プリズマジャーナルTOP「多様な価値を届ける」パル流の顧客に寄り添ったコミュニケーション〜リテールトレンドWEEK2023登壇レポート〜
「多様な価値を届ける」パル流の顧客に寄り添ったコミュニケーション〜リテールトレンドWEEK2023登壇レポート〜

「多様な価値を届ける」パル流の顧客に寄り添ったコミュニケーション〜リテールトレンドWEEK2023登壇レポート〜

プリズマティクスは、2023年9月4日〜8日開催「リテールトレンドWEEK2023」に登壇いたしました。リテールトレンドWEEKは「小売流通のいまとこれからを知る」をテーマに、最新トレンドや戦略について業界のトップランナーが知見を語るオンラインイベントです。

プリズマティクスはDAY2「顧客ニーズへの対応」にCEO濱野が、株式会社パル 常務執行役員 プロモーション推進部部長 堀田氏と共に登壇いたしました。クラスメソッドとプリズマティクス、グループ会社であるこの2社が支援させて頂く中で実現した本セッションについてレポート致します。

主催:一般社団法人全国スーパーマーケット協会、リテール総合研究所

1.多種多様な個人が“いい”と思ったものをお客様に提供するコンセプト

PALは、アパレルブランドを中心に、服飾雑貨・生活雑貨など、守備範囲の広い事業展開を行っています。その特徴の一つが、“ブランド”数の多さです。その数、なんと50以上。対象としている購買層も幅広く、価格帯も年代も様々です。スタッフ個人からの発信を評価する仕組みを積極的につくっており、多種多様な“個人”が、いいと思ったものをお客様へ提供する、ということが実現されています。

「PALでは、“ブランド”は基本的に社員が手を挙げてつくっています。外からデザイナーがやってきてコンセプチュアルにつくっているわけでなく、ある意味で、社員の好き・嫌いでやっているところがあります。多様な個人が、多様なお客様に対して、多様な価値を提供していく……結果的にそうなっていて、それが強みとなっているのかな、と思っています」(堀田氏)

また、PALはECを強化、オムニチャネル体制を構築し成果を上げていることでも注目を集める存在です。オムニチャネル体制は2018年にスタートし、2020年にLINEミニアプリを導入、ライトユーザーの多い雑貨ブランド「3coins」の会員化やEC化にも順次着手してきました。ネイティブアプリでのEC利用が増えるに合わせて“快適に使えるECアプリ”へと変化させる等、顧客のニーズを踏まえた変更も継続的に行っています。

近年はコロナ禍の影響もありEC利用者が増え、2020年度の売上高が約200億だったところ、2023年度には倍増しています。コロナ禍がおさまってきたと言われる2023年も、店舗に人は戻っているもののEC利用が減るということは無く、「EC利用が一般化したと言えると思います」と堀田氏は語りました。

2.PALのオムニチャネル戦略

PALではスタッフ“個人”が運用するInstagramアカウントを中心に、YouTube公式チャンネル等のSNSや動画チャンネル運用を実施しています。インターネット上の情報からPALのブランドについて知ったユーザーを、リアル店舗やEC(PALCLOSET)に送るというフローになっています。

「ネイティブアプリのダウンロードのきっかけは、今でも店舗でのダウンロードが殆ど。リアル店舗の行動は、購買以外はなかなか取りづらいですが、LINEミニアプリ導入でライトユーザーにも会員になってもらい易くなりました」(堀田氏)

現在PALの会員数は約860万アカウント、アプリダウンロード数は約600万とのこと。店舗やECで蓄積された行動データを元に、長期的な利用やリアル・デジタルの相互利用促進を目的として、PALから顧客に対してのアクションを考えているとのこと。プッシュ通知の媒体としては、ネイティブアプリ、LINE、メールDM、紙DM等を組み合わせているそうです。

「配信する情報は、なるべくパーソナライズしていくようにしています。会員数が多くなってきたので、パーソナライズしていかないと通知数がどうしようもないということもありますが……。商品閲覧データ、お気に入り商品、ネイティブアプリで会員になったのかLINEミニアプリで会員になったのか等、考慮してシナリオをつくっています」(掘田氏)

3.SNSは販促、宣伝だけでなく重要なコミュニケーションツール

会員数とは別の指標として、PALが強化しているものがあります。それが、スタッフ“個人”が運用しているSNSのフォロワー数です。この数が、PALの会員数を遙かに上回る、約1,200万フォロワーとなっているとのお話がありました。

このスッタフSNSは新しくブランドを知ってもらうという役割だけでなく、CRMとしての役割も果たしていると堀田氏は語ります。店舗で商品を買ったお客様から、スタッフSNSに『あの後、ECでこういうのも買ったよ』『こういう組み合わせはどうかな?』等、本部では追いきれない程のメッセージや相談があり、個々のスタッフが対応しているとのこと。

「ECのデータを見ると、スタッフからのアドバイスを経由した購買が7割程度なので、スタッフとお客様とのコミュニケーションが重要であることは間違いありません。“買うかどうか”という最終的なところで、顧客は分かっていない“痒いところ”をスタッフがフォローしてくれている、一生懸命やってくれているところではないかと思っています」(掘田氏)

ここでモデレーターの濱野から、「1,200万のフォロワーというのは凄まじい数だと思う。SNSについて、会社からスタッフに対して運用の働きかけやレクチャー等があるのでしょうか」と質問を投げかけました。これに対して堀田氏は「SNSは個人の運用の積み重ね。まずは運用のハードルを下げることから始めています」と言います。

「最初にNGルールと、“だいたいこういうことをやれば問題ない”ということを明確に示して、あとは投稿してもらって、そこから出てくる数字から次の行動を考えてもらえるように伝えています。評価システムも構築していますが、あくまで成果が出たらプラス評価になる、というスタンスです」(堀田氏)

4.テクノロジーで“強み”を補完、プラットフォームとしての会社でありたい

本セッションの最後に、モデレーター濱野から「今後の展望や、テクノロジー導入についてどうお考えか教えてください」との問いかけがありました。それに対し堀田氏は「様々なテクノロジーが次々と出て来ていますが、あくまでそれは我々の“強み”を補完するものである、という認識です」と語ります。

「我々の“強み”は、個人と個人の繋がりや、ブランドの多様性。メガブランドになるということにこだわりはなく、スタッフが発案して、SNSを通して個々で繋がっていく中で、会社はそのプラットフォームとなるのが良いのかなと思っています。そのためには今後、商店街みたいに、どんどんブランドが増えても良いと思っています」(堀田氏)

PALはネイティブアプリ、LINEミニアプリ、SNS運用等への取り組みを始め、システムやデータ解析等の積極的な先端的なツール導入でも折に触れ話題になっている企業です。今後もその動向に一層注目が集まるのではないかと予感させるセッションとなりました。

プリズマティクスは今後も、デジタルを活用した顧客接点の取り組みやファン育成などをテーマに課題解決となるようなヒントやアイデアをご紹介・支援していきます。

プリズマ編集部

「the engagement commerce platform for wow! experiences」をコンセプトに、小売業における顧客エンゲージメント向上の支援、戦略的OMOを実現するプラットフォーム提供を行うプリズマティクス株式会社が運営する、オウンドメディア『プリズマジャーナル』編集部。

『プリズマジャーナル』では、プリズマティクスで活躍するコンサルタントが執筆するコラム「徒然ジャーナル」、業界の先端を走り続けるプリズマティクスアドバイザーからの寄稿文など、小売業の皆様に向けて伝えたいこと、耳寄りな情報などをお送りします。

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