
OMOとは? O2O、オムニチャネルとの違い、事業会社が取り組む意義とは?
リテールのDX推進において、OMOは欠かすことのできないテーマになっています。ただし、OMO自体は抽象度の高い概念となっているため、企業により捉え方、OMOに取り組む目的、施策が大きく異なっているのが現状です。
当記事ではプリズマティクスのシニアコンサルタント金子が、「OMOとは何か?」「事業会社がOMOに取り組む意義とは何か?」を解説します。
1. OMO時代の消費行動とは?
OMOはグーグル・チャイナの元CEOの李開復(リカイフ)が2017年頃に提唱したマーケティングの概念です。「Online Marges with Offline」の略称で、直訳すると「オンラインとオフラインを融合する」となり、「オンライン(デジタル)とオフライン(リアル)を一体のものととらえて、顧客体験を設計する考え方」と捉えることができます。具体的にイメージするために、実際の消費行動で考えてみましょう。
まずはスマホが普及せずに、オンラインでの商品の購入はPCが主体だった頃の消費行動から考えましょう。
当時の購買体験はリアル店舗が中心で、売場の商品の陳列やPOP、店員からの商品説明をもとに、実物を見ながら商品を選択し、店舗で商品を購入していました。オンライン(EC)はあくまでも自宅のPCからの接続なので、例えば書籍やゲームのように商品を見なくても品質の判断が可能なものや、マニア性の強いものや産直の食品等、近くの店舗ではどうしても購入が困難なものが中心でした。
企業側もECはリアル店舗の品揃えを補完するもので、ECとリアル店舗は別々の販売チャネルと捉えていたかと思います。
これがスマホの普及に伴い、オンラインの利用がPCからスマホ中心に変わると、消費行動も変わってきます。
スマホからのECへの接続が中心になると、自宅だけでなく外出先でもECでの購入が可能となり、リアル店舗で商品を選択、実際の購入はECですませる”ショールーミング”といった消費行動が可能となります。消費者は商品を見た上でより安く購入できたり、ポイントで優遇されるといったメリットが生まれます。またECの拡大とともにネット上の商品の口コミも増え、さらにSNSが普及すると知人、友人から商品の情報が得られるようになります。そうなるとわざわざリアル店舗に行って店員の説明を受けなくても、企業側よりも信頼できる利用者側の情報をもとに商品の選択が可能となります。
こうなると、あらかじめネットで商品情報を得てある程度選定を済ませてから、確認のためにリアル店舗に訪問、自分にとってお得で便利なチャネルで購入といった消費行動が中心となります。実際に皆さん自身を振り返った時に、一定金額以上の商品を購入するときはこのような行動をとっているのではないでしょうか?
このように企業側の意図にかかわらず、消費者側はすでにオンラインとオフラインを融合した行動をとっているのが現状です。
2. OMOとは?O2O、オムニチャネルとの違いは?
結論としてOMOはオフラインオンラインを一体化させた顧客体験設計という考え方、O2Oはクーポンの配布で来店を促すといったオンラインからオフラインへの顧客誘導戦略、オムニチャネルは利用者がその時その時で都合の良いチャネルからスムーズに情報を取得し、スムーズに商品の提供を受けられる「状態」です。
従って、施策に落とし込むと、OMOとオムニチャネルは極めて似た施策になり、O2Oはその中のオンラインからオフラインへの顧客誘導する施策といった意味でOMOやオムニチャネルから考えられる施策の一部となります。具体例を挙げてみていきましょう。
≪O2Oとは?≫
O2Oは「Online to Offline」の略称で、ネットからリアルの場へと送客するマーケティング概念となります。具体例としては、
● Webサイトや会員アプリでリアル店舗で利用できる割引クーポンを配布
● GPSやビーコンを使って、リアル店舗周辺にクーポンや商品情報を発信
● ECで購入した商品をリアル店舗で受け取る
等があります。実際の施策はOMOやオムニチャネルと重なる部分が非常に多いのですが、あくまでもオフラインとオンラインのチャネルを相互に誘導させることが目的となっているプロモーション寄りの考えとなります。
≪オムニチャネルとは?≫
次にオムニチャネルですが、マルチチャネルから一歩進んだ考えと捉えると理解しやすいです。マルチチャネルは複数のチャネルを用意して、情報発信や商品提供をする考え方です。リアル店舗を展開していた事業者が、ECサイトを構築した段階がマルチチャネルと捉えることができます。
オムニチャネルはマルチチャネル化された複数のチャネルを統合し、利用者がその時その時で都合の良いチャネルからスムーズに情報を取得し、スムーズに商品の提供を受けられる状態となります。
例えばリアル店舗に商品在庫がなく、ECで別途商品検索をして決済や注文して宅配で受け取る状態はマルチチャネル、リアル店舗に商品がなくても決済は店舗ででき、さらには宅配だけでなく店舗で受け取りができる状態がオムニチャネルといえるでしょう。
またオムニチャネルの場合は、オンラインとオフラインといった2軸ではなく、リアル店舗、EC、コールセンター、TVCM、アプリ、SNS等、全ての顧客とのタッチポイントや販売チャネルを対象とするので、網羅的ですが顧客体験を設計する上では複雑になりがちです。一時期オムニチャネルがバズったものの、企業の取り組みとして進まなかったのは、複雑さが一つの要因かもしれません。
≪OMOとは?≫
最後にOMOですが、前述したとおり「消費者はオンラインとオフラインを融合した消費行動をしている」ことが前提となっています。特に提唱者の李開復のいた中国の都市部では、決済はスマホで行われることがほとんどです。消費行動におけるオンラインとの繋がりは日本以上に深い世界と言えます。
こうした中で「オンライン(デジタル)とオフライン(リアル)を一体のものと捉えて、顧客体験を設計する考え方」が生まれたものと考えます。
生まれた目的や経緯は違うものの、OMOとオムニチャネルは極めて近い概念になり、実際に具体的な施策に落とすと、ほぼ一緒になります。ただ、オムニチャネルに比べて、オンラインとオフラインの2軸で顧客体験を設計するOMOの方が、シンプルでわかりやすく、より実務的であると考えます。
