンドが目につきやすいのですが、バックエンドを中心に物事は動いています。ECの要といっても過言ではありません。
社内システムと外部システムは企業によって内容が変わってきます。商品管理と会計管理は社内で持つシステムですが、それ以外については企業によって様々です。物流や分析の部分は業務を外部委託する場合も少なくありません。
外部システムとの連携は、バックエンドだけでなくフロントエンド側から直接連携する場合もあります。決済代行は代表的な例のひとつです。フロントエンドの注文手続きの中でクレジットカード等のオーソリ(与信照会)を行い、出荷(または着荷)後キャプチャ(決済)を行うのはバックエンドの業務です。
商いに絶対必要な商品管理ですが、社内システム(基幹システム)とバックエンドに両方同じ名前の管理システムが存在します。一見、二重管理に見えてしまいますが、そもそも基幹システムの商品マスタは受発注向けのシステムなのでEC向けではありません。EC向けに必要な情報と受発注向けに必要な情報は異なりますし、担当部署も異なります。そのためそれぞれのシステムで商品管理は行われます。(商品マスタについてのうらみつらみは、また別の機会にお話させてください。)
最近では、オムニチャネルやOMOの施策として、店舗業務端末やPOSといった店舗システムとバンクエンド間での連携が多くなっています。ECサイトを中心としたシステム構成は日々変化しています。今回は基本的なECサイトの構成なのでここでは記載しておりません。(図2)
4.これからのECサイト構築
これからのECサイト構築において、OMOは切り離せません。そこで、OMOについて少し触れておきます。ネットと店舗との融合を考えると、バックエンドの役割はECのみならず、オムニチャネルのバックエンドという位置づけになります。つまり、オムニチャネルとしてのバックオフィス業務を担う形になります。オムニチャネルやOMOを視野に入れたグランドデザインを考えたとき、バックエンドがどれだけ重要な役割になるのか分かるかと思います。
汎用性の高いしくみでECサイト構築することで、OMOを視野にいれたバックエンドは頼もしい武器にもなりうるでしょう。
ECサイトのシステム構成について、お話させていただきました。システム畑ではない方に、マメ知識程度にお伝えできれば幸いに思います。
執筆者プロフィール
菊田 亜由美 業務・システムコンサルタント
日航情報開発(現JALインフォテック)を経て、2000年からフリーランスにて、システム開発およびコンサル業務に従事。小売流通、サービス、⾦融等、あらゆる分野でのシステム開発を多数手がける。また、事業会社においてEC、CRM等のシステム導入経験あり。2018年2月クラスメソッドに参画。小売業を中心に幅広い業界での業務設計、要件定義、PM⽀援に対応可能。
≪⽀援実績≫
・OMO/EC:無印良品のDX推進⽀援、大手GMS/ネットスーパー構築、大手生活用品メーカーのD2C施策検討、家事支援サービスシステム強化支援、専門店オムニチャネル支援等
・CRM:大手アパレルの会員・ポイント基盤等
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