3. OMOが産み出す価値=顧客体験価値とは?
OMOの取り組みは顧客体験を設計して顧客体験価値を向上すると言えますが、顧客体験価値とは何でしょうか?
企業が顧客に提供している価値としてまず考えられるのは、商品・サービスの価値です。各企業は日々バリューチェーンやサプライチェーンを見直し、より質の高い商品を提供するために、競合より安く商品を提供するために、多くの企業活動を費やしています。ただ当然競合他社も商品価値の向上に取り組むため、商品価値だけで継続的に差別化することは非常に難しく、最後は価格競争となり企業は疲弊するだけです。
そのため顧客に提供する体験全体の価値を高めることが必要となります。
価値を体験まで広げていくと、まず考えられるのは購買に至るまでの体験=購買体験です。リアルの場であれば顧客に喜ばれる接客、選びやすい売場、ストレスのないオペレーション、気持ち良く清潔な店内等があるでしょう。
またECサイトであれば購入のしやすさや決済や配送手段の豊富さ等が考えられます。また、商品を選ぶための適切な情報提供をアプリで行ったり、商品に対して興味を持ったタイミングに割引クーポンが提供されることも、顧客の購買体験をより良いものにすることでしょう。
オンラインとオフラインを融合した購買体験を設計することにより、その価値を上げることは、OMOが産み出す大きな価値の一つと言えます。
さらに商品を購入した後の商品やサービスの使用・利用の体験も考えられます。わかりやすいものだと商品の問い合わせやトラブルがあった際にサポートする、アフターサービスが挙げられます。ただもう少し使用・利用の体験を広げて考えると、商品やサービスの利用から得られるベネフィットも、使用・利用の体験から得られる価値として捉えることができます。
例えばダイエットサプリであれば、直接的には脂肪の燃焼や排出といった価値を提供していますが、最終的には健康的な生活といった体験価値を提供しています。そして商品の使用・利用のシーンまで顧客とつながり、顧客に寄り添うことは、スマホアプリ等のオンラインのツールを使うことによって可能なものとなっています。
4. 事業会社がOMOに取り組む意義とは?
今、OMOが注目され多くの企業がOMOに取り組む意義とは何なのでしょうか?
私は以下の3つがあると考えています。
● 顧客体験価値向上による差別化
● 顧客の行動情報の獲得による、さらなる商品価値、顧客体験価値の向上
● 顧客とのエンゲージメントを高め、LTVを向上させる
一つ目の顧客体験価値向上による差別化は、前述したとおりです。商品やサービス自体での継続的な差別化が困難な中、デジタルを活用する前提で顧客体験をあらためて設計し、その体験価値を高めることは大きな差別化要因となります。
そしてデジタルで常に顧客と繋がった顧客体験を作り上げることにより、多くの購買も含めた行動情報を獲得することができます。どのようなアクションがロイヤリティ向上に繋がるのか?、どのようなアクションが顧客の離脱の原因となるのか?、どのような生活行動をとる方がLTVが高いのか?等々、行動情報から得られるものは多岐に渡ります。これらを用いて、商品・サービスの価値、顧客体験価値をさらに向上させることが2つ目の意義です。
そしてこれら2つの結果として、顧客とのエンゲージメントは高まり、LTVは向上すると考えられます。リアル店舗といった購買の場以外もデジタルを使って顧客と繋がることができる時代、放っておけばショールーミングのような行動でデジタル市場に顧客は奪われてしまいます。リアルとデジタルを融合させた顧客体験を設計することは、企業の継続的な成長には不可欠ではないでしょうか。
OMO/オムニチャネルに対応したEC/OMO基盤「prismatix」は、拡張性の高い柔軟なAPIで戦略的OMOを実現します。無印良品、スターバックス、サンリオ、アンファーなど成長を見据えた企業に選ばれ続けています。
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執筆者プロフィール
金子 傑
シニアコンサルタント
2000年イオングループのミニストップ入社。システム部⾨にてECサイト、DWH、商品マスタ等のPMを担当。2011年以降はシステム部門を離れ、九州営業部長、社長室長、サービス・デジタル推進部長、マーケティング部長等を歴任。2018年11月にクラスメソッドに参画。OMO/EC、CRMを中⼼に、事業戦略から業務設計、PMまで幅広い領域を担当。
【支援実績】
OMO/EC:アンファー、グラニフ、⼤⼿スーパー、雑貨⼩売店(戦略策定、業務設計)、大手生活用品メーカー(D2C)等
CRM:サンリオ、大手アパレル(会員制度設計)等
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